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2023.12.15

第十五話:『揺らぐ信頼 – 裏切りの兆し – 』

『夜明けを待ちながら – 星降る街の物語 – 』

 大地と美咲が共に成長し、新たな事業計画を進めていた中、予期せぬ出来事が二人の関係に影を落とし始めた。店舗の成功と彼らの目覚ましい成果にも関わらず、社内の一部からは不満の声が上がっていた。

 新規出店の際に直営での展開ではなく、FCでの展開予定が社内に漏れていたのだ。店舗の拡大により、責任者の席に新たな空きが生まれる。風俗スタッフとしてのキャリアアップは、自分の担当するセクションでどれだけの売上を創ることができたのかということだ。

 誰しもが成功を約束される店舗を持ちたいし、配属されたい。大地は、しばらくの間、社内であらぬ疑いをかけられることになる。

 自分の出世だけしか考えてない。新規出店時はあれだけ協力したのに恩を感じていない。挙げ句には、FC制度を利用して独立を企んでいるともいわれる始末だった。

 次第に噂だけでなく、実害も感じ始めることになる。ある同僚からの報告により、大地は社内における自分たちに対する裏切りの兆候を感じ取った。

 一部の同僚が彼らの成功を妬み、秘密裏に彼らの計画に反対しているという情報が入ってきたのだ。この報告は大地に衝撃を与え、彼は周囲を信じることができなくなり始めた。

 美咲もまた、この状況に動揺し、社内での立場を不安に感じ始めた。彼女は自分たちの努力が誤解され、不当な評価を受けていると感じ落胆した。

 美咲はある日、偶然社内のメールを目にする。その内容は、裏切りの首謀者が他ならぬ健太郎であることを示唆していた。この事実は美咲にとって信じがたいもので、健太郎はかつて大地を支え、彼らが信頼していた同僚だった。彼女はこの情報をどう伝えるべきか、深く悩んだ。

 美咲は真実を伝えるべきかどうか葛藤しながら、大地にこの情報を伝えることを決意した。彼女は大地との信頼関係を尊重し、隠し事をすることのリスクを避けるために、全てを正直に話すことにした。

 「大地、このメールを見てくれる。今の事件の首謀者が分かったわ。」そのメールには、新規の事業計画の詳細が記載された資料が添付されていた。

 「宛先は、社外の人間ね。送信したのは、・・・健太郎よ。」美咲からそう告げられた瞬間、大地は全てを理解した。

 新規店のコンセプトを急速に模倣された事実、打つ手を先回りされているような競合店の動向などなど、全ては情報が漏洩していたことによる内部の犯行だったのだと。

 大地は、美咲からの報告を受けて深い衝撃を受けた。健太郎が裏切りの首謀者であるという事実は、彼にとって信じられないものだった。

 健太郎は、大地が過去に厳しい時期を乗り越えるための支えとなっていた人物であり、その裏切りは大地にとって大きな裏切り感と失望をもたらした。

 「まさか、健太郎が、でもどうして・・・。」

 「あなたは活躍しすぎたのよ。」

 「自信の塊でプライドの高い健太郎は、自分以上に活躍できる人間が身近にいることに耐えきれなかったんじゃないかな。」

 大地と美咲は、この新たな情報をどのように扱うべきかについて議論した。彼らは、チームとプロジェクトを守るために、健太郎との関係をどのように処理するかを決定しなければならなかった。

 二人は、この状況を公平かつ慎重に扱うことの重要性を理解し、次の一手を練り始めた。まずは、社内の情報の統制と健太郎一派に加担する人間の洗い出しを行った。

 健太郎も用意周到で、使用するメールアドレスは、複数のフリーメールを使用しており、決定的な証拠に至っていない。

 仮に、社内情報が漏洩していたとして、それだけで業績に大きなダメージに至ったとう相関関係もはっきりとしない。

 社内規則ではもちろん、営業上の秘匿に当たる部分だが、情報にアクセスできる権限を絞り込んでいなかったことは、プロジェクトチームの落ち度でもある。

 大地は、このあやふやな証拠を抱えて健太郎と対峙するには若干の無理があることを悟っていた。しかも現在の社内の大勢は、過大な予算を管理するプロジェクトチームに対する風当たりが強い。コストに対してリターンが計画の進捗に若干及んでいないからだ。

 むしろ、不透明な経費、効果の表れないコストとして、経営会議でやり玉にあがることもしばしばだ。この緊張した状況は、彼らの仕事にも影響を与え始めた。

 以前のような円滑なコミュニケーションや協力が難しくなり、プロジェクトの進行に支障をきたすようになった。

 大地と美咲は、社内の不和をどのように乗り越え、プロジェクトを成功に導くかという新たな課題に直面した。

 大地はこの裏切りの兆候に対処するために、計画の練りなおしを行った。まずは、自社の内部環境分析を行い、競合にも負けない、模倣されない強みを活用した資源を店舗づくりの核に据えた。

VRIO分析、SWOT分析、3C分析を行い、自社の強みの深堀に努めた。

VRIO分析とは

Value(価値)、Inimitability(模倣困難性)、Rarity(希少性)、Organization(組織)の4つの視点から、自社の経営資源を分析するフレームワークです。
自社の強みと弱みを把握し、競争優位性を獲得するための戦略を構築することができる。

SWOT分析とは

Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの要素で、自社の内部環境と外部環境を分析するフレームワークです。
現状の問題点や改善点、将来のリスクやチャンスを見つけることができる。

3C分析とは

Customer(顧客)、Company(自社)、Competitor(競合)の3つの要素で、市場における自社の立ち位置を分析するフレームワークです。
顧客のニーズや満足度、自社の強みや弱み、競合の動向や戦略を把握することができる。

 仮に情報が漏れていたとしても、模倣されない店舗づくりをしてしまえばいいだけの話だ。皮肉なことにこのビジネスフレームワークは、全て健太郎から教えてもらったことだった。

 大地は悲しみと悔しさを感じながら、一心不乱でブレストし、要約し、新しいビジネスモデルの事業計画書を作り上げることができた。

 また、美咲とともに社内の同僚との関係を見直し始めた。彼らは信頼できる同僚との関係を強化し、疑念を持つ者たちとのギャップを埋めようと努力した。

 この過程で、大地は社内政治と人間関係の複雑さを痛感した。彼は自分たちの計画とキャリアを守るためよりも、より大切なものがあることを理解した。

 全ての業務は一人で行うことはできない。役割があるだけで、リーダーの意見、考えはチームの中で一つの意見にすぎないこと。入社初日に店長からかけられた言葉を思い出す。

 チームワークは掛け算です。1+1は2じゃだめだ。1+1は10にできる。お互いの長所さえ理解し合い補完し合うことでより大きな力を発揮できる。

 今振り返ってみると、1×1は1だから、掛け算じゃまずくねぇ?と思いもせんこともないが、2進法で考えれば1+1はたしかに10になる。要は、チームビルディングが上手くいかず、独断専行していたことには変わりない。

 チームの3要素として「共通の目的」「協働の自発性」「コミュニケーション」があるが、このチームの形成に、大地は失敗してしまったと自覚することができた。

 彼の成長は自分に矢印を向け、失敗を認め、問題をさらけ出すことができたことだ。これも健太郎からの教訓だ。

 美咲もまた、大地と協力してこの困難な状況を乗り越えるために、彼女自身の対人スキルと影響力を駆使した。

 大地と美咲は社内の不和と裏切りの兆しに立ち向かい、新たな戦略を進めることになった。彼らはこの挑戦を通じて、ビジネスの世界で生き残るための新たな教訓を学び、お互いの絆をさらに強固なものにしていった。

 そのはずだった・・・。少なくとも大地はそう感じていた。

裏切り者の正体がまさかの健太郎・・・。
ライバルであり、信頼してた仲間だっただけに、大地のショックは計り知れない。
次回、第十六話『 裏切りの証拠 – 揺れる心 – 』
ついに決定的な証拠が見つかる!!