スカウト行為禁止と手数料規制、2025年風営法改正の注目ポイント

現在（2025年1月時点）、「いわゆる“スカウト行為”」や「スカウトバック（スカウトをさらに組織的・反復的に行う、あるいは悪質な手口で連れ戻す行為など）」といった、主に夜職・風俗関連での違法勧誘行為を取り締まろうという動きが強まっているのは事実です。

一方で「2025年の通常国会で風営法改正がどうなるか」という点については、現時点では具体的な法案の全容や改正内容が確定しているわけではなく、各メディアでも「与党・野党間での調整」「関連団体の意見集約」などの段階にあると報じられています。

以下では、もし「スカウトバック」が実質的に禁止される（違法性が明確化される）形で風営法が改正された場合に考えられる影響や論点を整理します。

なぜスカウト行為が問題視されるのか？規制の背景を解説

若年層女性への深刻な被害

スカウト行為は一部の業者によって違法・半違法な手段で行われ、若年層女性に深刻な被害をもたらしています。

具体的には以下のような問題があります。

強引な営業手法：ホストクラブへの執拗な誘いから、破産や多額の借金を抱える事態に発展。

不本意な個人売春：スカウト行為がきっかけで風俗店や路上での個人売春に追い込まれるケース。

色恋営業と売掛金の罠

ホストクラブや風俗業界では、交際や結婚の約束をちらつかせる“色恋営業”が行われることがあります。
このような手法により、高額な売掛金を抱え、返済のために働かざるを得ない状況に陥ることも…。

スカウトバックの規制強化

スカウト行為を支える“スカウトバック”（紹介手数料）も問題視されています。
この仕組みは以下のような懸念を生んでいます。

組織的な連れ戻し：スカウト対象者が業界を離れようとすると、強引に引き戻される事例も。

収益優先の悪質な勧誘：報酬目的で過剰な勧誘が行われ、トラブルが拡大。

改正風営法の主な内容と論点

「スカウト行為」「スカウトバック」行為の定義明確化

改正風営法では、どのような行為を「違法な勧誘」「違法な引き戻し・連れ戻し」とみなすかについて、定義が厳密化される可能性があります。

過去の事例：条例では「みだりに人を勧誘する行為」「勧誘を強制する行為」などが禁止されてきました。

今回の焦点：定義がより広義かつ詳細に規定される見通しで、これに違反した場合の処罰も明確化される可能性が高いです。

違反者および関連店舗への行政処分の強化

店舗も対象に：違法なスカウト行為を行った個人にとどまらず、その背景にある店舗や紹介元に対しても処分が科される見込みです。

厳しい処罰：一定数以上の違反が確認された店舗・事業者には、営業許可の取り消しや厳罰が検討される可能性があります。

警察・行政の権限拡大と監視体制の強化

監視強化：悪質な勧誘が疑われる現場や、繰り返し違反が確認された店舗への立ち入り検査や監督権限が強化される可能性があります。

オンライン対策：SNSやネット上でのスカウト行為が増加しているため、サイバーパトロールやオンライン取り締まりの強化も論点となっています。

夜職・風俗業界関係者からの反発と懸念

正当な求人への影響：悪質な勧誘の取り締まり自体には賛成の声もありますが、正当な求人活動や適切なマッチングが萎縮する懸念が指摘されています。

業界全体のイメージ悪化：合法的な営業を行う店舗や従業員が、一括りに“違法・危険”とみなされることへの反発もあります。

今後の展開

1. 法案の国会審議状況

2025年通常国会で風営法改正案が審議される予定ですが、与野党や業界団体間での折衝が長引く可能性があります。

注目点：スカウト行為の定義や処罰の範囲がどこまで拡大するかが焦点です。

2. 施行後の運用指針

ガイドラインの策定：改正法成立後、警察庁や自治体が取り締まりや運用の詳細を定めます。

対象範囲：ガイドライン次第で実際の取り締まりの厳しさや対象範囲が変わることになります。

3. 業界の自主規制や啓発活動

自主ルールの導入：業界団体がスカウト行為を禁止する内規を定める動きが予想されます。

正当な募集手段の整備：合法的な雇用を促進するための仕組みが求められます。

規制の負の側面と懸念点｜個人売春の増加リスク

風俗店を通さない“個人売春”増加の懸念

スカウト規制の強化により、正規ルートでの雇用が制限され、“個人売春”が増加するリスクが指摘されています。

正規ルートの縮小

悪質なスカウト行為を取り締まることで、「街頭スカウト」の減少が見込まれる一方、風俗店のような管理体制が整った正規ルートの窓口が狭まり、働き手が“闇営業”や“立ちんぼ”に流れる可能性があります。

SNS・アプリ経由での“個人売春”の増加

パパ活アプリやマッチングアプリを悪用した売春行為が拡大傾向にあり、規制強化がさらに個人売春のオンライン化を促す懸念もあります。

犯罪リスクの拡大

個人売春の増加に伴い、以下のリスクが高まります。

客層のチェックが難しい：暴力、詐欺、性犯罪、金銭トラブルなどのリスク増加。
トラブル対応の不在：管理者不在のため、トラブル解決や被害対応が困難になる。

背景と構造 – なぜこうなるのか？

「規制＝悪質行為の防止」だけでは不十分

スカウト規制は悪質行為を防ぐための施策ですが、需要（利用者）と供給（働き手）が存在する限り、よりグレーな形での取引が拡大するリスクがあります。

オンライン化・非店舗化が進む風俗産業

コロナ禍以降、マッチングアプリやSNSを通じた売春が拡大。既存の風営法はこうした新たな形態には対応しきれていません。

対策の方向性 – どう進めるべきか？

トータルな法整備と社会的支援の強化

貧困対策や教育支援、若年層への就労サポートを充実させ、安易な性サービスへの流入を抑える。
スカウト行為規制に加え、SNSやアプリ経由の売春にも対応するモニタリング体制を構築。

オンライン上での取り締まりの強化

マッチングアプリ運営会社との協力を進め、通報体制やアカウント停止ルールの強化を義務化する。

業界の適正管理の導入

正規の店舗型風俗での雇用環境を整え、安全性を高める。合法的な事業者には優遇策を導入し、働き手が正規ルートを選びやすい仕組みを作る。

次に考えるべき課題

この規制の副作用を防ぐには、さらに包括的な議論が必要です。

次のセクションでは、具体的な実例や、実際に施行された際の業界の反応を考察していきます。
引き続きご覧ください。

スカウト規制強化の課題と今後の対応策｜規制強化の重要性とその限界

スカウト規制は、若年層や弱い立場の人々を保護するうえで重要な役割を果たします。
しかし、その一方で、規制だけでは抜け道が生じ、問題が別の形で表面化するリスクがあります。

非店舗型売春へのシフトリスク

規制により「街頭スカウト」などは減少する可能性があるものの、以下のリスクが懸念されます。

SNSやアプリでの個人売春の増加
規制が届きにくいオンライン環境でのやり取りが活発化。

管理のない非合法な活動の拡大
安全面や権利保護が薄い状況での労働や犯罪リスクの増加。

抜け道を防ぐための包括的なアプローチ

規制の効果を高めるためには、以下の対策が不可欠です。

オンライン規制の強化
SNSやマッチングアプリでの売春行為を防ぐため、警察や事業者との連携強化。

被害者支援と救済の充実
早期介入や保護の仕組みを整備し、被害者が救済される社会基盤の構築。

教育と就労支援の拡充
貧困や孤立を減らし、性サービスへの依存を防ぐ社会的サポート。

本質的な解決への視点

規制だけに頼るのではなく、問題の背景にある「需要と供給の構造」に目を向ける必要があります。

需要の抑制：社会全体で性サービス依存を減らす教育や意識改革。
供給の削減：より安全な雇用環境の整備と経済的支援。

全体の見通し

スカウト規制は必要不可欠な一歩ですが、それだけでは根本的な解決には至りません。
今後は、規制強化と並行して包括的な対策を進め、持続可能で安全な社会を目指すことが求められるでしょう。