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2023.12.17

第十七話:『露わになる真実 – 混乱の渦中 – 』

『夜明けを待ちながら – 星降る街の物語 – 』

 大地と美咲は社内の裏切りに対抗するための戦略を練り、証拠をもとに健太郎と対決する道を選択した。

「健太郎、ちょっといいかな?」「いつでもいいよ、大地。」健太郎ははじめて励ましてくれたあの時のように笑顔で答えた。

 大地は平静を装おうとして、苦虫をつぶしたような笑顔で声をかけていた。「先日の、事業計画書のことだけど、なぜあのような事業計画を立てることができた?」大地は情報が抜き取られていることが前提で質問をした。

 「大地、内部環境を分析すれば、自社の強みを生かすのはこのビジネスモデルがベストさ、この計画に反対なのかい?」

 「そんなことない、あの事業計画書は僕が作り上げたものだ。」大地は、自分が作った事業計画書を机にたたきつけて、健太郎をにらんだ。

「知ってるよ。」

「じゃあどうして、あんなことをしたんだ!」

「外部環境分析や内部環境分析はそもそも、僕が君に手ほどきしたものだぜ。同じ結論に至るのか考えもしなかったのか?」

 大地は押し黙る。確かに健太郎の実力があれば、同じ仮説にたどり着いたかもしれない。

「そもそも、この事業計画書を作るのに、本当に一人で作ることができたとでも?」

「どういう意味だ。」

「美咲から、事業計画のアイディアをもらっただろう?」

 大地は事業計画書で行き詰ったときに、美咲のアドバイスから何度かブレイクスルーをすることができた。

「あのアドバイスは、僕の助言によるものだ、事業計画の作成の進展は逐一僕の耳に届いていたのさ。」

「大地、君は知らないところで、他の誰かに支えられている。君の長所は、集中力が高いところ、君の短所は集中力が高いあまりに視野が狭くなるところさ。」

「ここからが重要なところだが、新商品、新サービスをというものは市場に出した以上、陳腐化していく。サービスが市場に浸透することとベンチマークされることは相関関係にあるよ。僕が求めていたことは、事業計画の更なるブラッシュアップを君にしてほしかった。」

「新事業の計画書だけじゃない、社外にも情報を漏洩させているだろう!」

「そんなはずはない。なぜそう思うんだ?」

 大地は、プロジェクトのつまずき、社内の風当たりの強さ、メールの履歴などをあげ、健太郎に詰めよった。

「なるほど、それができる人間はこの社内にもうひとりいるんじゃないか?」

「誰のことをいっているんだ?」大地が、興奮して詰め寄る。

「美咲さ。事業計画書を発表することが事前に美咲も知っていたんだ。そもそも、現在の社内の混乱は全て美咲から発信されている。彼女は自分のキャリアやプライドのためにゲームを始めていたのさ。確かな証拠を掴むために、美咲に接近もした。」

「僕の目的は、社内の混乱を沈め、方向性を一本化することさ、会社が成長するときはどうしても反対勢力が生まれる。会社が強固になるためには、ビジョンを共にする、価値観を共にする人財で固めるしかない。」

ゲーム理論

ゲーム理論は、意思決定の数学的モデルで、複数の参加者が互いに相互作用する状況における戦略的な決定を分析します。
この理論は、経済学、政治学、心理学、生物学、軍事戦略など多岐にわたる分野で応用されています。

ゲーム理論の基本的な要素は以下の通り

プレイヤー
ゲームに参加する個人または団体。

戦略
プレイヤーが取りうる行動の計画または方法。

利得
決定の結果として得られる報酬または損失。

均衡
どのプレイヤーも一方的に戦略を変えることによって利得を増やせない状態。

ゲーム理論は以下のようなゲームを分析する

協力ゲーム
プレイヤー間で協力が可能で、共同で利得を最大化する戦略を取ります。

非協力ゲーム
プレイヤーが独立して行動し、他者と協力せずに自己の利得を最大化しようとします。

ゼロサムゲーム
一方のプレイヤーの利得が他方の損失となり、全体の利得の合計が変わらないゲーム。

非ゼロサムゲーム
協力によって全体の利得を増やすことができるゲーム。

ゲーム理論は、参加者の戦略的な相互作用を理解し、最適な決定を導くのに役立ちます。
この理論は、予測不可能な人間の行動をモデル化し、理解しようとする試みです。

 大地は混乱した、一番身近な人間が、信頼を寄せていた彼女が自分を裏切っていたとは…。その後1時間ほど、健太郎から状況の説明を受け、事態を把握した。

 上層部にも報告した。この行動は、彼にとって困難な決断であり、その結果は予測不可能なものだった。

 報告後、社内は混乱に陥った。美咲の裏切りの証拠が明るみに出ると、誘導されていた同僚たちは自身の行動を正当化しようと必死になった。

 一方で、多くの同僚はこの事態に驚き、社内の雰囲気は一変した。

 この混乱の中で、美咲は自分の立場を守るために奮闘した。彼女は、裏切りが自分ではないと説明をしたが、健太郎からひとつひとつ反論を受けると最終的には完黙した。

 彼女の不誠実な対応は、一部の同僚から謝罪を引き出し、健太郎を支持した。大地はこの経験から、リーダーシップと危機管理の重要性を学んだ。

 彼は、難局を乗り越えるためには、時には厳しい決断を下す必要があることを理解した。健太郎もまた、この経験を通じて、自己の判断力と影響力を評価し直す機会を得た。

 この事件の結果、社内の雰囲気は徐々に落ち着きを取り戻し始めた。大地と健太郎はこの危機を乗り越え、自分たちの計画を継続するための新たな道を見出した。彼らは裏切りの問題を解決し、より強い絆で結ばれた。

 大地と健太郎は社内の混乱を乗り越え、再び自分たちの目標に集中することができた。彼らはこの経験を通じて、ビジネスにおける誠実さと信頼の価値を再認識し、これからの挑戦に向けて新たな一歩を踏み出す準備をした。

 彼らの関係は、この試練を通じてさらに強まり、共に成功へと進む強いパートナーシップを築いた。

 「失うものがあるときは、また得るものがあるどうとらえるかは本人次第さ。」大和田さんはかつて大地を送り出す時にそう言ってくれた。今もまた大和田さんの言葉を一つ思い出すのであった。

メンター

メンターは、個人のキャリアや個人的な発展をサポートするために経験や知識を共有する役割を担う人物です。
メンタリングは、メンター(指導者)とメンティー(受け手)間の関係に基づいており、通常、メンターがメンティーに対して指導、助言、支援を提供します。

メンターの主な役割は以下の通り

ガイダンスと助言
メンターは自分の経験や知見を基に、メンティーに対してキャリアの方向性、職務上の課題、職場での振る舞いなどについて助言します。

サポートと激励
メンターは、メンティーが直面する困難や挑戦に対してサポートを提供し、彼らを激励します。

スキルと知識の伝達
メンターは、自身の専門知識やスキルをメンティーに伝え、彼らの学習と成長を支援します。

ネットワーキングの促進
メンターは自分のネットワークを通じて、メンティーに新しい機会やコネクションを提供することがあります。

フィードバックの提供
メンターは、メンティーの行動やパフォーマンスに対する建設的なフィードバックを提供し、彼らの自己認識を高めます。

メンタリングは、特に職場環境や教育の文脈で一般的ですが、個人的な成長やライフコーチングの分野でも見られます。
メンタリング関係は、相互の信頼と尊重に基づいており、メンティーの自立と発展を目的としています。

健太郎との直接対決で思わぬ結果が露わに・・・。
次回、第十八話『 去りゆく者たち – 決意の立場、信頼の再生 – 』
この先いったいどうなる?!

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