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日銀が利上げに慎重な理由は変動金利75%の住宅ローン構造|諸外国に学ぶ激変緩和措置

「なぜ日銀は、こんなに利上げに慎重なのか?」
インフレが進み、賃上げも始まり、世界的には金利正常化が当たり前になっている中で、
日本だけが”逡巡”しているように見える。
しかしこの慎重さ、単なる弱腰ではありません。
背景には、日本独特の「住宅ローン構造」という、
極めて現実的な問題があります。
01:日銀の利上げは、2026年中に後2回は予定調和!?
市場ではすでに、
「2026年中にあと1〜2回の利上げは既定路線」という見方が大勢です。
実際、日銀はこれまでの会合でも、
✓ 急激な利上げは行わない
✓ 経済・家計への影響を慎重に見極める
という姿勢を一貫して示しています。
つまり今の利上げは、サプライズではなく”予定調和”
ただし、スピードだけは極端に抑えられている。
その理由は、金融市場よりも国内家計にあります。
02:ここ数年で住宅ローンで変動金利を選んでいる世帯は75%以上
日本の住宅ローンの最大の特徴はここです。
📊 変動金利比率:約75%超
固定金利は少数派
なぜここまで変動が選ばれたのか。理由は単純で、
📈 長期にわたる超低金利政策
💭 「金利は上がらない」という空気
💰 固定との差が大きすぎた金利水準
この環境が、合理的に変動を選ばせたのです。
つまりこれは、家計の判断ミスではなく
政策が作った構造と言って差し支えありません。
03:金利が上がることによる、家計破綻リスクとGDPへの影響
ここで金利を一気に上げると、何が起きるか。
👨👩👧👦 家計サイド
📈 返済額の増加
📉 可処分所得の減少
❄️ 消費マインドの冷却
📊 マクロ経済
🛒 個人消費の減速
🏠 住宅関連投資の鈍化
📉 GDPの押し下げ要因
特に怖いのは、
「返せないほどではないが、使えなくなる」世帯の大量発生。
これは破綻よりも静かに、しかし確実に経済を冷やします。
日銀が恐れているのは、インフレではなく
“家計主導のデフレ再燃”です。
04:住宅ローンの金利を課税所得から控除するという設計はいかが?
そこで一つ、設計論として提案したいのがこれです。
💡 住宅ローン金利を、課税所得から控除する。
現在の住宅ローン控除は、
• 残高×一定率
• 期間限定
• 政策色の強い”補助金型”
一方、金利控除にすると、
✓ 金利=コスト
✓ コスト=所得から差し引く
✓ 金利が上がるほど自動的に緩衝材が働く
これは、
📈 金利上昇を前提にした制度
🛡️ インフレ耐性のある税制
⚙️ 家計のショックを”自動調整”する仕組み
になります。
「金利を上げるな」ではなく、
「上げても壊れない設計を先に用意する」
という発想です。
05:日銀と政府が本当にやるべきこと
― 利上げ × 激変緩和措置(諸外国はどうしてきたか)―
金利を上げること自体は、世界的に見れば特別な政策ではありません。
重要なのは、
「どう上げたか」ではなく「何とセットで上げたか」です。
実際、主要国はすべて、利上げ局面で家計への緩衝策を同時に講じています。
🇺🇸 アメリカ
住宅ローン金利控除(Mortgage Interest Deduction)
アメリカでは、住宅ローンの支払利息を所得から控除できる制度が長年存在しています。
金利が上がる
→ 利息支払い増
→ 控除額も増える
つまり、金融引き締めの痛みを、税制が自動的に吸収する設計です。
利上げを行いながらも、「住宅を持つこと自体がリスクになりすぎない」構造を維持しています。
🇬🇧 イギリス
利上げ時の段階調整と家計影響の事前開示
イギリスでは、急激な利上げを避けるだけでなく、
• 家計負担の試算
• 住宅ローンへの影響シナリオ
• 金融機関へのストレステスト
を事前に市場と共有します。
これは、「利上げそのものより、先行き不安が消費を冷やす」ことを理解しているからです。
🇳🇱 オランダ
住宅ローン金利の所得控除を前提にした金融政策
オランダでは、住宅ローン金利の所得控除が制度として組み込まれており、
金利上昇 ⇄ 税負担の軽減
が同時に動く仕組みになっています。
そのため中央銀行は、「利上げ=家計破綻」にならない前提で金融政策を運用できます。
🇯🇵 日本だけが「利上げ=危険」になっている理由
日本がここまで利上げに慎重なのは、国民性でも、日銀の弱さでもありません。
❌ 変動金利比率が極端に高い
❌ 金利上昇時の自動緩和装置がない
❌ 税制が”低金利前提”のまま止まっている
この制度の未更新こそが、最大の問題です。
本当に必要なのは「利上げを止めること」ではない
やるべきことは明確です。
🏦 日銀:
段階的な利上げで金融を正常化
🏛️ 政府:
• 住宅ローン金利の所得控除
• 家計向け激変緩和措置
• 金利上昇を前提とした税制再設計
これを同時に動かすこと。
利上げを恐れて何もしないのではなく、
利上げを”扱える政策”に変える。
諸外国がすでに通ってきた道を、日本もようやく歩き始める段階に来ているのではないでしょうか。
最後に
変動金利を選んだ人たちは、
無謀だったわけでも、楽観的だったわけでもありません。
その選択は、当時の政策と環境が生んだ”合理的判断”でした。
だからこそ今、政策側が次の合理性を示す番に来ています。
金利を上げるなら、
守り方も一緒にアップデートする。
それができるかどうかが、
日本経済の次の10年を分けるポイントです。



