UX思考 × 人材育成──ユーザー体験ではなく「人の成長体験」を設計せよ


属人的な育成から抜け出すには?
「教えるのがうまい人に任せる」「できる人の背中を見て覚えろ」──
そんな属人的で感覚的な育成手法が、いまだに多くの現場で続いています。
しかし、これからの時代に必要なのは、「人材育成=体験設計」という考え方。
つまり、ユーザー体験(UX)のように、“人がどう学び、どう成長するか”そのプロセス自体を設計する発想です。
目次
UXとは「人間の体験を設計する思考法」


UX(ユーザーエクスペリエンス)とは、製品やサービスを通じてユーザーが得る体験全体を設計する思考法です。
その代表的なモデルが「ギャレットの5段階モデル」。
UX設計は、以下の5つの階層から構成されています。
つまりUXとは、「何を」「どのように」届ければ、人は自然に気持ちよく行動し、納得し、満足するかを構造的に考えるフレームワークなのです。
人材育成にも「成長UX」の発想を


このUX思考を、“人の成長”に応用したのが「思考の5段階テンプレート」です。
このテンプレートにより、上司や教育者の「指導の深度」が可視化され、育成が共通言語化されます。
ギャレットモデル × 小松式テンプレートの統合
UXの5階層 | 思考の5段階 | 共通する視点 |
---|---|---|
Surface(表層) | 表層 | 現象の観察と第一印象 |
Skeleton(骨組み) | 原因 | 表面の裏にある仕組み・因果 |
Structure(構造) | 前提 | 関連性と土台の問い直し |
Scope(要件) | 構造 | 必要要素の整理と全体像の理解 |
Strategy(戦略) | 再設計 | 最終目的に向けた構築・再編 |
UXの“階層構造”と思考の“深度構造”は、重ね合わせることで「人の体験 × 考え方」を一気に捉え直す地図になります。
実践例|部下の“成長UX”を再設計せよ


実際の育成現場では、こんなケースが起きています。
■ ケース1|中堅社員が思考停止している
「もう教えることはない」「現場は回せている」と本人は言うものの、提案や改善は一切ない。
上司から見ると「まだ伸びしろはあるのに、動かない」。
→ これは「表層」で止まり、「過去の成功体験」が再利用されているだけの状態です。
→ 小松式テンプレートで言えば、“前提”や“構造”の問い直しが不足している段階。
再設計のアプローチ例(中堅社員・思考停止状態)
- 「今のやり方はどんな前提で成り立っているか?」と問い直す
- 部下に「自分の業務構造図」を描かせ、思考の可視化を促す
- 新しい課題や環境を投入して、構造的再設計を促す
■ ケース2|若手が行動しない・指示待ちになる
「わかりました」と返事はするが、次に活かす力がない。
こちらが手順を教えないと動けず、いつまでも独り立ちできない。
→ 一見「スキル不足」に見えるが、実際は「思考が浅層(What/Why)で止まっている」ため。
→ 特に“Assumption(前提)”や“Structure(構造)”の理解がなく、自ら判断できない。
再設計のアプローチ例(若手・指示待ち状態)
- 指示を与える前に、「自分がどう考えたか」を先に言語化させる
- 判断が失敗した場合は、「前提や因果構造」を一緒に振り返る
- 成功の再現より「構造理解」を目的とした教育に切り替える
このように、「どの階層で止まっているのか?」を見極めて設計し直すことが、成長UXの真髄です。
まとめ|育成とは「体験を設計すること」


教えるとは、知識を渡すことではなく「思考体験をデザインすること」。
UX思考を育成に応用すれば、
・感覚に頼らない育成
・成長の停滞を階層で見抜く視点
・自律型人材を生み出す“再設計力”
が手に入ります。
教育の本質は「行動の設計」ではなく、「思考の階層構造」を整えること。
あなたの組織にも、“成長UX”の視点を!
思考階層を引き上げる問いかけ例
・これは何が起きてるの?
・その現象はどのくらいの頻度で起きてる?
・なぜそうなったと思う?
・それはいつから起きていた?
・この考えには、どんな思い込みがある?
・他の視点ではどう見えるだろう?
・関係している要素を全部書き出してみよう
・それぞれの因果関係はどうなってる?
・影響範囲はどこまで?
・仕組みごと変えるなら、どこから手をつける?
・現状でわかっている問題を全て解決させる方法はある?
チェックリスト|部下の成長UXが止まっているサイン
- 「わかりました」しか言わない(→Why / Assumption が弱い)
- いつも同じやり方で成果を出そうとする(→Structure の更新がない)
- 失敗しても「すみません」で終わる(→Redesign の不在)
- 指示がないと動けない(→Assumption と Scope 設計不足)
- 質問されると答えに詰まる(→What 以外の思考が未熟)