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KPI達成なのに現場が疲弊する理由|星の王子さまが示す関係性の価値【寓話シリーズ03】

寓話から経営を学ぶシリーズ
第3話:星の王子さまより
大切なものは目に見えない
私たちは仕事の中で、数値・データ・KPI・評価指標など、「見えるもの」を扱う時間が年々増えています。
それ自体は、間違いではありません。
けれど、ふと立ち止まって考えてみると、
見えるものを増やすほど、逆に見えなくなっているものはないでしょうか。
今回取り上げる『星の王子さま』は、子ども向けの物語として知られていますが、
実は「大人になった私たち」への静かな問いかけに満ちた一冊です。
01:星の王子さまの内容
作者:アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
『星の王子さま』は、飛行機事故で砂漠に不時着した操縦士(語り手)──子どもの頃、絵を描くことを大人に否定され、「大人の世界」に適応して生きてきた人物──と、小さな星から来た星の王子さまとの出会いから始まります。
王子さまは、自分の星を離れ、いくつもの星を旅する中で、さまざまな「大人」たちに出会います。
そして地球で、キツネとの対話を通じて、ある大切な真理にたどり着きます。
この物語は、冒険譚ではありません。
「大人になる過程で、私たちが何を失ってきたのか」
を描いた物語です。
02:この話に出てくる登場人物たち
王子さまが旅の途中で出会う大人たちは、どれも極端ですが、どこか身に覚えがあります。
👑 王様
支配することに執着するが、実際には何も動かせない
🎭 うぬぼれ屋
承認されることだけを求める
🍷 酒飲み
恥を忘れるために酒を飲み続ける
💼 実業家
星を「所有物」として数えることに没頭する
💡 点灯夫
目的を忘れ、ルールだけを守り続ける
📚 地理学者
現場を見ず、記録と報告だけを信じる
彼らは皆、一つの正しさに囚われすぎた大人です。
間違ったことをしているわけではありません。
けれど、どこか空虚です。
03:「大切なものは、目に見えない」という言葉
物語の中で、キツネは王子さまにこう語ります。
「大切なものは、目に見えない」
そして、もう一つ重要な言葉があります。
「きみがそのバラのために費やした時間が、
そのバラを特別なものにしたんだ」
ここで語られているのは、性能や比較ではなく、関係性の中で生まれる価値です。
💚 手をかけたこと
⏰ 向き合った時間
🤝 共有した体験
それらは、数値では測れません。
04:可視化・定量化すると、逆に見えなくなるもの
仕事では、「見える化」「定量化」「数値管理」が求められます。
もちろん、それは必要なことです。しかし同時に、こんな現象も起きます。
❌ 数値は達成しているのに、納得感がない
❌ 効率は上がったのに、やりがいが減った
❌ 正しいことをしているはずなのに、空気が重い
これは、測れるものに意識が集中しすぎて、
測れないものを置き去りにしているサインかもしれません。
『星の王子さま』は、「数値化するな」と言っているわけではありません。
数値で測れるものだけが、価値のすべてだと思った瞬間、
本当に大切なものが見えなくなる
そう、静かに伝えているのです。
まとめ:『星の王子さま』が本当に突きつけているもの
それは、感性や優しさではない。
経営における「関係性の断絶」である。
1. 組織は「成果」ではなく「関係性」で動いている
売上、利益、KPI、達成率。経営において数値は不可欠だ。しかし、冷静に考えれば明らかである。
人は数値のために動いているのではない
指標の先にある「意味」や「関係性」によって動いている
星の王子さまの物語で語られる、「時間をかけたから特別になった」という言葉は、
価値は関係性の中でしか発生しないという事実を示している。
2. 数値化が進むほど、関係性は切断されやすい
数値は強力な経営ツールである。同時に、極めて危険な側面を持つ。
❌ 数値は「結果」しか表さない
❌ 関係性・信頼・文脈は切り捨てられる
❌ 人は「数値の部品」に変換される
その結果、
• KPIは達成しているのに、現場が疲弊する
• 評価は正しいのに、誰も納得していない
• 離職や無関心が静かに進行する
これは偶然ではない。関係性が管理不能領域に追いやられた結果である。
3. 関係性を失った組織は「合理的に劣化する」
星の王子さまに登場する大人たちは、誰一人として非合理ではない。
✓ 実業家は数字を管理している
✓ 地理学者は記録を重視している
✓ 点灯夫はルールを守り続けている
それでも彼らは、どこか空虚で、前に進まない。なぜか。
関係性が切断された瞬間、
組織は”正しく劣化”するからである。
顧客は「数」になった瞬間、離れ始める
売上、客数、LTV、リピート率、CVR。
経営において顧客は、いつしか管理可能な指標の集合として扱われる。
しかし顧客の側から見れば、
💭 自分は理解されているか
💭 大切に扱われているか
💭 この会社と付き合う意味があるか
という問いに、常に感情レベルで答えを出している。
星の王子さまが語る、「時間をかけたから特別になった」という言葉は、そのまま顧客関係に当てはまる。
顧客は、時間と関心をかけてくれた企業を「特別な存在」として選ぶ。
「大切なものは、目に見えない」
関係性は目に見えない。数値化・定量化もできなくはないが、できなければ重要度がおちてしまうことが問題だ。
関係性の最小単位は、個人の感情だ。
顧客の安心、納得、期待、信頼。それら一つひとつの感情の積み重ねによって、企業は選ばれ続けている。
言い換えれば、すべての企業活動は、人の感情をより良い方向へ動かすために存在している。
だから経営者は、売上やKPIと同じように、
✓ 目に見えるもの
✓ 目に見えないもの
その両方の重要度を、常に測り続けなければならない。
見えるものだけを測り、見えないものを「測れないから後回し」にした瞬間、
顧客との関係性は静かに劣化し始める。
星の王子さまが残した問いは、
今も変わらない。



