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日本の医療費2040年に30兆円増|健康スコア制度と改革案で持続可能な医療へ

日本の医療費は、いま年間約47兆円。
これが2040年には77兆円まで膨らむ見通しだとご存じでしょうか。
増加分はなんと30兆円──つまり、消費税10%分に相当します。
医療の進歩は人を救いますが、同時に財政を圧迫します。
このままでは、「働く世代が支える仕組み」が限界を迎えるのは時間の問題。
では、私たちはどうすればいいのでしょうか。
そもそも日本の医療制度は、諸外国と比較しても手厚い!?
日本の医療制度は、世界でもまれに見る「誰もが医療にアクセスできる仕組み」です。
国民皆保険のもと、どんな職業でも・どんな地域でも・同じ保険証で受診できる。
さらに、窓口負担は原則3割(高齢者は1〜2割)に抑えられています。
この手厚さを、欧米と比べてみましょう。
| 国・地域 | 公的保険のカバー率 | 窓口負担 | 医療費の個人負担比率 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 🇯🇵 日本 | ほぼ100%(国民皆保険) | 1〜3割 | 約12% | 医療アクセスが最も容易。どの医療機関にも自由にかかれる。 |
| 🇺🇸 アメリカ | 約90%(民間+公的) | 数万円単位の自己負担も多い | 約28% | 高額医療費が破産原因になることも。 |
| 🇩🇪 ドイツ | 約90%(公的保険+任意加入) | 原則1割+定額 | 約15% | 受診は紹介制。医療利用の秩序化が進む。 |
| 🇬🇧 イギリス | 約90%(NHS) | 原則無料(税負担) | 約10% | 税で運営。待機期間が長く、医療アクセスに制限あり。 |
つまり日本は、アクセスも安さも世界トップクラス。
誰でも、どんな症状でも、すぐに病院へ行ける国です。
これは消費税10%分に相当する金額です。
このまま「誰でも・いつでも・何度でも」では、国全体が”医療費疲れ”に陥りかねません。
持続可能な制度へ変更すべきでは?
いまの日本の医療制度は「優しすぎて、持たない」構造になっています。
医療費が膨らむ理由は単に高齢化だけではありません。
- 高額な新薬・医療機器の登場
- 軽症でも病院を利用できる自由度の高さ
- 定期処方のためだけの通院(慢性疾患の”形式受診”)
- 高齢者の自己負担が低く、受診インセンティブが働きすぎている
- 医療を”健康管理”の代わりとして利用している
これらが重なり、現役世代が支える構造の限界が目前です。
だからこそ、「医療を減らす」のではなく、「医療を最適化する」ことが必要です。
1. 年齢ではなく「実質所得」で負担を決める
現在の制度は年齢別(69歳以下3割、70〜74歳2割、75歳以上1割)が基本。
しかし高齢者の中にも、年金・資産・配当を含めて実質的に豊かな層が多く存在します。
そこで、収入+資産を加味した応能負担制へ移行。「支えられる人が支える」公平な構造をつくります。
2. 軽症・市販薬対応疾患は保険対象外へ
風邪、肩こり、腰痛、湿布、目薬など、市販薬で治せる範囲は保険を外す。
薬局やドラッグストアとの連携を強化し、「セルフメディケーション社会」へ。
3. 高額医薬品は「費用対効果」で線引き
1人あたり数千万円〜億単位の薬も保険適用になっている現状。
医療の倫理を守りつつ、「社会が支える上限」を設けることで、
4. 受診回数を”疾患別設計”に
例えば高血圧や糖尿病の安定期なら、毎月通院せず3ヶ月に1回でも管理可能。
AIと電子服薬記録の活用で安全性を担保し、「定期受診=年4回モデル」へ移行すれば、
5. 「受診ゼロ・インセンティブ」で行動変容を促す
1年間、医療費の自己負担がなかった人は翌年の負担率を減らす。(例:3割→2.5→2→1割)
軽症時の受診を減らし、健康維持行動を評価する「医療のリワード制度」です。
合計で約15兆円の財政余力を確保できます。
つまり「消費税6%分」に匹敵する規模です。
医療を減らすにも限度がある——健康スコアで”応能負担”へ
医療費を減らすだけでは、限界があります。
いま必要なのは「健康を守る努力が報われる仕組み」。
つまり、”応能負担”ではなく、“応健負担”へ──健康を維持する力に応じて、負担を軽くする方向へと進化させることです。
個人の健康状態や生活習慣をスコア化し、医療制度や保険料、負担率に反映させる仕組みです。
たとえば、
- 定期健診の受診(1年一回の自己負担)
- 適正体重・血圧の維持
- 睡眠時間・運動量の安定
- 禁煙・節酒などの生活習慣改善
- 食事のレコーディング
- ストレス管理やメンタルケア
こうした行動をデジタルで可視化し、AIが年間スコアとして集計。
スコアが高い人ほど、翌年の医療負担率が下がる仕組みです。
スコア別の新しい応能負担モデル
| 健康スコア | 状態例 | 自己負担率 | 制度的位置づけ |
|---|---|---|---|
| A:80点以上 | 健診・運動・睡眠・体重が安定 | 1割 | 予防医療優良者 |
| B:60〜79点 | 健診受診あり・一部改善途上 | 2割 | 標準 |
| C:40〜59点 | 運動不足・健診未受診など | 2.5割 | 改善支援対象 |
| D:39点以下 | 医療依存・高リスク群 | 3割 | 医療的支援・負担増対象 |
このモデルでは、「病気になったら罰せられる」のではなく、「健康を維持した人が報われる」方向に再設計されます。
結果として、
- 健康意識が高まり
- 医療費が減少し
- 負担の公平感も増す
という三重の効果が生まれます。
この健康スコア制によって、行動変容による医療費抑制は年間3〜5兆円規模と試算されます。
制度への信頼性も高まり、「健康が社会の新しい通貨(Health Credit)」となる時代がやってきます。
医療費を抑える社会ではなく、健康を育てる社会へ。
それが、令和時代の”応能負担”の新しいかたちです。
私たちでも明日からできることは!?
健康スコアは、日々の行動がそのまま結果に反映される”自分の通信簿”です。
ちょっとした生活の改善がそのまま未来の医療費を減らす力になります。
①朝と夜の「体調スキャン」を習慣に
一日の始まりと終わりに、自分の体に2分だけ向き合う。
顔色・睡眠の質・気分・食欲・体のこわばり──小さな”変化”をスマホのメモやアプリに残していきましょう。
これが健康スコアのベースデータになります。
②「ながら運動」で1日15分
通勤中や掃除中にできる軽いストレッチでOK。
「動いた分だけスコアが上がる」と思えば、継続しやすくなります。
健康スコアでは「運動頻度」「継続日数」が加点対象。
③21時以降は”食のクールダウンタイム”
夜遅い食事は、血糖値や睡眠の質を悪化させます。
「21時以降は水・お茶・ハーブティーだけ」にするだけで、スコアの”代謝項目”が改善します。
④ストレスを”言語化”する
ストレスは健康スコアを下げる最大の敵です。
感じた時に「なぜそう思ったか」を一言メモするだけで、AIがパターンを解析し、翌日の改善提案をしてくれます。
⑤食事のレコーディング
食べたもの・時間・気分を簡単に記録してみましょう。
完璧なカロリー計算ではなく、「何を」「いつ」「どんな気持ちで」食べたかを残すことが目的です。
AIはそこから栄養バランスや食習慣を学習し、翌週のスコア予測や改善提案をしてくれます。
🍱 朝:おにぎり+味噌汁(気分◎)
🍜 昼:ラーメン+替え玉(気分△)
🥗 夜:サラダ+スープ(気分○)
食と感情をセットで記録することで、過度の食事コントロールを防ぐことができます。
⑥年1回の健康チェック+セルフレビュー
健診を「受けて終わり」にせず、結果をもとにAIと一緒に「どこを改善すればスコアが上がるか」を確認。
健康スコアの更新は、次の1年の行動設計図になります。
その他の医療費収入を増加させる取り組みとして、
- 労働人口の増加(特に高齢者)労働参加することでの医療費負担の抑制などのインセンティブ設計。
- 医療ツーリズム(Medical Tourism)は、もともと「外国人が日本で質の高い医療を受ける」ことを目的とした成長産業
などがあげられます。
まとめ
日本の医療制度は世界でも類を見ない手厚さを誇りますが、その持続可能性は危機に瀕しています。
2040年には医療費が77兆円に達し、消費税10%分に相当する30兆円の増加が見込まれています。
しかし、制度改革と健康スコア制度の導入により、医療費抑制と公平性の両立が可能になります。
私たち一人ひとりの健康への取り組みが、社会全体の持続可能性を支える時代が来ています。



