65歳以上の就労と資産形成の未来世代間格差を考える
目次
日本の60歳以上の就労人口は70%以上と世界で突出している
日本の高齢者が長く働き続けることは、国際的にも特異な現象です。
2024年現在、日本の60歳以上の就労人口割合は70%を超え、これは世界的に見ても非常に高い水準となっています。
この背景には、年金制度の不安や物価上昇による生活費増加が影響しています。
他国ではリタイア後の生活が主流ですが、日本では高齢者が職場に留まり続ける傾向が強まっています。
例えば、アメリカでは65歳以上の就労率は20%以下であるのに対し、日本では4倍近くの数値を示しています。
これは、長寿化社会と共に、健康寿命が延びていることも一因です。
多くの高齢者が「まだ働ける」「働き続けたい」と考え、労働市場に参加しています。
また、日本企業の高齢者活用が進んでいる点も特徴的です。
定年後の再雇用制度や高齢者向けの専門職場の増加により、選択肢が広がっています。
一方で、これが「高齢者の働かざるを得ない現実」を表しているとの批判もあります。
特に年金額が生活を支えるのに十分でないと感じる高齢者が、労働を余儀なくされているケースも多いです。
しかし、保有する金融資産は平均で1900万円(2024年現在)
65歳以上の世帯の金融資産平均は約1,900万円とされていますが、この数値は非常に分散しています。
実際には、資産をほとんど持たない世帯が一定数存在する一方で、大量の資産を保有する世帯もあります。
この平均値はあくまで目安であり、中央値(多くの高齢者が持つ実際の額)で見るとさらに低い傾向があります。
高齢者が資産を多く保有する理由は、戦後の高度経済成長期を経験し、比較的安定した就労環境で貯蓄を行えた世代であることが背景にあります。
また、不動産を含む資産運用によって、一定の資産を形成した層もいます。
しかし、近年は医療費や介護費用が増加し、年金だけでは生活費をまかなえず、資産を切り崩す高齢者が増えています。
特に低所得高齢者層では、資産を持たないまま長寿を迎えるリスクが高まっています。
これが「老後破綻」と呼ばれる社会問題として浮き彫りになっているのです。
年金制度の今後の見通しの悪さから、今後の就労人口は伸びる
日本の年金制度は持続可能性に課題を抱えています。
少子高齢化に伴い、年金受給者数が増加する一方で、それを支える現役世代の減少が続いています。
この状況は、年金給付額の引き下げや受給開始年齢の引き上げを引き起こしており、高齢者が働き続ける要因の一つとなっています。
さらに、インフレや物価上昇も高齢者の就労を促しています。
生活費が増加する中、年金収入だけでは生活が成り立たないと感じる高齢者が増えています。
これにより、65歳以上の就労率はさらに上昇する見込みです。
労働市場では高齢者に特化した雇用が増加しています。
高齢者を積極的に雇用する企業が増える一方で、短時間勤務や柔軟な働き方を提供する職場が多くなっています。
これにより、高齢者が働きやすい環境が整いつつあり、就労人口のさらなる増加を後押ししています。
今後10年間の予測として、若年層との世代間格差は広がるのか?
今後10年間、世代間の金融資産格差はさらに拡大する可能性があります。
以下の要因がその根拠です。
資産形成の違い
高齢者は、比較的安定した経済環境で働き、資産を形成する機会が多かった世代です。
一方で、若年層は非正規雇用の増加や賃金の伸び悩みにより、資産形成が困難な状況にあります。
この傾向は長期的に続く可能性が高く、結果として世代間格差が広がる要因となります。
高齢者の資産運用意識の向上
金融リテラシーが高まる中、高齢者が資産を運用し、長期投資に取り組む傾向が増加しています。
これにより、高齢者の保有資産がさらに拡大し、若年層との資産格差が強調される可能性があります。
孤独資産の増加
高齢者が資産を使い切れないまま亡くなる「孤独資産」問題も影響します。
この資産が相続税の負担軽減や投資促進によって若年層に回る仕組みが整わなければ、富が高齢者層に集中したままになるリスクがあります。
提案|格差是正のための政策
若年層との世代間格差を是正するためには、以下のような政策が有効です。
若年層の資産形成支援:新NISAの拡充や教育資金補助など、若年層が資産を増やしやすい制度設計。
高齢者資産の社会的還元:孤独資産を社会貢献型の投資に活用し、若年層や地域経済を支援する税制優遇措置。
労働市場の柔軟性向上:高齢者と若年層が共存できる職場環境の整備。
60代をターゲットとした娯楽などのサービス業の活況。
まとめ
日本の65歳以上の就労人口は今後さらに増加し、金融資産保有状況にも影響を与えるでしょう。
しかし、世代間格差の広がりを抑制し、全世代が安心して暮らせる社会を実現するためには、政策の改革と社会全体での意識共有が不可欠です。
高齢者の知恵と資産を、若年層の成長に繋げる橋渡しが、今後の日本の未来を大きく左右するでしょう。