意思決定の心理を紐解く(第3回)|メタ認知の技術〜自分の思考に気づく“もう一人の自分”を育てる〜


「考えている自分を、考える」
――この、いわば“もう一人の自分”の存在に気づくこと。
それが メタ認知(metacognition)の始まりです。
私たちは、日々の思考を自動で回し、推論のはしごを登り、前提やバイアスに沿って世界を解釈しています。
だが、もしその「思考の自動運転」を外から観察できたら、どうでしょう?
目次
メタ認知とは何か?


メタ認知とは、「自分の認知(思考・感情・判断)に気づき、モニタリングする力」のこと。
簡単にいえば、「自分の頭の中を実況中継できる」ようになる力。
・今、自分は何を考えているのか
・なぜそう思ったのか
・それはどんな前提に基づいているのか
・他の見方は可能か
・この感情の源は何か?
これらを“内省的に問いかける”ことで、思考のバイアスから一歩距離を取ることができます。
メタ認知がある人 vs ない人
状況 | メタ認知が低い人 | メタ認知が高い人 |
---|---|---|
会議で意見が通らなかった | 「自分は否定された」と決めつける | 「なぜそう判断されたのか、意図を聞いてみよう」と思う |
ネガティブな感情が湧いた | すぐに反応し感情的になる | 「今、自分はなぜこの感情を抱いたのか」を一度整理する |
成果が出ないとき | 自己否定する | 思考パターンや戦略を振り返り、軌道修正する |
メタ認知を鍛える3つの習慣


①「内省ジャーナル」をつける
1日の終わりに、自分の思考・判断・感情を振り返る習慣。
特に“感情が動いた瞬間”に注目すると、自動思考のパターンが見えてきます。
記録の例
・どんな出来事があったか
・それに対して自分は何を考えたか
・なぜそう解釈したのか
・他の見方はできなかったか?
②「メタな質問」を持ち歩く
思考のフックになる問いを自分に投げるクセをつける。
おすすめの質問
「この考えはどこから来た?」
「今、自分は何に反応している?」
「他の人ならどう見るだろう?」
「この感情の“本当の理由”は?」
③「他人の思考を翻訳する」練習
他人の発言や行動に対して、すぐに感情で反応せず、「この人はどういう前提でこれを言っているんだろう?」と考えてみる。
これはメタ認知力+共感力のトレーニングになります。
メタ認知は“自分をデバッグする力”


プログラムにバグがあると意図通りに動かないように、私たちの思考にも「バグ」や「偏り」があります。
そのバグに気づき、自分のコードを修正できるのが、メタ認知という力です。
一度それが身につくと、思考の透明度が増し、自己理解も他者理解も格段に深まり、意思決定はより“自分らしい”ものになっていくでしょう。
自分と話す3つの質問 💬
・今日、自分が“自動思考”に流された瞬間は?
・その時、自分の内面ではどんな解釈や感情が動いていたか?
・その解釈を「編集」できるとしたら、どう書き換えるか?
小さな問いかけを繰り返すことで、思考にスペースが生まれます。
今日はほんの少しだけでも、“考えている自分”と対話してみませんか?