18歳未満の方はコチラから退場ください。
2025.06.26

マルチタスクで脳がパンクしそうなあなたへ──「余白をつくるメモ」のすすめ

はじめに|同時進行が当たり前の時代に

現代の働く環境では、「一つのことに集中できる」時間の方が珍しくなりました。

電話対応しながらメールを確認

チャットの通知が鳴る中、報告書を作成

会議中も次のタスクを頭で段取り

このように、常に何かと並行している”状態──つまりマルチタスクが当たり前になっています。

でも、ふとした瞬間に感じる「集中できていない感じ」「ケアレスミス」、実は脳の使いすぎサインかもしれません。

マルチタスクは2割損している!?

明治大学の実験によると、マルチタスクは能率を平均2割下げるといいます。

たとえば、「片手で渦巻きを描きながら、もう片方の手で足し算をする」といった課題では、ほとんどの人が正答率を下げてしまう結果に。

これは、脳の左右の連携が乱れてくることが原因とされています。

普段は左脳(言語・論理)がメインで処理していますが、負荷がかかりすぎると右脳(感情・イメージ)にも助けを求め始める。

でも右脳は、本来の得意分野とは違う「論理処理」に対して性能が低く、ここで限界を迎えるのです。

これが、「頭がごちゃごちゃして動けない」「思考停止してしまう」と感じる原因なんですね。

マルチタスクに向いてる脳、向いてない脳

では、誰でもマルチタスクが苦手なのかというと、実はそうでもないんです。

大阪大学の渡辺准教授によれば、人間の脳そのものは、本来マルチタスクが可能なように設計されています。

脳は“同時並行”に強い構造を持っている

脳には「ワーキングメモリー(作業記憶)」という、短期間だけ情報を保持して処理するメモリ機能があり、これがマルチタスクの土台になっています。

たとえば「メールの返信をしながら、頭の中で次の会議の段取りを考える」といった状況でも、脳内では、それぞれのタスクに対応した神経細胞の集団神経ネットワークが活動し、表面的には同時進行していなくても、一時的に切り替えながら保持・再活性化を繰り返しているのです。

つまり、脳は複数の作業を同時に「つまみ食い」しながらこなすように動いています。

でも「できる」と「得意」は別問題

ただし──その処理能力には限界があります。

ワーキングメモリーの容量には個人差があり、処理速度やストレス耐性、IQなどと相関しているため、

容量が多い人

複数の作業を柔軟に切り替え、効率的にこなせる

容量が少ない人

すぐに混乱し、どれも中途半端になりがち

というように、マルチタスクに「強い人」「苦手な人」は存在するのです。

また、加齢や疲労、ストレスによって処理能力は日によって大きく変化します。

「できる設計」でも「限界を超えるとパンクする」

渡辺准教授はこうも指摘します。

「脳はもともとマルチタスク処理に適した構造を持っていますが、
それは“限られた範囲内での話”です。
エネルギー効率を最適化するため、常に全力稼働ではなく
“必要な時に必要な処理を呼び出す”設計になっています。」

つまり、「マルチタスクできる=ずっと同時進行できる」というわけではないのです。

私たちは、自分のワーキングメモリーの容量と、その時の心身状態を踏まえたうえで、

  • ・今こなせる量を見極める
  • ・一部を「外部メモリ(=メモ)」に退避する
  • ・必要なときに再び活性化する

という脳に優しいやりくりが大切になってきます。

人事戦略も“マルチタスク力”で変わる

大手人材会社「エン・ジャパン」では、社員のマルチタスク適性を数値化して配属に活用しています。

記憶力・計算応用力・直感力などを含めて分析し、「この人はマルチタスクに強い」「この人は集中型で活躍しやすい」といった個性に合った人材配置を行っているのです。

これからの職場では「適性ありきの業務分担」が当たり前になっていく。

適性に合った業務配置の一例

  • ・マルチタスク型: 動きの早い部署や調整系業務
  • ・集中型: 創造性が求められる企画や分析系

というように、「能力を活かす」方向で配置することが、本人のストレス軽減とパフォーマンス向上につながるのです。

脳に「余白」をつくる一番簡単な方法

とはいえ、現場では「今この瞬間にも3つくらい並行してやらなきゃいけない!」ということも多いはず。

そんな時、一番効果的なのが「メモです。

忘れていい状態をつくることは、実は記憶のリセットではなく記憶の保護

一度メモに書き出すと、脳は「これを覚えておかなくていいんだ」と認識し、作業記憶が空いて、次の処理にリソースを回せるようになります。

脳の外部メモリとして活用できるメモの例

  • 付箋に一言書く
  • タスク管理アプリに放り込む
  • ノートに一覧化する

どんな方法でもOKです。
脳の外部メモリアウトボードブレインとして使うことを意識するだけで、ずっと楽になります。

おわりに|疲れたらメモを取る。それだけで救われる

マルチタスクは避けられない時代に入りました。

でも、脳には限界があります。無理をするほどパフォーマンスが落ちてしまうのも事実。

だからこそ、自分の「今、余白があるか?」「処理オーバーじゃないか?」を感じ取る習慣が大切です。

そして、その第一歩はメモをとること。

  1. 頭の中を一度“棚卸し”
  2. 脳を安心させる
  3. スペースを確保してから、また次のタスクへ

たったこれだけで、驚くほどスムーズに動けるようになります。

あなたの働き方に、少しでも余白を。

今日から、メモ習慣を始めてみませんか?