体験比較優位論|マーケティングの基本その4
現代の消費者は、購入する商品やサービスに対して非常に多様な選択肢を持っています。
そのため、彼らがどのようにして商品やサービスを選び、どのような基準でリピートするかを理解することが、マーケティング戦略を成功させる上で重要です。
今回は、消費者がサービスを評価し、リピートや離脱を決定する際の心理的メカニズムに着目した「体験比較優位論」について解説します。
この理論は、消費者が過去の体験を基にサービスを評価し、リピートするかどうかを決めるというものです。
これに基づくマーケティング戦略は、顧客が再びサービスを選ぶように設計されるべきです。
目次
ユーザーは、過去の類似の体験と比較して、優劣を頭の中でつける
消費者は、商品やサービスを利用する際、過去の体験と現在の体験を無意識に比較しています。
これを「体験比較」と呼びます。
例えば、消費者がカフェでコーヒーを注文する際、以前訪れた別のカフェでの体験と比較し、味やサービス、価格などの要素を頭の中で評価しています。
この比較は、消費者の購買行動に大きな影響を与えます。
過去の体験がポジティブであれば、それと同等以上の体験を期待し、逆に過去の体験がネガティブであれば、それを避ける傾向があります。
つまり、消費者は常に、過去の体験との比較によってサービスの価値を判断しているのです。
例えば、あるレストランでの食事が非常に満足のいくものだったとします。
次に別のレストランで食事をした際、その体験が前回よりも良くなければ、消費者は「前の店の方が良かった」と感じ、その結果、次回も前のレストランを選ぶ可能性が高まります。
このように、消費者の中には過去の体験を基にした基準が形成され、その基準と現在の体験を比較しているのです。
マーケティング戦略としては、顧客の過去の体験を超えるような体験を提供することが鍵となります。
そのためには、商品やサービスの質を常に向上させ、顧客が前回以上に満足するような取り組みが必要です。
消費者が過去の体験と比較して「今回の方が良かった」と感じることで、ブランドに対するロイヤリティが強化されます。
ユーザーは支払った対価やコストと比較して、サービスの満足度を図る
次に、消費者は商品やサービスに対して支払った対価やコストと、実際に得られた体験を比較して満足度を評価します。
これは、コストパフォーマンスや価値対効果と呼ばれる概念です。
消費者は、お金や時間を投資した際、その見返りとしてどれだけの価値が得られたかを厳しく評価します。
例えば、消費者が高級レストランに行った場合、支払った金額が高い分、料理の質やサービスに対して高い期待を持ちます。
この期待に応えられなかった場合、消費者は「これだけのお金を払う価値がなかった」と感じ、満足度が下がります。
一方で、同じレストランで支払った金額以上の価値を感じた場合、満足度は非常に高くなり、次回も同じ店を利用する可能性が高まります。
マーケティングの観点からは、顧客が支払った対価に見合った、あるいはそれ以上の価値を提供することが極めて重要です。
特に、価格競争が激しい業界では、単に価格を下げるだけでなく、サービスや商品の付加価値を高めることで、消費者が得られる体験をより豊かにする必要があります。
例えば、あるアパレルブランドが高品質な商品を提供するだけでなく、優れたアフターサービスや会員向けの特典を提供することで、顧客は価格以上の価値を感じ、満足度が高まります。
支払ったコストと得られた体験のバランスを意識し、付加価値を提供することが、顧客のリピートを促進する大きな要素となります。
心の中のランキングで上位3位以内に入ると必ずリピートする
消費者は、無意識のうちに過去の体験を元に「心の中のランキング」を形成しています。
つまり、同じジャンルの商品やサービスを複数利用した場合、それらを頭の中で順位付けし、どの体験が最も良かったかを常に評価しています。
このランキングで上位3位以内に入ると、消費者は必ずと言っていいほどリピートするという特性があります。
例えば、ある人が毎朝カフェでコーヒーを購入するとします。
この人が複数のカフェを利用した中で、特に満足度の高いカフェを頭の中で自然にランキングします。
その際に、上位3位に入っているカフェは「また行こう」と考えるのに対して、4位以下にランクインしている店は「次は別の店に行こう」と考える傾向があります。
この「心の中のランキング」において、上位に位置づけられるためには、顧客が期待している要素をしっかりと捉え、期待以上の体験を提供することが求められます。
また、サービスの質だけでなく、店の雰囲気やスタッフの対応、価格とのバランスなど、総合的な体験価値が評価基準となるため、細部にまで気を配ったサービス提供が重要です。
さらに、ランキング上位に入るためには、単に一度きりの良い体験を提供するだけでは不十分です。
一貫した質の高いサービスの提供が、顧客の心の中で信頼を築き、ランキング上位に入るための鍵となります。
比較して優位でリピート、劣位だと離脱可能性が高まる
顧客が過去の体験と比較して現在の体験が優れていると感じた場合、次回もその商品やサービスを利用する可能性が高まります。
逆に、比較して劣っていると感じた場合、顧客はそのブランドやサービスから離脱する可能性が高くなります。
例えば、あるオンラインショッピングサイトで以前は迅速な配送や優れたカスタマーサポートが提供されていたのに、最近は配送が遅れたりサポート対応が悪化していると感じた場合、顧客はそのサイトを利用する頻度を減らし、他のサイトに移行することがあります。
このように、顧客は常に過去の良い体験を基準にして現在のサービスを評価しているため、期待を下回るサービス提供が続くと、離脱のリスクが高まります。
顧客がリピートを決定する要因は、過去の体験と現在の体験を比較した際に、優位であるかどうかにかかっています。
顧客は、以前よりも良い体験が得られるか、少なくとも同等の質が保証されるかを重要視しています。
そのため、サービスの質を一貫して保ち、常に顧客の期待を上回る努力が必要です。
また、顧客が離脱しそうな兆候を察知した場合、迅速に対応し、顧客に対して個別のフォローアップや特別なオファーを提供することで、離脱を防ぎリピートにつなげる施策を講じることが効果的です。
まとめ
体験比較優位論は、消費者が過去の体験と比較して現在のサービスを評価し、リピートや離脱を決定するメカニズムを理解するための重要な理論です。
消費者は過去の類似の体験や支払った対価を基にサービスの優劣を判断し、その体験が心の中のランキングで上位に入ると、リピートする傾向があります。
一方で、過去の体験と比較して劣位だと感じた場合、顧客の離脱可能性が高まります。
マーケティング戦略としては、常に顧客の期待を上回る体験を提供し、過去の体験と比較して優位なポジションを維持することが重要です。
これにより、顧客はブランドに対するロイヤリティを持ち、リピート率が向上します。
顧客の心の中でのランキング上位に入るためには、サービスの一貫性や品質向上、付加価値の提供が鍵となるでしょう。
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