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異論が通らない構造が組織を滅ぼす|トロイの木馬が示す意思決定の本質【寓話シリーズ02】

寓話から経営を学ぶシリーズ
第2話:トロイの木馬より
なぜ組織は、正しい判断の積み重ねで滅びるのか
長い時間をかけて築き上げたものほど、崩れるときは一瞬です。
しかも多くの場合、それは敵の力によってではなく、「これで終わったはずだ」という自分たちの判断によって起こります。
今回取り上げる「トロイの木馬」は、単なる策略の物語ではありません。
それは、長期戦・疲弊・慢心・常識が重なった末に起きた、
象徴的な”判断ミスの記録”です。
この物語が、2000年以上経った今も語られ続ける理由を、経営の視点から読み解いていきます。
01:古代ギリシャ人ホメロスが描いたトロイア戦争
トロイア戦争を描いた叙事詩として知られるのが、古代ギリシャの詩人ホメロスによる『イリアス』です。
この作品では、英雄たちの戦い、名誉、怒り、誇りといった人間の感情が克明に描かれています。
重要なのは、この時点では「トロイの木馬」は物語の中心ではないという点です。
トロイア戦争は、すでに「長期化し、出口の見えない戦争」として描かれていました。
02:その後、ローマの詩人ウェルギリウスは建国神話として描き直した
トロイの木馬が、現在知られる形で強烈な意味を持つようになったのは、ローマの詩人ウェルギリウスによる『アエネーイス』です。
この作品では、トロイの陥落は単なる敗北ではなく、ローマ建国へとつながる歴史的転換点として描かれました。
ここで初めて、トロイの木馬は象徴的な出来事として定着します
🎁 敵が残した「贈り物」
✅ 勝利を確信した側の判断
💥 内部に招き入れた破滅
03:長い戦争の末に起きた「判断ミス」の象徴
トロイの木馬が恐ろしいのは、
それが天才的な策略だったからではありません。
⏳ 戦争は長期化していた
😓 市民も兵も疲弊していた
🚢 敵は撤退したように見えた
💭 警戒を解きたい心理があった
その結果として、
「もう大丈夫だろう」という判断が下された
この出来事は、
判断力が最も落ちるのは、危機の最中ではなく、
終わりが見えた瞬間である
ということを示しています。
これは現代の組織や経営にも、驚くほど当てはまります。
04:近代トロイを探し出した考古学者シュリーマンは、変人扱いだった?
19世紀、「トロイは神話にすぎない」というのが学界の常識でした。
その常識に疑問を持ち、本気でトロイを探しに行った人物が、
ドイツの実業家で考古学者のハインリヒ・シュリーマンです。
彼は、
❌ 正規の学者ではなかった
💰 私財を投じて勝手に発掘を始めた
📖 ホメロスの叙事詩を「手がかり」として信じた
ところがシュリーマンは、イリアスを歴史的手がかりとして文字通りに信じ
「書いてあるなら、どこかにあるはずだ」
と本気で考えた。
これは当時の学者から見ると、「聖書を地図代わりにして都市を探す」レベルの暴挙だったわけです。
そのため当初は、夢想家・変人・危険人物として扱われました。
⚠️ 正規ルートを完全に無視していた
シュリーマンは、大学の正規な考古学教育を受けていない、商人として成功し、私財で勝手に発掘、学会の許可や合意形成を軽視。学界ヒエラルキーの外側から土足で入ってきた存在。
これが反感を買わないわけがない。
正直に言うと、学界が怒る理由も一部は正当です。
• 地層を無視して掘り進めた
• 後世の重要な遺構を破壊した可能性
• 有名な「プリアモスの財宝」も→ 帰属・発見経緯に疑義あり
天才であると同時に、危うい人物だった。
05:常識にとらわれない仮説で、新たなる道を切り開いた
シュリーマンの発掘により、現在のトルコにあるヒッサルリクで、複数層に重なった都市遺構が発見されます。
それは、
トロイが一度きりの都市ではなく
何度も破壊と再建を繰り返した都市群だった
という事実を示していました。
ここで重要なのは、常識を疑ったこと自体ではありません。
常識を疑うだけでなく、
行動に移したかどうか
その一点が、歴史を動かしました。
これは、叙事詩に描かれる長期戦、焼失と再建、時代のズレを逆に説明できる発見でした。
まとめ:トロイの木馬が突きつける、意思決定の本質
トロイの木馬は、「敵の策略が巧妙だった物語」ではない。
長期戦を戦い抜いた”合理的な組織”が、
最後に下した判断が、最も致命的だった
という記録である。
📌 経営における最大のリスクは、”合理的判断の延長線上で起きる破綻”である
正しい判断を積み重ねたはずが、最後の一手で全てを失う。これは決して珍しいことではありません。
📌 組織は「異論が存在しない」のではなく「異論が無効化される」
トロイには、木馬を疑う声があった。
しかし、空気、勝利ムード、長期疲労によって、その声は判断に反映されなかった。
問題は「反対意見がないこと」ではない。
「反対意見が通らない構造」である。
これは現代の組織でも、最も頻繁に起きる意思決定バグだ。
📌 シュリーマンが示した、もう一つの教訓
近代において、トロイは「神話」だとされていた。それを疑い、実在を探しに行ったシュリーマンは、当初変人扱いされた。
しかし結果として、常識は崩れ、現実が掘り出された。
組織が最も警戒すべきなのは、非常識な仮説ではない。
「もう議論の余地がない」と固定された概念のほうである。
あなたの概念はアップデートされていますか?
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