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拡大するペット市場とその歴史

ペット市場はいまや2兆円。あなたの暮らしのそばにいる「小さな家族」が、社会全体を動かす存在になっている
ペットは私たちの生活に癒しや楽しみを与えてくれる存在です。日本では高度経済成長期以降、ペット産業は着実に拡大し、今や「2兆円市場」といわれるまでになりました。
犬や猫といった定番から、時代ごとに流行した珍しい動物、そしてSNSやYouTubeの影響で広がった新しいペット文化まで──その歴史は社会の変化やライフスタイルの進化と密接に結びついています。
今回は、ペット市場の拡大と幸福度調査、流行したペットの歴史、そして現在の多様化時代について整理してみましょう。
目次
日本のペット市場・関連市場規模 “市場規模は2兆円!”
市場は 年率数%の成長を継続中。
2022→2023年度で約4.5%の増加、2023→2024年度は予測で約2.6%の増加。
飼育頭数は、特に犬は減少傾向、猫は横ばいか微増傾向。にもかかわらず、1頭あたりにかける支出が上昇しており、単価の高いプレミアム商品や健康・安全を訴求する商品の需要が拡大しています。
ペットケア(フード+用品)の分野が市場の中でも主要な伸びを見せています。
サービス分野や生体+サービスも拡大はしているものの、飼育頭数の伸び悩みによる制約もみられます。
項目 | 内容 | 数値 |
---|---|---|
ペット関連総市場規模 | 生体販売・用品・サービスを含むペット関連全体 | 約1兆8,629億円(2023年度見込み) (市場調査とマーケティングの矢野経済研究所) |
2024年度予測 | 同上 | 約1兆9,108億円(2024年度見込み) (矢野経済研究所) |
ペットフード市場 | ペットフード単体 | 約6,920億円(2023年度) (M&Aキャピタルパートナーズ) |
ペット用品市場 | グッズ・衛生用品・トイレ関連など | 約3,269億円(2023年度) (M&Aキャピタルパートナーズ) |
生体+サービス分野 | 生体販売およびトリミング・ペットホテル・診療などサービス全般 | 約8,441億円(2023年度) (M&Aキャピタルパートナーズ) |
ペットを飼っている世帯の幸福度調査
ペットを飼っている世帯/人の「幸福度」に関する最近の調査結果を日本・海外含めて紹介します。
データの取り方や対象によって数値が異なるので、その点も併記します。
日本での調査結果
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ハルメク 生きかた上手研究所「ペットに関する調査2025」(対象:50~83歳の女性)
犬猫を飼っている人の幸福度は8.14ポイント(尺度は非公表)で、非飼育者より0.38ポイント高い。 - PR TIMES:ペットを「愛おしい」と思う割合は95.8%。
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犬猫飼育者のうち11年以上飼育している人が68.4%。
長い付き合いが幸福度や満足度に寄与している可能性が高い。
海外・比較研究
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英国・ケント大学 他(Social Indicators Research 掲載)
犬・猫を飼うことは、友人・家族と定期的に会うことと同程度の「生活満足度向上」効果がある。
さらにその幸福効果を金銭換算すると、年間約7万ポンド(約1,300万円相当)に相当。 -
犬 vs 猫 vs 非飼育者(米国の比較調査など)
犬を飼っている人の方が「非常に幸せ」と答える割合が猫飼育者より高い。
一方で、猫飼育者の幸福度が非飼育者よりも必ずしも高いとは限らないケースもある。 -
犬: 散歩など活動的な暮らし → 社会的つながりや身体活動にプラス作用。
猫: 静かな暮らしを好む人に合うが、幸福度の尺度では差が出る場合も。
もちろん個人差はありますが、ペットの種類やライフスタイルによって幸福感の出方に違いがあることが見えてきます。
今まで流行したペットの歴史

年 | 流行ペット | 背景・出来事 |
---|---|---|
1872(明治5) | ウサギ(第1次大ブーム) | 外来種カイウサギ輸入。「うさぎバブル」発生。高額取引、番付表、うさぎ税導入。 |
1950前後 | 日本スピッツ | 白くて吠えるイメージ、番犬として大人気。日本中で飼育ブーム。 |
1960 | ラフ・コリー | 映画・TVドラマ『名犬ラッシー』が世界的に大ヒット。 |
1960頃 | マルチーズ | 室内犬として普及。住宅事情の変化で小型犬需要増加。 |
1970 | チワワ(第1次ブーム) | 輸入が本格化。小型で可愛い犬種として注目、まだ珍しい存在。 |
1975 | ハムスター | 学校教材やペットショップで普及。繁殖も容易で一気に広がる。 |
1980 | アライグマ | アニメ『あらいぐまラスカル』で人気急増、輸入・飼育者も増加。 |
1981 | シベリアン・ハスキー | アニメ『銀牙』の影響で人気爆発、ブリーダー急増。 |
1984 | エリマキトカゲ | 日産マーチのCMで大ブーム。珍獣ペットとして流行。 |
1985 | チャウチャウ | ライオンのようなたてがみと青黒い舌。海外映画・雑誌で人気化。 |
1985 | ウーパールーパー | TVで紹介され熱帯魚店に行列。社会現象化。 |
現在はYouTubeの影響により、様々なペットが飼われる多様化時代

- SNS映え文化: ハリネズミ、フクロモモンガ、フクロウ、カワウソなど、ニッチだった動物が「かわいい動画」で世界的に拡散。
- YouTubeチャンネルの人気: 犬猫に限らず、フェレット・チンチラ・デグー・爬虫類など、登録者数数十万〜数百万規模のチャンネルも登場。
- 飼育情報の民主化: 専門書やショップに頼る時代から、YouTubeで「飼い方」「病気」「しつけ」を学べる時代へ。参入ハードルが低下。
- 小動物: ハリネズミ、デグー、チンチラ、ウサギ(再評価)
- 爬虫類: ヒョウモントカゲモドキ、リクガメ、カメレオン
- 鳥類: フクロウ、インコ、オウム
- 珍獣系: マイクロブタ、フェネック、カワウソ(規制前に流行)
- 従来の犬猫: 保護猫活動・柴犬の再評価・トイプードルやチワワの根強い人気
- 「一種類の大ブーム」から「多彩なニッチ人気の同時進行」へ
- YouTuberやインフルエンサーが火付け役(例:登録者100万超のハリネズミ動画)
- 消費スタイルも変化:ペットグッズ、保険、カフェ・ふれあい施設など周辺市場も拡大
日本のペット市場は、犬猫を中心に成長してきた一方、アニメやドラマ、CMをきっかけにした一大ブームや、その時代を象徴するペットたちが存在してきました。
現在はYouTubeやSNSの影響で多様なペットが同時に人気を集める「多様化時代」に入っています。
大切なのは流行や珍しさだけに流されず、どんな動物でも“家族”として迎え、共に幸せな時間を築いていくことです。
ペットは私たちの暮らしを豊かにし、同時に命を預かる責任があることを忘れないようにしたいですね。