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令和に江戸を歩く。中山道の宿場まち

江戸時代、人々が往来した「五街道」のひとつ――それが 中山道 です。
令和の今でも、その道筋には江戸の息吹を残す宿場町が点々と続き、現代人を“時間旅行”へと誘います。 今回は、京から江戸を結んだ中山道の魅力を、宿場と共に辿ってみましょう。
中山道とは、どこからどこをつなぐ街道か?

中山道は江戸・日本橋から京都・三条大橋を結ぶ街道で、その総延長は約534km。
東海道が海沿いを通るのに対し、中山道は内陸部を進み、69の宿場町が置かれました。峠越えも多く、人や物資だけでなく、文化や情報も運ばれた大動脈だったのです。
中山道は江戸から京都まで内陸を貫く街道で、軍事・政治的な重要度が高いルートでした。そのため、江戸幕府はこの沿線に親藩(徳川一門)や譜代大名を数多く配置しています。
関ヶ原は東西交通の要衝。井伊家や本多家など譜代大名の所領が多く、東海道・中山道両方を抑える要地でした。
中山道の高宮宿周辺を押さえた井伊家は譜代の筆頭格。江戸時代を通じて要地を任されていました。
中山道に「内陸の軍事幹線」として接続する 甲州街道(江戸~甲府~諏訪~下諏訪で中山道に合流) も親藩や譜代大名で固められています。
- 徳川家光の弟・徳川忠長
- 徳川綱重(徳川綱吉の兄)
- 柳沢吉保(徳川綱吉の側用人 → 甲府藩主に出世)
歴史に息づく宿場たち

中山道の魅力は、往時の風情を残す宿場町にあります。たとえば――
- 草津宿本陣(滋賀):参勤交代の大名も泊まった格式ある宿。
- 高宮宿(彦根):麻織物の産地として栄えた町。
- 醒井宿:居醒の清水と呼ばれる湧水が今も人々を潤します。
- 柏原宿・垂井宿・赤坂宿本陣跡:戦国や関ヶ原合戦の舞台に近い宿場群。
- 鵜沼宿・太田宿(岐阜):木曽川沿いに発展した要衝。
- 伏見宿・御嶽宿・大湫宿:石畳や宿場建築が残り、江戸を体感できる景観。
- 大井宿・中津川宿・馬籠宿・妻籠宿:木曽路のハイライト。江戸情緒を色濃く残すエリア。
- 須原宿・奈良井宿・贄川宿:木曽漆器で栄えた地域。奈良井宿は“日本最長の宿場”。
- 本山宿・下諏訪宿・和田宿:諏訪大社や和田峠を控え、旅人の祈りと休息の場。
まるでタイムスリップしたような空間が今なお点在しているのです。
インバウンド旅行客にも人気の高い宿場・区間
馬籠宿(岐阜県中津川市)
TripAdvisorで外国人に人気の観光スポットランキング上位。島崎藤村のゆかりの地として文学的背景も魅力。
妻籠宿(長野県南木曽町)
馬籠宿とともに「馬籠‐妻籠間」のハイキングが人気。約8〜9kmの街道ウォークは“サムライトレイル”/“サムライロード”として欧米観光客に支持されています。
なぜ、中山道は歴史的な建物が残っているのか?
東海道と比べると、中山道は近代化による道路拡張や鉄道敷設の影響を受けにくかったため、宿場の町並みが残りやすかったといわれます。
- 明治期の鉄道敷設計画で出遅れたこと → 鉄道は輸送効率を重視して海岸沿いや平野部に集中。中山道の山間部は敬遠され、多くの宿場町は鉄道網から外れてしまいました。
- 戦後も新路線が敷設されなかったこと → 自動車交通が発展しても、中山道沿線は幹線道路整備の優先度が低く、大規模な再開発が進みにくかったのです。
その結果、宿場町の町並みは近代都市化の影響を受けにくく、江戸時代の建物や石畳が比較的良好な状態で残りました。
この「近代化の遅れ」が逆に文化的な資産保存につながったからなのです。
とくに木曽路エリアでは、江戸時代そのままの街並みが保存・修復され、文化財として守られてきました。
結果、現代の私たちが江戸旅人と同じ景色を味わえるのです。
令和の旅人におすすめの楽しみ方

現代の私たちが中山道を訪れるなら、ツーリングやサイクリングが断然おすすめです。
- ロードバイク・クロスバイクで宿場から宿場をつなぐ旅
- バイクツーリングで峠越えのダイナミックな風景を駆け抜ける
- レンタルサイクルで気軽に町並みを散策するのも◎
- 徒歩なら江戸の旅人気分を、二輪なら令和の風を切って走れる
――そんなハイブリッドな体験が、中山道の醍醐味です。
まとめ
中山道は「江戸から令和へ」と続く時空を超えた街道。宿場町の石畳に響く足音に耳を澄ませば、きっと当時の旅人の息遣いが聞こえてくるはずです。
令和の旅人よ、自転車やバイクに乗って江戸を歩いてみませんか?