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2025.06.04

UX思考 × 人材育成──ユーザー体験ではなく「人の成長体験」を設計せよ

属人的な育成から抜け出すには?

「教えるのがうまい人に任せる」「できる人の背中を見て覚えろ」──
そんな属人的で感覚的な育成手法が、いまだに多くの現場で続いています。

しかし、これからの時代に必要なのは、「人材育成=体験設計」という考え方。
つまり、ユーザー体験(UX)のように、人がどう学び、どう成長するかそのプロセス自体を設計する発想です。

UXとは「人間の体験を設計する思考法」

UX(ユーザーエクスペリエンス)とは、製品やサービスを通じてユーザーが得る体験全体を設計する思考法です。

その代表的なモデルが「ギャレットの5段階モデル」。
UX設計は、以下の5つの階層から構成されています。

🔵 Surface(表層): ユーザーが触れる見た目、印象
🟢 Skeleton(骨組み): 配置やナビゲーションなどのUI構造
🟠 Structure(構造): 情報や機能の関係性
🟣 Scope(要件): 必要な機能やコンテンツの定義
🔴 Strategy(戦略): ビジネス目標とユーザーのニーズの接点

つまりUXとは、何を」「どのように届ければ、人は自然に気持ちよく行動し、納得し、満足するかを構造的に考えるフレームワークなのです。

人材育成にも「成長UX」の発想を

このUX思考を、“人の成長”に応用したのが「思考の5段階テンプレートです。

🟦 表層(What): 現象を捉える
🟩 原因(Why): なぜそれが起きたかを掘る
🟨 前提(Assumption): その考えの前提・思い込みを問い直す
🟪 構造(Structure): 全体の因果構造を紐解く
🟥 再設計(Redesign): 構造を踏まえて“考え方自体”を組み替える

このテンプレートにより、上司や教育者の指導の深度が可視化され、育成が共通言語化されます。

ギャレットモデル × 小松式テンプレートの統合

UXの5階層 思考の5段階 共通する視点
Surface(表層) 表層 現象の観察と第一印象
Skeleton(骨組み) 原因 表面の裏にある仕組み・因果
Structure(構造) 前提 関連性と土台の問い直し
Scope(要件) 構造 必要要素の整理と全体像の理解
Strategy(戦略) 再設計 最終目的に向けた構築・再編

UXの“階層構造”と思考の“深度構造”は、重ね合わせることで人の体験 × 考え方を一気に捉え直す地図になります。

実践例|部下の“成長UX”を再設計せよ

実際の育成現場では、こんなケースが起きています。

■ ケース1|中堅社員が思考停止している

「もう教えることはない」「現場は回せている」と本人は言うものの、提案や改善は一切ない。

上司から見るとまだ伸びしろはあるのに、動かない」。

→ これは「表層」で止まり、「過去の成功体験」が再利用されているだけの状態です。

→ 小松式テンプレートで言えば、“前提”や“構造”の問い直しが不足している段階。

再設計のアプローチ例(中堅社員・思考停止状態)

  • 「今のやり方はどんな前提で成り立っているか?」と問い直す
  • 部下に「自分の業務構造図」を描かせ、思考の可視化を促す
  • 新しい課題や環境を投入して、構造的再設計を促す

■ ケース2|若手が行動しない・指示待ちになる

「わかりました」と返事はするが、次に活かす力がない。

こちらが手順を教えないと動けず、いつまでも独り立ちできない。

→ 一見「スキル不足」に見えるが、実際は思考が浅層What/Whyで止まっているため。

→ 特に“Assumption(前提)”“Structure(構造)”の理解がなく、自ら判断できない

再設計のアプローチ例(若手・指示待ち状態)

  • 指示を与える前に、「自分がどう考えたか」を先に言語化させる
  • 判断が失敗した場合は、「前提や因果構造」を一緒に振り返る
  • 成功の再現より「構造理解」を目的とした教育に切り替える

このように、「どの階層で止まっているのか?」を見極めて設計し直すことが、成長UXの真髄です。

まとめ|育成とは「体験を設計すること」

教えるとは、知識を渡すことではなく思考体験をデザインすること」。

UX思考を育成に応用すれば、

感覚に頼らない育成

成長の停滞を階層で見抜く視点

自律型人材を生み出す“再設計力

が手に入ります。

教育の本質は「行動の設計」ではなく、「思考の階層構造」を整えること。

あなたの組織にも、成長UXの視点を!

思考階層を引き上げる問いかけ例

表層(What)に止まっている時
・これは何が起きてるの?
・その現象はどのくらいの頻度で起きてる?
原因(Why)を掘るとき
・なぜそうなったと思う?
・それはいつから起きていた?
前提(Assumption)を疑うとき
・この考えには、どんな思い込みがある?
・他の視点ではどう見えるだろう?
構造(Structure)を捉えるとき
・関係している要素を全部書き出してみよう
・それぞれの因果関係はどうなってる?
・影響範囲はどこまで?
再設計(Redesign)を促すとき
・仕組みごと変えるなら、どこから手をつける?
・現状でわかっている問題を全て解決させる方法はある?

チェックリスト|部下の成長UXが止まっているサイン

  • 「わかりました」しか言わない(→Why / Assumption が弱い)
  • いつも同じやり方で成果を出そうとする(→Structure の更新がない)
  • 失敗しても「すみません」で終わる(→Redesign の不在)
  • 指示がないと動けない(→Assumption と Scope 設計不足)
  • 質問されると答えに詰まる(→What 以外の思考が未熟)