スタッフのための金融リテラシー講座【第5回】資産形成と運用、そして使用
目次
老後2000万円問題は、2017年コロナ以前のデータ
金融庁の報告書で、老後資金2000万円不足するといったデータですが、2017年の家計調査を基に作成されました。
公的年金年収が夫婦二人で22万円ほどになり、一般的な支出平均が27万円ほどとなるため、1か月5万円程度不足するといったものです。
この前提には、無理があります。
22万円月間収入の世帯は、22万円以内で家計を賄うため、不足しません!
これは2000万円借り入れが可能であれば、2000万円不足するといった前提で成り立つ話です。
現実的な収入をみて、金融機関は貸し出しを行いますので、実際には不可能です。
貸し出したお金が焦げ付いてしまいます。
親族や家族に借入するとしてもせいぜい50~300万円ほどで、それ以上貸そうとする親族・家族は現れないでしょう。
子どもに毎月5万円の仕送りをさせるとするならば、子供に30年間で2000万円の負担をかけることになります。
お金はあるところにありますので、可能な世帯もあるでしょうが、1世帯20万円で暮らせないとなると、よほどインフレが進行しているのか、金銭の管理ができていないかのどちらかになるでしょう。
2023年のデータでは不足額は減少する。
2023年のデータでは、不足額は37916円と4万円以下、30年間で1368万円となります。
日銀のインフレ目標2%を考慮して計算すると、10年後には1668万円、20年後には2033万円不足することになります。
実際には公的年金には、物価スライド制度があり、高齢者は年齢の増加に伴い支出も減少していきますので、不足額は年々低下していきます。
月々の赤字は65~69歳で4.1万円。
85歳以上では1.1万円と大きく異なります。
2%の物価向上を加味しても、引退後30年間の必要資金は1144万円ほどとなります。
2人以上の高齢者の貯蓄額の中央値1604万円と基準とすれば、46年間以上生活することができます。
金融資産を取り崩しながら、使用する
金融資産は現金や貯金だけではありません。
リスク資金の投資信託などを取り崩しながら生活をするといったスタイルが今後主流となっていくでしょう。
金融資産取り崩し4%ルールというものがあります。
4%ルールとは、毎年資産運用額の約4%を生活費として切り崩していけば、30年以上が経過しても資産がなくなる可能性は非常に低いという内容です。
長期のリスク資金の平均リターンが4~5%程度ですので、元本が減らないということもあります。
先ほど挙げた中央値での金額でシュミレーションしてみましょう
1604万円×4%=64万円となりますので毎月5.3万円の取り崩しがルールの範囲以内となります。
65歳から毎月5万円を取り崩すと105歳までの運用が可能となります。
三菱UFJアセットマネジメント:取り崩しシミュレーション
投資は長期積み立てが一番リスクを分散してくれます。
その積み立てた資産を取り崩していくことが、GOALとなります。
DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール
お勧めの本でもご紹介させていただいたお金の貯め方ではなく、使い切り方に焦点を当てた本です。
童話のありとキリギリスでは、ありは死ぬまで働くのか?いつ楽しむのかといった疑問が残ります。
もちろん、誰もが生きるために働かなければいけません。
だが、ただ生きる以上のことをしたいとも望んでいます。
「自己の望む人生を」がこの本のテーマです。
ただ生きるだけではなく、十分に生きる。
経済的に豊かになるだけではなく、人生を豊かにするための方法を考える。
お金に振り回される人生よりも、お金との距離感を適切に生きよう。
まだ健康なうちに、体験や経験にお金を使おう。
子供には死ぬ前に与えよう。
60歳以降は資産の取り崩しをはじめよう。
資産形成と資産の取り崩しはセットで考えること、自分の望む生活の中で、本当に大切にしたいものは何か?我慢だけの人生も、不安を抱えながら生きる人生も誰も望んではいません。
無計画に生きることもそれは、違うでしょう。
お金と上手に距離感を取りながら、楽しみながら資産形成と運用、そして使用を考えていきましょう。
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