経験価値マーケティングとは?顧客の心を動かす体験設計と実践方法


記憶に残る体験」が、次の来店をつくる。
価格や機能で差がつかない時代――。
選ばれる理由は、「そのとき、どんな気持ちになったか」。
戦略的経験価値マーケティング(Strategic Experiential Marketing)は、顧客の心を動かす“体験設計”を、現場に実装するためのフレームワークです。
今回はそのモジュール設計から、現場スタッフの「ものさし」を変えるまで、実践的なステップを交えてわかりやすく解説します!
参考:
以下は本稿で参照した主要文献の要点です。実務設計やモジュール化の参考になります。
戦略的経験価値マーケティングのモジュール設計
本稿では、B.シュミットの「5つの経験モジュール(SENSE/FEEL/THINK/ACT/RELATE)」を実装ガイドの核にしています。
B.ジョセフ・パイン & ジェームズ・ギルモア
The Experience Economy(1999)—
体験を価値化する視点は、経験価値設計の理論的出発点です。
B.シュミット(Bernd H. Schmitt)
Experiential Marketing(1999)—
SENSE/FEEL/THINK/ACT/RELATE の5モジュールは、現場実装の実践的フレームになります。
目次
経験価値とは何か?


これまでのマーケティングは「機能」や「価格」、つまりスペックとコスパで差別化するのが主流でした。
しかし今、顧客が本当に選ぶ理由は「その商品・サービスを通じて、どんな体験をしたか」です。
同じカフェでも「自分の気持ちが整う空間だった」「接客で心があたたかくなった」――そんな経験が次の来店を生み出しています。
これが経験価値(Experiential Value)です。
そしてその価値を設計し、意図的に創り出す手法が、今回ご紹介する戦略的経験価値マーケティングなのです。
シュミットの5つの経験価値モジュール
B.シュミットは、経験価値を次の5つのモジュールに分類しました:
モジュール | 概要 | 例 |
---|---|---|
SENSE(感覚的価値) | 五感を刺激する体験 | 香り、音楽、照明など |
FEEL(情緒的価値) | 感情を喚起する体験 | 感動的な接客、感謝の手紙、驚きの演出 |
THINK(知的価値) | 創造性や問題解決を刺激する体験 | ゲーミフィケーション、知的発見 |
ACT(行動的価値) | ライフスタイルや行動への働きかけ | ワークショップ、スポーツ、DIY体験 |
RELATE(関係的価値) | 他者とのつながり、社会性 | SNS連動、コミュニティづくり、SDGs訴求 |
サービスや商品設計の段階で、「この体験はどの価値を届けているか?」を明確にすることが、ブランディングの第一歩になります。
社内実装する6つのステップ
では、どうすれば自社に経験価値を実装できるのでしょうか?
以下の6つのステップが鍵です。
経験価値マーケティングの6ステップ
番号 | タイトル | 主な内容 | 活用例・ワークショップ |
---|---|---|---|
1 | 経験価値とは何か? | 経験経済・経験価値の台頭/機能的価値 vs 情緒的価値/ブランド構築との関係 | 自社商品・サービスにおける「経験要素」洗い出し |
2 | 戦略的フレームワーク | シュミットの5つの経験モジュール(SENSE, FEEL, THINK, ACT, RELATE)と活用法 | 顧客体験マップに5モジュールをマッピング |
3 | UXとしての体験設計 | カスタマージャーニー/タッチポイント設計/CXとEX(従業員体験)の統合 | 顧客ペルソナごとの体験シナリオ作成 |
4 | 感情と記憶のデザイン | 感情ラベリング/エピソード記憶/ナラティブマーケティング | 感情トリガーを組み込んだ広告・店舗演出設計 |
5 | テクノロジーとデータ活用 | 感情データ/パーソナライズドUX/AI・IoTを用いた体験強化 | 顧客感情データをもとにしたサービス改善ワーク |
6 | 戦略と収益化 | ブランド体験とLTVの関係/感動体験による顧客創造と維持/ROIの可視化 | 自社への応用プラン策定とプレゼン |
実装したその時、スタッフたちのものさしは何に変わっているのか?


経験価値マーケティングが社内に根づいたとき、スタッフの「基準」や「会話」は大きく変わります。
発想の転換 — KPIを「数字」から「感情」へ
つまり、“数値”ではなく“心の動き”が指標になる文化が生まれるのです。
この変化こそが、体験価値をブランドに変える一歩。
「スタッフが日々、お客様の気持ちと向き合い、進化していく現場」こそが、戦略的経験価値マーケティングのゴールなのです。
まとめ|経験価値を設計すれば、ブランドは自然と生まれる
- 価格や機能で差別化できない時代において、顧客の感情と記憶に残る体験を設計するマーケティング手法。
- 5つのモジュール(感覚・感情・思考・行動・関連性)に沿って提供価値を棚卸することで、サービスの「進化の余白」が見えてくる。
- 社内実装は「体験の見える化」から始まり、スタッフの“ものさし”を変えることで、日々の行動がブランドそのものになる。
目指すべきは、「売上」ではなく「また来たい」と思わせる体験の連鎖です。