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M字カーブはなぜ消えたのか?共働き必須社会の本質とシステム思考による再設計

「今の若い世代は、結婚しても共働きが当たり前」
そんな言葉をよく耳にします。
しかし、これは単なる価値観の変化ではありません。
経済構造の変化と政策の積み重ねの結果、
“働かざるを得ない社会”になったというのが本質です。
M字カーブとは何か?
かつて日本では、女性は20代後半に結婚や出産で仕事を離れ、子育てが落ち着いた40代で再び働き始めるというモデルが主流でした。
年齢別の女性の就業率は、
20〜30代で大きく落ちる「M字型」グラフとなっていたのです。
しかし現在、M字の谷はほとんど見られなくなりました。
なぜ、M字カーブは消えたのか?
M字カーブが消えた理由は、
「女性が働きやすくなったから」ではありません。
本当の理由は、社会構造そのものが変わったからです。
① 世帯収入の低下と教育費の増大
バブル崩壊後、賃金は上がらず、物価と教育費は上昇しました。
大学進学率は20%台から50%を超え、奨学金(実質教育ローン)利用者は約半数。
片働きでは家計が成立しない。
共働きは贅沢ではなく生存戦略へ。
② 人材派遣の規制緩和(ワークシェアリング化)
1999年の派遣解禁、2015年の追加緩和によって、企業は正社員から非正規へ切り替え、全体の賃金水準は低下しました。
労働を「分け合う」ことで雇用は守られたが、
賃金は下がり、生活費は増えた。
③ 社会保障費の増大と消費税増税
少子高齢化で社会保障費は約3倍に膨張。
その穴埋めとして消費税が3% → 10%へ。
→ 可処分所得が減り、働く人数を増やすしかない。
④ 対症療法の政治
日本の政策は、根本治療ではなく小手先で場当たり的。
政治に欠けているのは「システム思考」
日本には、因果関係を俯瞰して「全体最適」を考える政治家・官僚が少ない。
本来必要な考え方
労働政策 × 教育 × 家計負担 × 社会保障 × 賃金構造
→ 1つの統合システムとして設計
しかし現実は:
問題発生 → 急ぎの対処 → 新たな問題 → また対処
→ 悪循環の自己強化ループ
まとめ
M字カーブが消えたのは、
女性の活躍が進んだからでも、
価値観が変わったからでもありません。
日本社会は、共働きなしでは生活できない設計になったから。
↓教育費増大
↓家計の不安
↓共働き必須化
↓家族時間の減少
↓出生率低下
↓少子高齢化
↓社会保障費増大
↓さらに共働き必須へ
では、私たちは何をすべきか?
M字カーブが消えた今、私たちが向き合うべきテーマは、
「共働きが当然の社会」を前提に、
人口動態を反転させ、子育てと仕事を両立できる“新しい社会設計”を作ることです。
もう、対症療法の政策では限界があります。
必要なのは経済・環境・社会保障を包括して考えるシステム思考です。
① 人口動態を変化させること(出生率の反転へ)
少子化対策は補助金ではなく、生活設計が描ける社会」にすること。
・住宅コスト・教育コスト・エネルギーコストの最適化
・家族時間を確保できる働き方改革
・地域で子育てを支援する共助コミュニティの再構築
「子どもが生まれることが、個人のリスクではなく社会の喜びになる」構造へ
② 共働きでも子育てが豊かになる仕組み
・学校・企業・地域が連携する「共生型子育て社会」
・送り迎え・宿題サポート・放課後学習ボランティアの仕組み化
・家庭だけに負担を押しつけない仕組み
子育てを”家庭の責任”から”社会全体のプロジェクト”へ
③ 教育の再定義(義務教育はスキルツリーの提示へ)
日本の教育は依然として「知識暗記中心」。
しかしこれから必要なのは生きる力=スキルのラーニング。
・AI時代のスキルツリーを義務教育で提示(例:ITリテラシー、創造性、問題解決、金融教育)
・子どもが自分の才能の方向性を早期に見つけられる社会へ
・学校はゴールではなく 社会への”発射台”
教育は人生の保険であり、国家の未来投資である
④ エネルギー政策でコストを抑え、家計と産業を守る
エネルギー価格は家計の土台。
電気代が上がれば、企業も家庭も未来投資ができなくなる。
・再エネ×蓄電×分散電源で外部依存を減らす
・地域単位での発電・消費モデル(エネルギーの地産地消)
・住宅断熱・EV・太陽光の総合政策
エネルギー自立は、経済自立の前提
⑤ 経済 × 社会保障 × 環境を包括的に改革する
↓賃金向上
↓可処分所得増加
↓安心して子育てできる
↓出生率改善
↓社会保障の負担減
↓国家の財務改善と成長へ
つまり、
経済と子育てとエネルギーは”別々”ではなく、全部つながっている。
これを統合して考える システム思考こそ、日本の再生の鍵。
まとめ
M字カーブが消えたのは、
女性活躍の結果でも、働き方改革の成果でもありません。
社会の設計が変わったから。
そしてこれから必要なのは、社会を”再設計”する力。
社会全体の最適化と未来設計に踏み出すこと。
それが「共働きが幸せになる国」の条件です。



