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閉幕間近の万博、5時間待ちと泣き叫ぶ子供の現場レポート

いよいよ万博も閉幕間近。来場者数はついに2000万人を突破しました。
しかし現場では、人気パビリオンで5時間待ち、泣き叫ぶ子供もいるなど過酷な状況が続きます。
最後の3週間に向けて、現地の混雑・輸送・暑さ対策の課題を振り返りながら考えてみます。
目次
来場者数2000万人突破!でも目標の2800万人へは険しい道のり

現在、来場者累計が2000万人を突破。これは万博の公式・報道発表で確認されています。
目標は2800万人。残る1か月でおよそ800万人を獲得する必要があり、1日あたり約20万人以上の来場を毎日達成しなければならない計算です。
これは以前提示された予測値にも近く、公式資料でも「1日あたり約22.7万人/日」くらいを想定する日があることが述べられています。
この数字からすると、通常よりかなりの“駆け込み需要”が期待されており、ピーク日の来場者増にどう対応するかが鍵となります。
「待たない万博」を目指したはずが、実際には “5時間待ち” の現場も

人気のパビリオン・展示について、「待ち時間4~5時間」という報道がいくつか出ています。特に休日・ピーク時間帯にはこうした長時間待ちが発生。
来場者の写真付き体験記などでも、「炎天下で3時間、4時間、立ちっぱなしで待った」、「子供が泣き出す」などの声が複数報告されています。
例:旅行記の投稿で「30分~1時間待ち」は序盤で、人気館になるとそれ以上。
こうした待ち時間は、計画上は○時間以内とされた想定を大きく超えており、「待たない」という目標とのギャップが明らかになっています。
猛暑を超え、秋はさらなる混雑に + 水運活用の挫折

淀川左岸線(2期)
淀川左岸線(2期)とは、夢洲へ向かうシャトルバスなどアクセスルートとして整備中の道路です。海老江JCTから新御堂筋付近までを結ぶ約4.4kmの区間。
開業時期は本開通が2032年度。しかし、万博開催期間中は暫定的にシャトルバス等が利用可能な部分を供用できるよう整備中です。ただし一部は地上部のまま、未完成の区間が混ざり、通行可能でも工事中部分が残ります。安全性・渋滞対策には限界があります。
夢洲駅(Osaka Metro 中央線延伸部)
夢洲駅は2025年1月19日に開業した新駅。1日あたり最高13万人の利用者を見込む予定で、改札口数や混雑緩和レイアウトの工夫がされています。
・水運(航路)の検討は多数ありましたが、運航業者が採算性の観点から参入できないルートも。例えば、検討された8ルートのうち3ルートは「誰もやる人がいない」として、実現可能性はかなり低いと見られています。
開幕初期の運航でも乗船率は2割程度にとどまり、その後運賃を3~7割引き下げる対応を取るなど苦戦しました。割高感と公共交通とのコスト比較が、利用拡大の障壁となっています。
輸送力・混雑の現状
夢洲駅の改札口は1か所しか使われない時間帯もあり、混雑時には駅構内で入場制限がかかることも。安全面の懸念が報じられています。
万博交通のアクションプランでは、淀川左岸線(2期)を含むアクセスルートを強化し、鉄道・バス輸送のダイヤ増・本数増を検討中。公共交通主体での輸送を前提とした整備が進んでいます。
例:バス輸送時のアクセス利用者数は時間あたり1.2万人を想定。目標の2800万人を達成するには会期中15万人平均以上の輸送力が必要でした。
電車で13万人、残りはバス・水上交通・タクシーなどに振り分けられます(自家用車は乗り入れ禁止)。
・空飛ぶ車も計画でとん挫
・淀川左岸道路はコロナで完成延期
・水上交通は港の整備ができても運営者が手を上げず
このように、計画段階との輸送力は大幅に低下しています。
来場者の「セルフ防護策」あれこれ — 折り畳み椅子、暑さ対策、体験の見返り感
暑さと待ち時間のダブルパンチにより、来場者自身が“疲れ対策”を講じるケースが増えていることが、体験記から読み取れます。
折り畳み椅子などを持参して列に座る人、日よけや帽子・水分を十分に用意する人が多いです。記事やSNS上の感想にも、「立ちっぱなしがつらい」、「子供がぐずる」などの声が複数報告されています。
折り畳み椅子がAmazonなどで売れ筋上位を独占しているというデータもあります。
“待ち行列中の快適アイテム”の需要が高いことは、複数の報道・レビューで共通して述べられています。
これは、「期待値 vs 実際の待ち時間・体験」とのギャップを来場者が補うための、自己防衛的行動と言えるでしょう。

机上の空論と現場のギャップ—何が足りないか
以下のような点が、計画・宣伝と実際の運営で乖離を生んでいます。
| 項目 | 計画上の想定・目標 | 実際の課題 |
|---|---|---|
| アクセスルート | 淀川左岸線(2期)の暫定利用、夢洲駅の中央線延伸によるアクセス強化 | 一部未完成の区間による迂回、駅改札の混雑、輸送容量の限界(改札数・出口数など) |
| 混雑予測 | 日あたり20万人前後を目標想定。公共交通・バス・鉄道の分散利用促進 | 来場ピーク時のバス・電車・駅での詰まり、帰りの混雑殺到、入場待ち列の延長、予約が取れない展示へのアクセス制限など多数報告あり |
| 想定外のユーザー体験 | 「待たない」「快適に」「スムーズに」来場・滞在できることを謳うプロモーション要素あり | 子ども連れや高齢者にとって待ち時間・暑さ・混雑が大きな負荷。展示内容によっては映像中心など期待外れと感じる声も |
現場でのフォロー策(案内スタッフの配置強化、待ち列改善、ピーク時間の予約制導入など)は一部で行われているものの、「想定以上」の来場者数・混雑がこれらの対策を圧迫しているようです。
「待たない万博」というスローガンは理想的でした。しかし、実際の現場を想定したフォロー策は不足していたと言わざるを得ません。ビジネスでも同じです。
計画やアイデアだけではなく、現場で生まれる問題にどう対応するか、その運用力こそが成功のカギです。
まとめ
残り1か月、万博は再び人波に飲み込まれていくでしょう。
来場者数2000万人突破という数字の達成感の裏側で、現場では「5時間待ち」「泣き叫ぶ子供」という現実が横たわっています。
最後に問われるのは、「机上の計画」と「現実の運営力」のギャップをどう埋めるか。
輸送インフラの遅れ、水運のとん挫、酷暑対策の不足――これらはすべて、理想と現実のズレから生まれたものです。
これ以上、泣き叫ぶ子供を見たくはありません。
現場での改善力、そして小さな工夫を積み重ねる力こそが、未来につながる最大の学びになるのではないでしょうか。



