2025.06.30
「今日のイベントは2度とない」──推し活に見る“瞬間価値”の本質とは?


目次
「今日しかない」は口癖ではない


たとえば、現場でよく耳にする言葉たち──
- 「今日の現場マジで尊かった」
- 「今日しかないから行く」
- 「今回のセトリ、次はもう聴けないかもしれない」
──推し活中の人たちは、口を揃えてこう言います。
これは単なるテンションの高さではなく、
その体験が“かけがえのない一回性”を持っていることを、本人が深く理解している証拠です。
人は“二度とない”ものに意味を見出す


哲学者マルティン・ハイデガーは「存在の意味は“有限性”によって輪郭を持つ」と語りました。
つまり、“終わりがある”ことこそが、その瞬間を特別にするのです。
「同じ曲なのに、今日のあの一瞬は違った」──
- 同じ楽曲でも、ライブのアレンジや表情が違う
- メンバーの調子・観客の熱・MCの流れ…全てが“今日限定”の物語
- カメラ越しでは味わえない“その場”の空気と感情
推し活とは、「この瞬間にしか存在しない世界」を見にいく行為です。
推し活は“人生の再構築装置”である


日常生活では、昨日と今日があまり変わらず流れていくものです。
しかし推し活は、それに“切れ目”と“記憶の節”を生む装置です。
ふと思い出す、あのときの瞬間──
- 1年前のこの日は〇〇の公演だった
- あのときの涙が、今の自分の支えになっている
- 推しのひと言が、自分の人生観を変えた
それは単なるイベントではなく、“人生の文脈を再編集する儀式”なのです。
「体験の一回性」がもたらす3つの心理効果


-
① 没入力の増大
「もう二度とない」と感じると、人は注意と感情を最大限そこに集中させる。結果、強烈な記憶になる。 -
② 記憶の特別化
一度きりの体験は、脳内で“通常の記憶”とは異なるフォルダに保存される(エピソード記憶強化)。 -
③ 自己物語との統合
その一回性体験が、「私はこういう人生を生きている」という “自己ストーリー”に統合される。
まとめ──今日という体験が、未来の自分を救う
推し活とは、“今この瞬間”にしか咲かない感情の花を摘みに行くこと。
その一回きりのライブが、
その表情が、
その空間の熱が、
“ただの記憶”ではなく、
“生きるための栄養”として
未来の自分を支える日が来る。
「今日しかない」は、現場に行く理由じゃない。
それは、人生を“意味のあるもの”として積み上げていくための祈りでもあるのです。