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責任ある積極財政とは?国債1100兆円でも経済が安定する理由を解説

いま、国の財政をめぐる議論が再び熱を帯びています。
しかし、この二項対立のどちらにも、真の答えはありません。
2025年の日本は、税収が過去最高の73兆円超(財務省統計)を記録し、同時に国債発行残高は1,100兆円を超えました。
にもかかわらず、経済は安定し、円は信認を保っています。
2025年度末時点で、日本政府の国債残高は約1,107兆円(財務省「国債残高の状況」)。
これを一律に「借金」と呼ぶのは、もはや実態を反映していません。
2012年当時、国債残高は約950兆円。そこから約150兆円増えました。
しかし同期間にGDPデフレーターは約20%上昇(内閣府「国民経済計算」)。
インフレは政府に「見えない税収」をもたらします。
それがインフレ税(Inflation Tax)です。
物価と名目賃金が上がれば、企業の売上・所得税・消費税も自然に増える。
2024年度の一般会計税収は約73兆円(過去最高)。
これは、法人税・所得税・消費税すべてが増加した結果であり、特に消費税収は前年比+2.5兆円。
2025年度は、一説には税収は80兆円に達す予測もあります。
数年前までは税収は60兆円規模でしたので、20兆円も増加したことになります。
インフレは「借金を軽くし」「税収を増やす」二重の効果を持つ。
それこそが国がもとめるインフレの効用です。
積極財政という言葉に、”公共事業の乱発”を連想する人も多いでしょう。
しかし、現代における積極財政は、資産構成を最適化するための国家投資です。
(約190兆円)
(約9兆円)
円安期にドルや金を買い、円高期に売ることで国債を償還する――
これが「資産を呼吸させる財政」。
為替変動を”国の呼吸”に変えることこそ、21世紀の積極財政です。
急激な利上げは、国債利払いを膨張させる。
しかし、金利を上げなければ通貨の信認が損なわれる。
そのため日銀は、長期金利1.0〜1.5%程度を上限とする緩やかな正常化を進めています。
つまり、金利を少しずつ上げながら、インフレを味方につける政策が最も安全なのです。
「減税の財源はどこから?」という議論がありますが、実際にはすでに財源は複数存在しています。
これらを活用すれば、中間層・労働者層への減税は十分可能。
財政出動を支えるのは「国債」ではなく、「構造的な上振れ収入」です。
「税と社会保障の構造が、人々のモチベーションを削いでいる」という点にあります。
厚労省の統計によると、社会保障給付費はGDP比23.1%(2024年度)。
これは税収(約73兆円)を上回る水準で、財政の硬直化を生んでいます。
現役世代は、所得税・住民税・社会保険料を合わせて実質40〜45%を負担し、一方でその多くが年金・医療・介護などの「過去への支出」に回っています。
つまり、“努力して働くほど可処分所得が減る構造”が固定化しているのです。
忘れてはならないのは、日本は社会主義国家ではないという事実です。
国家の目的は「平等な貧困」ではなく、自由な豊かさの創出にあります。
そのためには、働く人の努力が報われ、挑戦する人が応援され、失敗しても再起できる――そんな上向きの経済設計が必要です。
責任ある積極財政は、単に給付を増やすことではありません。
むしろ、挑戦する人にお金が循環する金融インフラを整えることにあります。
これらはすべて、「再分配」ではなく「前向きな循環」を生む財政手段です。
国家が個人や企業の“失敗を許容する金融システム”を持てば、挑戦の総量が増え、経済の厚みそのものが変わります。
これからの予算は「分けるもの」ではなく、「増やすもの」でなければなりません。
社会保障を守りつつも、次世代の生産性を高めるための投資へシフトする。
税と社会保障のバランスを整え、働く人の可処分所得を増やし、挑戦する人が報われる社会をつくる。
これが「責任ある積極財政」の真の意味です。
名目GDP成長率3%、インフレ率2.5%、金利1.0%――。
このバランスを維持できれば、実質債務は毎年2.5〜3%ずつ減価していきます。
50年あれば、国の借金は「帳簿上の数字」ではなく「循環の仕組み」として
積極財政の最終段階で重要なのが、外貨準備を活用した債務圧縮フローです。
日本政府はすでに約1兆2,000億ドル(190兆円)の外貨準備を保有しています(財務省 2025年8月時点)。
このフローを10年蓄積→5年放出のサイクルで繰り返せば、為替変動を国家の「呼吸装置」として活用できます。
これを15年サイクルで3回(45年)繰り返すと、1,100兆円の名目債務は700兆円台まで圧縮。
名目は「外貨100兆円売却→JGB100兆円償還」を15年で1回、合計3回(+換算差益75兆円の上乗せ)。
→ 1,100 → 約725兆円へ。
実質はインフレ(CPI 2.5〜3.0%)で価格水準が3.0〜3.8倍。
→ 実質200兆円前後へ。
“外貨で名目を削り、インフレで実質を溶かす”
これを45年、機械的に回せば「名目700兆円台/実質200兆円台」まで落とせます。
加えて、2060年ごろには、人口動静も変化しているため、社会保障費も大幅に減っているはず、今のような人口オーナス期は、脱しているはずです。
為替の波を恐れるのではなく、財政の循環装置として活かす――。
円安で資産を積み、円高で債務を減らす。
国家が外貨を”資産”としてではなく“呼吸”として使う時代です。
財政を「返す」ものと見る限り、国の未来は縮小します。
しかし、財政を「循環させる仕組み」として再設計すれば、国は息を吹き返します。
インフレで借金の価値を薄め、成長投資で所得を押し上げ、外貨を売って債務を返し、再び外貨を積み増す。
この循環こそが、「責任ある積極財政」の最終形。
経済と財政が対立するのではなく、共進化する構造なのです。
借金を恐れる時代は終わり、
資産で債務を溶かす時代が始まっている。



