18歳未満の方はコチラから退場ください。
2024.05.31

エフェクチュエーション(effectuation)【第4回】レモネードの原則

レモン(よくないもの、うまくいかないことの比喩)はレモネードにして味わう

エフェクチュエーションは、起業家精神と意思決定のプロセスに焦点を当てたアプローチであり、サラサラスヴァシー教授によって提唱されました。

この理論は、特に不確実性が高い状況での意思決定に有効な方法を提供します。
エフェクチュエーションには5つの原則があり、その中の第4の原則が「レモネードの原則」です。

レモネードの原則とは

レモネードの原則」は、「レモンが来たらレモネードを作る」ということわざから来ており、予期せぬ出来事や「失敗」を機会として捉えることを奨励します。

レモンは、オレンジなどと同様、見た目はあざやかな黄色で、形もふっくらしてとてもおいしそうです。

しかし実際にかじってみるとひどく酸っぱいので、「見かけはいいのに中身は期待はずれ」というイメージを与えられたのではないでしょうか。

人生がレモンという試練を与えたなら、それに砂糖を加えて、レモネードといういいものにしよう

この原則は、事業運営中に遭遇するかもしれない障害や予期しない変化を、新たな可能性の源泉として受け入れることを意味します。

視点を変える、ターゲットを変える、何かが変化すれば価値が変わる

事業における柔軟性と適応性を強調しています。
市場や顧客のニーズが変化する中で、事業モデルや製品のターゲットを効果的に変更することが如何に重要かを示しています。

視点の変更

事業を進める際には、時には問題や機会に対する自分の視点を根本から変える必要があります。

異なる角度から問題を見ることで、新たな解決策やビジネスチャンスが見えてくることがあります。
例えば、一見すると問題に見えることも、異なる視点から見れば価値ある機会に変わるかもしれません。

ターゲットの変更

市場の変化や競争の激化に対応するためには、ターゲット市場や顧客層を変更することが有効です。

元々意図していたターゲット層が期待通りに反応しない場合、別の顧客層がその製品やサービスに価値を見出す可能性があります。

価値の変化

市場環境の変化、技術の進化、社会的トレンドの変動などは、製品やサービスの価値を大きく変えることがあります。
これを理解し、それに応じてビジネスモデルや製品戦略を適応させることが重要です。

実践的な例

製品の再ポジショニング
ある製品が特定の市場で売れない場合、その製品を異なる用途や異なる市場に向けて再ポジショニングすることで、新たな顧客層を開拓できるかもしれません。

サービスの適応
例えば、テクノロジー企業が開発したプラットフォームが特定の業界で受け入れられない場合、そのプラットフォームを教育やヘルスケア分野など、全く異なる分野に適用することで新たな価値を創造できるかもしれません。

カルピスのリブランドの事例

1990年代初頭から日本は少子化の進行に直面しており、これが消費市場に多大な影響を与えるようになりました。

特に子供をターゲットとした商品は、市場が縮小し続ける中で、販売数が低下する傾向にありました。
カルピスもその例外ではなく、子供数の減少とともに従来の市場での販売数が徐々に落ち込んでいました。

リブランドの背景

カルピスは、子供を主要なターゲットとしたマーケティング戦略が持続的な成長にはもはや適していないと判断しました。

このため、製品のイメージと市場戦略を全面的に見直すことに決定!
健康とウェルネスへの関心が高まっている社会的なトレンドに注目し、製品のポジショニングを「全年齢層向けの健康飲料」として再定義しました。

リブランドの実施

キャッチコピーの変更
元々「初恋の味」というキャッチコピーで親しまれていたカルピスは、「からだにピース」という新しいスローガンを採用しました。
これにより、健康と平和を連想させるポジティブなメッセージを前面に出し、製品の健康的なイメージを強調。

ターゲットの拡大
子供だけでなく、成人を含む全年齢層にアピールすることで、市場の広がりを図りました。
特に、かつて子供時代にカルピスを愛飲していた世代に向けたマーケティングが強化され、彼らが大人になっても引き続き楽しめる健康飲料としての位置付けを確立。

リブランド後の成果

リブランド後、カルピスは販売数の復活を果たしました。
新しいキャッチコピーとターゲット戦略が功を奏し、特に健康を重視する消費者層からの支持を集めることができました。

この成功は、製品の持つ本質的な価値を再評価し、市場のニーズに応じてブランドイメージを適切に更新することの重要性を示しています。

このリブランディングは、少子化という社会的変化に対応し、既存の製品に新たな生命を吹き込む一例として、広く認識されるようになりました。

全年齢層にわたる健康志向の高まりを背景に、カルピスは再び市場での強固な地位を確立することに成功しました。

この事例は、時代の変化ともに市場に受け入れられなくなった商品(レモン)が視点を変化させること(レモネード)に変更することで危機をチャンスに変えた一例です。

成功への影響

この戦略により、カルピスは製品の生命を延長し、新しい市場セグメントでの成功を確立しました。
事業環境の変化を正確に読み取り、その変化をチャンスとして捉えることで、企業は継続的な成長と競争上の優位性を確保することができます。

カルピスの例は、他の企業が直面する類似の課題に対しても示唆に富むものであり、時代の変化に柔軟に適応する重要性を教えてくれます。

ところ変われば礼儀変わり、ところ変われば品変わる

それは本当にレモンなのかい!?俺にはおしいそうなオレンジにしか見えない!!

状況や視点によって「レモン」かもしれないものが、実は「オレンジ」に見えるかもしれないという可能性を示唆しています。
つまり、同じ事象でも異なる角度から見れば全く異なる価値や意味を持つことがあるという点を強調しています。

このような視点は、ビジネスや日常生活において非常に有用です。
例えば、困難や問題がある時にそれをネガティブな「レモン」としてだけでなく、何か新しい機会や学びを生み出す「オレンジ」として捉えることができるかどうかが重要です。

もっともレモン自体に価値があることを忘れてはなりません。

レモンをレモネードに変えるのはたしかに素晴らしいことですが、レモンにはレモンそれ自体の価値がある、ということわざがあってもいいですよね。

英語なら、たとえば・・・
Life has given me a lemon, and I love it.

THINK!このブログの読み応え!おすすめ度4.5/5 ★★★★☆彡

理論的な解説と実際の事例の組み合わせが豊富で、理解を深めるのに役立つ洞察が得られます。
特に、カルピスのリブランディング事例は具体的で実際的な学びが多いため、ビジネス戦略に興味のある読者にとっては特に魅力的です。

さらに、エフェクチュエーション理論の他の原則に関しても、実生活やビジネスシーンでの応用が想像しやすく説明されています。

こんな人にお勧め!

起業家およびアスピリング起業家

エフェクチュエーション理論は、特に新しいビジネスを立ち上げる際の不確実性に対処する方法を提供するため、起業を考えている人々や既にビジネスを始めている起業家にとって非常に有益です。

ビジネス学生と教育者

理論と実際の事例を結びつける内容は、ビジネス学の学生や教育者にとっても理解を深め、教材としての価値があります。

ビジネス戦略とマネジメントに関心がある専門家

変化する市場環境に適応するための戦略的アプローチを学びたいビジネスマネジャーやコンサルタントにとって、具体的な事例と戦略的考察が役立ちます。

製品開発およびマーケティングの専門家

製品のリポジショニングや市場での再定義に関心がある専門家にとって、カルピスの事例は特に参考になるでしょう。

変化に柔軟に対応する方法を学びたい人々

個人的なキャリアや日常生活において、予期せぬ状況や困難をチャンスに変える方法を学びたいと思っている人々にとっても、このブログはヒントやインスピレーションを提供します。


エフェクチュエーション(effectuation)【第1回】手中の鳥を活用せよ!

エフェクチュエーション(effectuation)【第2回】クレイジーキルトの原則

エフェクチュエーション(effectuation)【第3回】許容可能な損失の原則

エフェクチュエーション(effectuation)【第5回】飛行機の中のパイロットの原則