第十一話:『失われた光 – 挫折の影 – 』
『夜明けを待ちながら – 星降る街の物語 – 』
参入障壁を築くための自社の経営資源VRIO分析とは!?
新店舗の立ち上げに成功した大地と美咲だったが、彼らの前に新たな試練が立ちはだかった。損益分岐点を越え、お店が拡大傾向に見えた矢先の初期の成功の後、彼らは売上の低迷、頭打ちに直面し始めた。
この問題の原因は、競合店や模倣店が市場に複数出現し、キャスト女性の一部が離反し、他のグループ店へ移籍を始めたことだ。
他のグループの模倣を避けるために、お店のコンセプトを独特のもにし、独自のポジションを築こうとした。
デメリットとして、顧客に伝わりにくく、コンセプトに若干の修正を加え、シンプル化したことで、集客は上手くいき始めた。逆にそれは、他のグループ店の模倣も簡易にしてしまったのだ。
新店舗の独特なコンセプトとサービスが当初は顧客を惹きつけたが、やがて同様のコンセプトを採用した競合店が現れ、市場が飽和状態に陥った。
さらに、模倣店も出現し、オリジナリティのあるサービスが薄れていく中で、顧客の関心を自店だけに維持することが難しくなっていった。
大地と美咲は、競合店の出現により、彼らの店舗が直面している課題の深刻さを認識した。彼らは市場分析を行い、競合他社の戦略と自店舗のポジショニングを比較検討した。
しかし、独自のアイデンティティを維持しつつ、競合店との差別化を図ることは容易ではなかった。この事態に直面し、大地は自分たちのビジネスモデルの再検討が必要だと感じた。
一方、美咲は創造的な解決策を模索し、新しいマーケティング戦略を提案した。彼らは新しいアプローチを試みるものの、すぐには成果を得ることができなかった。
売り上げの低迷により、大地と美咲の間には重圧が増し、ストレスが蓄積していった。彼らは共に解決策を模索したが、競合店による影響は大きく、彼らの努力だけではすぐには状況を改善することができなかった。
この経験は大地と美咲にとって、一つの挫折を意味していた。彼らは売り上げ低迷の原因を理解し、顧客にわかりやすく伝え、かつ参入障壁を高める方法を見つけようと奮闘したが、一朝一夕には、解決策は見つからなかった。
この困難な状況は、彼らの関係にも影を落とし、以前のような軽やかさを失い重い雰囲気の中、業務が進んでいく。有効な手段が考案できず、時間だけが過ぎていく。
そんなときに健太郎が大地に声をかける。「大地、先行者利益と後発者有利の違いは認識しているか?」
彼はこう続ける。「市場に新しいサービスを投入することは、独自のポジションを築きやすく、有利に進めることができることも多い。価格一つとっても先行者に価格決定権に対する影響を強く持てる。一方で後発者は、先行者が市場に受け入れるタイミングで、ベンチマークすることが容易になる。商標以外で独占できる方法がない以上、この業界では模倣者が多い。」
〝新しい商品・サービスは市場に出した以上、出したその日から陳腐化する〟
「市場に受け入れられるかどうか、競合はどうような行動に出るかどうか?これは自社の強みでポジションを築くことができれば、他社にマネできないサービスが作れ、差別化、同時性、参入障壁が作れるはずだ。」
「自社の強み?」
「自社の強みの分析のフレームワークはVRIO分析をするといいよ。いいか大地、新店舗を作り上げることの能力は、ポジショニングとケイパビリティだ。ただし、店舗を運営していく継戦能力は、それだけじゃだめだ。自社の持つ経営資源を理解し、それを活用・強化する仕組みを作ることだ。」
こうして、大地は健太郎の手ほどきにより、自社の経営資源で大切なひとつの答えにたどり着いた。
〝お客様と価値を共創すること〟
グループのファン顧客は多い。会員登録数で15万人以上、年間100万円以上来店回数で50回以上の顧客も1000名ほど存在する。
そんな優良顧客様の期待のハードルは高い。その信頼関係の蓄積は、かつてのグループの理念に沿った営業活動によるものだ。経路依存性、社会的複雑性、企業独自の活動の歴史これらは、模倣困難性を強化するものだ。
グルーアップグループは、何かをやってくれる。そんな期待のハードルを乗り越えてこそ、多くのファンの支持を獲得できる。
そして大地は、顧客体験の中に顧客を巻き込む方策を考え始めていた。大地と美咲は自分たちの店舗が直面している難局に真剣に向き合い、共に乗り越える方法を見つけ出そうと決意を新たにした。
彼らはこれからも困難に立ち向かい、一緒に成長し続けることを誓ったのだった。
どの業界でも先行者、後発者の関係は必ず存在するが、今回も健太郎の助けを借りることになった大地。
次回、第十二話『 月夜の誘惑 – ひそかな情熱 – 』
大地と美咲の関係に新たな進展が?!
VRIO分析
企業が持つ資源や能力を評価するフレームワークです。
それは以下の4つの要素から構成されます。
価値(Value)
希少性(Rarity)
模倣不能性(Imitability)
組織(Organization)
ある資源は競争優位を提供し、希少性は市場での独自性を保証します。
模倣不能性は競争によるコピーを防ぎ、組織はこれらの資源を効果的に活用する能力を意味します。
VRIO分析、企業は自らの強みと機会を考え、持続可能な競争優位を築くための戦略を立てることができます。
ケイパビリティ(Capability)
組織や個人が特定の活動を効果的に実行する能力のことです。
これには、技術、知識、プロセス、戦略、文化など、様々な要素が組み合わさっています。
企業が競争優先を持続するためには、これらのケイパビリティを発展させ、適応させることが重要です。
それにより、市場の変化に対応し、独自の価値を提供することが可能になります。
継戦能力
困難や逆境に負けても、目標達成のために行動を継続する組織や個人の能力のことです。
持続的な努力と回復力が鍵となります。
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