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RAG導入の壁|AI用マニュアルを分けてはいけない理由と最強の書き換え術

RAG導入の壁
「AI用のマニュアル」は人間用と分けるべきですか?
こんにちは。
NotebookLMやGeminiを使った社内RAG(検索システム)の構築について連載してきましたが、読者の方から非常に鋭い、そして重要なご質問をいただきました。
「人間が読むマニュアルと、AI(RAG)に読ませるマニュアルは、
ファイルを分けたほうがいいのでしょうか?」
今のマニュアルは図解だらけでAIが読み取れなさそう……だからAI専用のテキストデータを作ったほうが精度が出るのでは?というお悩みです。
結論から申し上げます。
「絶対に分けてはいけません」。
今回は、RAG運用で最も陥りやすい「二重管理の罠」と、今のマニュアルをAI対応にするための「ちょっとした書き換え術」について解説します。
01:なぜ「AI用マニュアル」を作ってはいけないのか?
理由はシンプルで、
「人間はメンテナンスを忘れる生き物だから」です。
もし「人間用のPDF」と「AI用のテキストファイル」の2種類を作ったとしましょう。
来月、業務ルールが変更されました。
あなたは人間用のマニュアルを急いで修正し、社員に配布します。
さて、その時「AI用のテキストファイル」も同時に修正することを覚えているでしょうか?
多くの場合、ここでタイムラグが発生します。
結果として、
「人間は新しいルールで動いているのに、AIだけが古いルールに基づいて回答する(=AIが嘘をつく)」
という状況が生まれます。
これがRAG運用が破綻する一番の原因です。
ですから、
「ソース(情報源)は常に一つ(One Source)」
が大原則です。
02:目指すべきは「人間にも親切で、AIにも易しい」マニュアル
では、図解だらけの読みづらいマニュアルをどうすればいいのか。
実は、
「AIが読みやすいマニュアル」=「人間にとっても誤解がないマニュアル」
なのです。
以下の3つのポイントを意識して、既存のマニュアルを少し「リノベーション」してみましょう。
1. 「画像」の下に「テキスト」を添える
最近のAIは画像認識能力が高いですが、まだ完璧ではありません。
マニュアルに操作画面のスクリーンショットを貼る場合、画像だけで説明を終わらせず、その下に「言語化」した説明を加えましょう。
❌(画像のみ)
設定画面のスクショに赤丸がついているだけ。
⭕(テキスト追加)
画像の下に「右上の歯車アイコン(設定ボタン)をクリックし、メニューから『詳細設定』を選択します」と記述する。
これは、目の不自由な方や、画像を読み込めない環境で作業する人間にとっても親切な設計です。
2. 「これ」「あれ」などの指示語を減らす
AI(RAG)は、長いマニュアルを「チャンク」と呼ばれる小さな情報の塊に分割して読み込みます。そのため、文脈が途切れると指示語の意味を見失うことがあります。
❌(AIが苦手)
「手順は以上の通りです。これが完了したら次に進んでください。」
⭕(AIが得意)
「初期設定が完了したら、次に進んでください。」
主語を省略せず、名詞を繰り返すことで、AIは「どの作業の話をしているのか」を正確に理解し、検索精度が劇的に向上します。
3. 章末に「Q&Aリスト」を追加する
もしマニュアル全体の書き直しが難しい場合、これが最強の裏技です。
マニュアルの章末や巻末に、「よくある質問(FAQ)」のテキストリストを追加してください。
例:
Q:エラーコードE-01が出たらどうすればいいですか?
A:電源を抜き、3分待ってから再起動してください。(参照:P.15)
AIにとって「質問と回答のセット」は最も学習しやすい形式です。本文が複雑でも、このQ&Aリストさえあれば、AIはそこを優先的に参照して正解を導き出せるようになります。
03:どうしても修正できない場合の「折衷案」
「マニュアルがPDF化されていて編集できない」「量が多すぎて直せない」
そんな時は、マニュアル本体とは別に「AI補助ファイル(辞書)」を1枚だけ作って、NotebookLMに追加投入してください。
このファイルには、以下の情報だけをテキストで箇条書きにします:
📝 社内用語の定義(略語の正式名称など)
🖼️ 画像情報の補足(「P.5のフローチャートは、Aの場合はBへ進むことを示している」など)
これなら、既存のマニュアルに手を加えずに、AIの知識だけを補強することができます。
まとめ:マニュアル整備は「資産」になる
「AIのためにマニュアルを直すなんて面倒だ」と思われるかもしれません。
しかし、AIが理解しやすい論理的なマニュアルは、
新人社員や引継ぎ相手にとっても
「分かりやすいマニュアル」になります。
RAGの導入は、社内のドキュメント体質を改善する絶好のチャンスです。
ぜひ、「One Source」での運用にチャレンジしてみてください。
【保存版】コピペで完了!
既存マニュアルを「AIが理解できる最強データ」に
書き換える魔法のプロンプト
📋 RAG最適化プロンプト(コピペ用)
以下のプロンプトをChatGPTやGeminiに貼り付け、その下に修正したいマニュアルの文章を入れてください。
# 命令書
あなたは「RAG(検索拡張生成)システムのデータ整備専門家」です。
以下の【入力テキスト】は、人間向けに書かれたマニュアルの一部です。
これを、AIが検索・引用しやすいように、以下の【リライトルール】に従って書き直してください。
# リライトルール
1. 主語の明記(最重要):
– 「これ」「あれ」「右のボタン」などの指示語や、省略された主語を、具体的な名称(機能名・画面名)に書き換えてください。
– 文脈が途切れても意味が通じるよう、一文一文を完結させてください。
2. 構造化:
– 見出し(##)や箇条書きを適切に使い、情報の階層構造を明確にしてください。
– 手順説明は番号付きリスト(1. 2. 3.)にしてください。
3. 図解の言語化:
– 文中に「図を参照」といった表現がある場合、または操作説明がある場合は、画像がなくても動作が分かるように具体的なテキスト説明(クリックする場所やメニュー名)を補足してください。
4. FAQの生成:
– テキストの内容に基づき、AIが学習しやすい「Q&A(質問と回答)」のペアを最後に3つ作成してください。
# 出力形式
Markdown形式で出力してください。
—
【入力テキスト】
(ここにマニュアルの文章をコピペしてください)
【実演】どれくらい変わるのか?ビフォーアフター
実際にこのプロンプトを使って、ありがちな「説明不足のマニュアル」を変換してみましょう。
❌ Before:よくある「人間向け」の文章
設定画面を開いたら、右上のアイコンを押してください。
そうするとウィンドウが出るので、一番下のやつを選びます。
※図1参照
これが終わったら再起動すればOKです。もしダメなら管理者に聞いてください。
(人間なら図を見れば分かりますが、AIは「右上のアイコン」が何を指すのか、「一番下のやつ」が何なのか理解できず、回答に失敗します)
⭕ After:プロンプト適用後
## 初期設定の手順
### 設定画面の操作
設定画面を開き、画面右上にある[歯車アイコン(詳細設定)]をクリックしてください。
### オプションの選択
設定ウィンドウが表示されますので、メニューの一番下にある[システム初期化]を選択してください。(※図1:詳細設定メニュー参照)
### 設定の反映
選択後、システムを再起動することで設定が完了します。
再起動しても設定が反映されない場合は、システム管理者へお問い合わせください。
よくある質問(FAQ)
Q:設定画面で何を選択すればいいですか?
A:右上の[歯車アイコン]をクリックし、表示されたウィンドウから[システム初期化]を選択してください。
Q:設定を反映させるにはどうすればいいですか?
A:メニュー選択後に、必ずシステムを再起動してください。
解説:なぜこれで精度が上がるのか?
この出力結果には、RAGの精度を高める3つの仕掛けが施されています。
1️⃣ 「右上のアイコン」→「[歯車アイコン]」
指示語が具体的な名詞に変わったことで、AIはユーザーから「歯車アイコンは何?」と聞かれても答えられるようになります。
2️⃣ 見出し(##)の追加
情報がカテゴライズされ、AIが「ここは初期設定の話だ」と認識しやすくなります。
3️⃣ FAQの追加
前回の記事でも触れた通り、Q&A形式はAIにとって最も理解しやすい「正解データ」です。本文が複雑でも、このFAQ部分が検索に引っかかることで、回答精度が担保されます。
最後に
今日から新しいマニュアルを作るとき、あるいは既存のマニュアルをNotebookLMに投入するときは、
一度このプロンプトを通してみてください。
ほんの一手間で、
あなたの会社の社内Botは「気の利いたAI」へと進化します。
データ整備は、もはや「人間が読むため」だけのものではありません。
「AIという新しい同僚」のためにドキュメントを整える──
それが2026年の業務効率化の第一歩です。



