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2025.09.15

住宅の断熱に対しての補助金が手厚い。なぜ、国は断熱を推進しているの?

国が断熱に手厚い補助金を出して推進しているのには、複数の理由があります。大きく分けると 「エネルギー政策」「環境政策」「社会政策」 の三つの柱が絡んでいます。

昔の日本の家づくりは「夏を涼しく過ごす」ことを最優先に設計されていました。

畳や障子、風の通り道を意識した造りは、四季に寄り添った知恵そのものです。

ところが、近年の猛暑や異常気象の中では、こうした従来型の住宅だけでは快適さも健康も守りきれなくなってきました。

特に熱の出入りが最も大きい“窓”は、夏は熱気を呼び込み、冬は暖気を逃がす大きな原因に。だからこそ国は、補助金を手厚くしてまで窓リノベを推進しているのです。

エネルギー政策:エネルギー消費削減とエネルギー安全保障

断熱性能を高めると、冷暖房に必要なエネルギーが大幅に減ります。

特に日本は資源を海外に依存しており、原油や天然ガスの輸入に莫大なコストがかかっています。

断熱を進めることは、エネルギー消費そのものを減らして輸入依存を下げる= エネルギー安全保障の強化 につながります。

国が「断熱=窓リノベ」を強調している理由

  1. 熱の出入りの大半が「窓」
    一般的な住宅では 夏の冷房時:約70%の熱が窓から侵入。
    冬の暖房時も 約50%の熱が窓から逃げる。
    → 壁や屋根よりも窓の性能改善が省エネ効果に直結。
  2. 工事のしやすさと即効性
    壁や床の断熱改修は工期も費用も大きい。
    一方で窓は「内窓設置」「ガラス交換」などで、短工期・低コストで効果が出やすい。
    → 「補助金 → 実感 → 普及拡大」の流れを作りやすい。
  3. 健康と快適性への影響
    冬の結露やカビは窓まわりで起こりやすく、喘息やアレルギーの原因に。
    窓の断熱強化は「結露減少」「温度ムラ解消」に直結し、健康被害を抑える。
  4. 脱炭素政策の“見せ場”に
    窓リフォームは数十万円規模でも効果が分かりやすく、補助金との相性も良い。
    国としては「断熱リフォームを身近に感じてもらう」入口として窓に力を入れている。

社会政策:健康寿命の延伸と医療費削減

断熱が不十分な住宅では、冬場に ヒートショック呼吸器系疾患が増えることが知られています。

断熱性を高めると室温が安定し、健康被害を防ぐ効果が大きいことが研究で示されています。

結果的に高齢者の救急搬送や医療費の抑制につながり、 社会保障コストを減らす狙いもあります。

環境政策:CO₂排出削減と脱炭素社会の実現

冷暖房の効率が上がれば、それに伴う電気やガスの使用量も減ります。

結果的に、CO₂排出削減脱炭素社会の実現に直結します。

これは国の「カーボンニュートラル2050」や 「2030年温室効果ガス46%削減目標」の重要な手段の一つです。

特に住宅・建築分野は排出量の約3割を占めるため、 断熱強化が不可欠とされています。

温暖化による気候変化で従来の日本式住宅が合わなくなってきた

1. 従来の日本住宅と気候のズレ

昔の日本住宅は「夏を旨とすべし」と言われるように、風通しを重視した造りでした。畳や障子、木材を活かし、湿気と暑さをしのぐ工夫がされていました。

しかし現在は以下の理由でそれが合わなくなっています:

  • 猛暑化:真夏の気温が35℃を超える日が当たり前になり、通風だけでは命に関わる。
  • 暖冬化と寒暖差:冬が昔ほど厳しくなくても、ヒートショックのリスクや急激な気温変動が増えている。
  • 都市ヒートアイランド現象:都市部では昔以上に熱がこもり、木造・隙間風住宅では快適性が確保できない。

2. エネルギーと温暖化の悪循環

断熱が弱いと、冷房・暖房のエネルギー使用量が増え、結果としてCO₂排出が増加します。これはさらに温暖化を進める悪循環です。

断熱を強化すれば、エアコン依存を減らして電力需要を抑制でき、温暖化対策そのものにも直結します。

まとめ

国が断熱を推進する背景は、次の三つの政策的狙いが同時にあるからです。

  • エネルギー輸入依存を減らす
  • 脱炭素のためのCO₂削減
  • 健康被害の抑止と医療費の削減

だからこそ、補助金も「住宅リフォーム」「新築基準」「窓・壁単位の改修」など幅広く設けられているのです。

以下は、2025年(令和7年度)に国が提供する「断熱リフォーム関連の主要補助金制度」の一覧です。 対象工事や補助上限、申請期間などを分かりやすく表にまとめました。

2025年 断熱リフォーム関連の主要補助金制度

補助事業名 対象内容 補助上限 主なポイント 申請期間・備考
既存住宅の断熱リフォーム支援事業(環境省) 窓・壁・床・天井・玄関ドアなど、高性能建材を使った断熱改修 戸建最大120万円(費用の1/3以内)、集合住宅15〜20万円 高性能建材の使用が条件 2025年4月22日~6月13日(一次公募)。二次以降未定
先進的窓リノベ2025事業 内窓設置・窓交換など窓の高断熱化 1戸あたり5万〜200万円 「SSグレード」の窓でより高額補助 3月下旬~予算上限に達するまで(遅くとも12/31まで)
子育てグリーン住宅支援事業 断熱工事+躯体断熱 or エコ設備設置の組み合わせ 最大60万円(2工事で40万、3工事で60万) 子育て・若者世帯以外も対象 3月末~12月末、登録事業者が申請
長期優良住宅化リフォーム推進事業 断熱向上+耐震・劣化対策など複合改修 最大210〜250万円 長寿命住宅化を目的に複合支援 継続見込み。自治体制度も要確認
次世代省エネ建材の実証支援事業 外張り・内張り断熱、窓断熱など 外張り300〜400万/戸、内張り200万(集合125万)、窓150万 ※2024年度実績 高額補助だが2025年度公募は未発表 未発表(2024年度参考)
賃貸集合住宅向け給湯省エネ事業 高効率給湯器導入 最大7万円/戸(住戸数で変動) 給湯器更新に特化 3月下旬~12月末(概ね)

ポイント解説

  • 併用・重複申請に注意:同一工事に対する複数の制度申請は原則不可(例:同じ窓改修を「先進的窓リノベ」と「子育てグリーン住宅」で同時申請はできません)
  • 登録業者による申請が必要:補助金の申請や受け取りは登録済み事業者が行います。契約前に対象制度に対応しているか確認を
  • 申請期限と予算枠に注意:どの制度も予算上限に達し次第締切となる可能性が高いため、早めの準備が重要
  • 自治体独自の制度もチェック:国の制度に加え、大阪市や東京都など独自の断熱リフォーム支援を行っている場合もあり、併用可能なケースもあります