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2025.04.28

意思決定の心理を紐解く(第4回)|選択アーキテクチャを再設計する〜環境があなたを動かしている〜

選択肢は、ただ“そこにある”ものではありません。

実は私たちが「何を選ぶか」は、どう選択肢が“提示されているか”に大きく影響されます。

たとえばレストランのメニュー。
最初に目に入る料理、写真のあるもの、シェフのおすすめマーク…。

私たちは「自分で選んだ」と思っていても、その意思決定はすでに「選択のデザイン」によって“誘導”されているのです。

これが、選択アーキテクチャchoice architecture)の考え方です。

選択アーキテクチャとは?

選択アーキテクチャとは、人が意思決定をする際に、その選択肢や選び方がどのように構成されているかを指します。

この概念は、行動経済学者リチャード・セイラーによって提唱されました。

つまり、

選択肢の“順番”
初期設定(デフォルト)
選びやすさの工夫
周囲の文脈

こうした「環境のデザイン」が、私たちの選択に影響を与えているのです。

身近な“設計された選択”の例

ネット通販で「おすすめ商品」が目立つ場所に表示される

健康保険の申請書で、「臓器提供する」にチェックが最初から入っている

オンライン会議の「カメラON」がデフォルト設定

飲食店のランチメニューで「人気No.1」が一番上に書かれている

→ これらはすべて「あなたの行動を、特定の方向に導くための設計」です。

無意識に選ばされている? それとも自分で選んでいる?

私たちは、選択を“自分でコントロールしている”と感じたい。
でも実際は、多くの場面で環境に反応しているだけだったりする。

ここで重要なのが、「選択の構造に気づき、それを意図的に設計しなおす力」。

つまり、「選択される自分」から選択をデザインする自分へのシフトです。

自分の選択アーキテクチャを再設計するには?

以下は、実生活に活かせる「選択アーキテクチャ再設計術」です。

① デフォルトを変える

無意識に従っている初期設定を、自分にとって良いものに置き換える。

スマホの通知 → すべてオフ

自動的に開くアプリ → 意図的にニュースではなくメモアプリに

朝のルーティン → 最初に開くのはSNSではなく、日記帳にしてみる

② “見える化”と“隠す化”で行動を変える

目に見えるものは選びやすく、見えないものは選ばれにくい。

健康的な食材を目に入る場所に

誘惑(お菓子やスマホ)は物理的に“隠す”

タスクリストはPCのデスクトップに大きく貼る

③ 意志より仕組みで管理する

意志力は有限。
選択アーキテクチャの工夫で「迷わず進める仕組み」を先に作っておく。

毎日決まった時間に、作業用BGMが自動で流れる設定

先に“やることリスト”をタイマー連動で表示する

決断疲れを避けるため、選択肢をあらかじめ絞っておく

環境は“他人”が作るものではない

人は環境に支配される」――これはある意味で真実です。

だが逆にいえば、“環境”を自分で設計することで、自分を望む方向へ導くこともできるということ。

それは、メタ認知と選択アーキテクチャの組み合わせで初めて実現できる「行動の再設計」です。

今日やってみるヒント

今日、自分の行動を左右した“環境”に注目してみましょう。

どんな順番や仕掛けが影響していた?

違う並びだったら、違う選択をしていたかも?

自分にとって「選びやすい環境」を作るとしたら、どんなふうにする?

小さな気づきでもOKです。
まずは、自分の選択を“外側から眺める”一歩を!

次回予告|第5回:「なぜ私たちは『選ばされた』と感じないのか?」

ナッジ、フレーミング効果、デフォルトバイアス…
私たちの選択は、思っている以上に“誘導”されている。
無意識に操作される心理メカニズムをひも解きます。