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AIのハレーションを楽しめ|「信用するな」と言うDX専門家の致命的な自己矛盾

ハレーションこそが思考を加速させる
「AIを信用するな」というDX専門家の自己矛盾。
先日、某企業大学校のセミナーに参加した際、私はある「喜劇」を目撃しました。
登壇したのは、DX推進委員や大手企業の顧問を歴任してきたデジタルの権威。
「大切なのはツールの使い方ではない。To be(あるべき姿)とAs is(現状)を明確に定義することだ」
実に見事な正論です。しかし——
その直後、受講生の「AIをSWOT分析に使ってもいいか」という問いに対し、彼は表情を曇らせてこう答えました。
「AIは嘘をつく。過度に信用しないでください」
私はこの瞬間、目の前の講師が、自身が説くロジックの「最大の矛盾」に陥っていることに、背筋が凍る思いがしました。
01. AIは「世の中のAs is」を突きつける鏡
AIが出す答えは、インターネット上の膨大なデータの「公約数」です。
つまり、世の中における
「平均的な現状(As is)」そのもの。
専門家は「信用するな(間違いがある)」とブレーキをかけますが、それはAIを「正解を出す電卓」だと勘違いしているからです。
私たちがAIに求めるべきは正解ではありません。
AIが提示する「平均的な現状」を叩き台にして、自分自身の「あるべき姿(To be)」を炙り出すことにこそ価値があります。
02. 「コリジョン(衝突)」が思考の火花を散らす
私は、AIが起こすハレーション(意図しない歪みや間違い)を、システム用語の「コリジョン(衝突)」として捉えています。
AIがトンチンカンな分析を出してきたとき、心の中に
「いや、そこは違う!」
「うちはそんな安売りはしない!」
という強い反発が生まれます。
🤖 AIの回答
客観的で凡庸な「As is(現状)」
⚡ コリジョン発生!
💡 あなたの反発
主観的で熱い「To be(理想)」
このコリジョンが発生した瞬間に、
人は初めて「自分が本当はどうしたいのか」を
明確に言語化できるのです。
AIが100%正しいことしか言わない透明な存在であれば、私たちの思考は流されるだけで、自分自身の輪郭に気づくことすらできません。
03. ハレーションを楽しむ、という最強の思考法
結局のところ、この「ハレーション(歪み)」こそが、
最高の刺激になるのです。
❌ 「何言ってるんだ」と怒って終わる
✅ 「面白い視点だ、そこから何が見える?」と楽しむ
AIとの対話も同じです。自分の意図からズレた答えが返ってくるからこそ、「なぜズレたのか?」「自分の伝え方のどこに穴があったのか?」というリフレクション(自己対話)が始まります。
「AIが間違えるから信用しない」という論理は、組織論でいえば「新入社員はミスをするから、仕事を任せてはいけない」と言うのと同じです。
そんなリーダーの下で、新しいDXなど生まれるはずがありません。
AIは、膨大な知識を持つ一方で、時として的外れなことを言う「優秀だが少し抜けている新入社員」です。
間違い(ハレーション)というノイズを、
自分の思考を研ぎ澄ますための「砥石」として楽しむ。
この余裕こそが、80点の壁を突き抜け、150点の独自解へと跳ぶためのエネルギーになります。
04. 最大の「ハレーション」は誰が起こしていたか
DXの権威が「AIを信用するな」と警告し、受講生の思考を止めてしまう。
これこそが、実は最も深刻な「ハレーション」ではないでしょうか。
ハレーションとは、強い光が周囲に漏れ出し、被写体の輪郭を白くぼかしてしまう現象です。
講師は「DXの正論」という強い光を放ちながら、その実、AIという新しい武器を使いこなそうとする受講生の意欲を眩ませ、本質的な「自己対話」のチャンスを見えなくさせていたのです。
「To be-As is」を説く専門家本人が、思考の現場にハレーションを引き起こし、
進化の邪魔をしている。
これほど皮肉なDXセミナーがあるでしょうか。
結び:ハレーションを乗りこなせ
DX推進委員や元外部顧問。立派な肩書きを持つ人々が起こすハレーションに、惑わされる必要はありません。
むしろ、その講師の「ズレたアドバイス」すらも、自分の思考を深めるための「刺激(コリジョン)」として楽しんでしまえばいいのです。
AIに正解を求めるのは、もうやめましょう。
AIを思い切り叩き、
跳ね返ってくるハレーションを面白がり、
自分だけの答えを削り出す。
「AIに正解を求めるのをやめたとき、
AIはあなたの可能性を最大化する鏡になる」
ハレーションの光源は、至る所にあります。
それを「ノイズ」として排除するのではなく、
自らを光らせる「刺激」に変えていきましょう。



