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2024.08.18

スタッフのための金融リテラシー講座【第4回】住宅ローン繰り上げ返済派と新NISAへ投資派の争い

余剰資金の使い道は!?返済・投資・それとも現金派!?

政府が貯蓄から投資へ舵を切り新NISAが2024年よりスタートしました。

生涯に渡って1800万円の非課税枠がありますので、大幅な政策優遇策となっています。

要約すると、公的年金だけでは破綻のリスクは避けられない、自己防衛のために若いうちから資産形成してくださいねというメッセージです。

前回までの金融講座でもお話したように、投資には優先順位が必要です。

公的年金→iDeCoなどの確定拠出年金→新NISA→その他の投資の順番が基本的にはセオリーになります。

もっとも、家族構成や収入によっては、変動しますので、注意しておきましょう。

生活防衛資金(生活費の6ヶ月~1年分)や使用用途の決まっていない現金を保有することがあまりお勧めできません。

定期預金が年利4%ほどついていたバブル期ならいざしらず、現在の金利を考えるとインフレと共に現金価値が目減りしていくからです。

今回の金融講座は、余剰資金を住宅ローンは繰り上げ返済をすべきかそれとも、投資で借入金利以上の利回りを期待するのかについてです。

ネットやYouTube界隈でも、この2つの論争はつきることがありませんので、解説していきます。

住宅ローンを繰り上げ返済するなという意見も根強くある

住宅ローンを繰り上げ返済するな派の論拠として大きく3つあります

余剰資金は投資に回した方がよい

住宅ローン減税額が減ってしまう

住宅ローンを返済しきってしまうと団信の保険がなくなる

例えば、3700万円の借入をして金利0.525%、35年ローン残り返済期間32年
46歳の場合、返済が完済する年齢は78歳です。

昨今は、婚姻の平均年齢は男性が32歳ほど女性は30歳ほどです。
20年前と比較して5歳ほど後ろ倒しになり、住宅取得価格も40歳前後なっています。

したがって返済完済時の年齢も平均71歳と高年齢化しています。
健康寿命が尽きるころにようやく返済が終わるというわけです。

現在の定年年齢は65歳、そこから平均で6~7年間、事例では10年以上の返済期間があります。

公的年金の受給額平均は、夫婦2人合わせて、22万円程度と言われています。
ここから10万円前後の住宅ローン返済があると、かなりきつい生活になるだろうと安易に予測できます。

①:余剰資金は投資に回した方がよいの根拠として

積み立て投資は15年以上継続して行うと平均4~5%に収束するという予測。
返済の金利は0.525%ですので、平均利回りよりもずっと安価です、この程度の利回りは獲得できそうですね。

ただし投資の含み益はあくまでもデータなので、利益を確定しなければなりません。
為替変動やアメリアの経済情勢、政治情勢などで1日単位で上下します。

投資の世界は7年周期で大きな変動があると言われていますので、不確実性が高いと言わざるえません。

②:住宅ローン減税額が減ってしまう

現行の住宅ローン減税は、年末の借入金残高(3000万まで)×0.7%が税額控除されます。
3000万×0.7%ですので、21万円所得税が戻ります。

元利固定の返済方法とすると、3800万円借入残高がある場合は、1年間の金利は20万円程度になりますので、金利分は補助されるということになります。固定資産等も考えたら益税は発生しません。

ここで重要なポイントは、繰り上げ返済することで貰える予定だった減税分と銀行に支払う金利の減少分を比較することです。

③:住宅ローンを返済しきってしまうと団信の保険がなくなる

住宅ローンの団体信用生命保険(団信)は、住宅ローンの返済中に万が一の場合に備える生命保険で、通常は住宅ローン残高と同額の保険金が支払われます。

しかし、繰り上げ返済をしている場合、返済額に応じて保険金が減額することがあります。
完済後、ガンなどが発覚してしまうと、治療費などで困ることがあるということです。

この点は、生活防衛資金でバッファ管理しておけば大丈夫そうですね。
団信は利用者側の保険ですが、どちらかというと返済をしてもらいたい銀行側の保険のように思えます。

このように繰り上げ返済しない派閥の根拠は、メリットもあればデメリットもあるのです。

一方で繰り上げ返済のメリットとして以下のようなものが挙げられます。

銀行に支払う金利の総支払を抑制できる。投資における利確と同じ効果

引退後の生活の支出を抑えることができ、将来不安の軽減になる

変動金利が上昇した場合の総支払額を抑えることができる

繰り上げ返済の方法は、返済軽減か返済期間短縮型の2種類

住宅ローンの繰り上げ返済には、返済期間を短縮する「期間短縮型」と、毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」の2種類があります。

期間短縮型」は、毎月の返済額はそのままで返済期間を短縮する方法です。

減額された元金を毎月の返済額を変えずに元利均等で返済することで、返済期間を短縮できます。
期間短縮型は利息の軽減効果が高く、総返済額を減らすことができます。

返済額軽減型」は、返済期間はそのままで毎月の返済額を減らす方法です。

毎月の返済額が減ることで、家計や精神的にも効果が大きいと考える方もいるでしょう。
また、転職や働き方の変更で収入が減少する予定がある場合など、家計が赤字になるのを防ぐためにも有効です。

繰り上げ返済を行う際は、額が大きいほど、また時期が早いほど効果は高くなります。

また保証融資型の保証料が返金されるケースもあります。
返済期間が短くなることで戻ってきますので、事例の場合1年短縮できれば2万円、10年で20万円程度、返金されます。

事例のケースで「2024年から毎年100万円繰り上げ返済する場合」

1回の繰り上げ返済で35万円ほど金利の支払い総額が減少します。
年々利払い総額の減少額は減っていきます。

新NISAとは違い、支払った段階で支払総額が減るので、利確した効果と同じです。

注意しておきたい点は、支払った時期が早ければ早いほど減少額が大きくなる点です。
時間には不可逆性がありますので、過去にさかのぼって支払うわけにはいきません。

60歳や65歳の引退前に返済を完済できない場合は、借入から間もないうちに、期間短縮型で繰り上げ返済を行い、60歳に近づくにつれて、返済軽減型に変更すると、引退後の月の支出を抑えることができます。

事例のケースで「47歳から54歳の8年間100万円づつ期間短縮型の繰り上げ返済を毎年行った場合」

78歳完済から70歳完済に期間が短縮されます。
55歳から60歳の6年間を返済軽減型で毎年100万円づつ行うと月の支払いが10万円ほどから7万円に軽減されます。

60歳で早期引退を行うと、60歳から65歳の間の5年間は公的年金がありませんので、極力支出は抑えたいものです。

余剰資金が豊富ならば期間短縮型返済で60歳の完済を目指したいものではありますが、その場合は14年間で2500万円ほどの繰り上げ返済が必要となります。

1年間で180万円ほどとなりますので、支出においてかなりのウェイトを占めることになるでしょう。

しかし、期間短縮型である程度期間を短縮させた後に、軽減型の繰り上げ返済とで組み合わせることで返済期間とローン支払い額をコントロールすることができます。

この場合は14年間で1400万円の繰り上げ返済となりますので、流動性資金の流出を抑制することができます。

これならば、iDeCo、NISAに資金を投資できながら、返済金利も抑えるバランスを取ることができるでしょう。

このように老後の生活をイメージしながら、現在の余剰資金の振り分けのバランスを考えることで、長生きリスク、将来の不安の解消、現在の余暇の充実を図っていきましょう。

投資の基本はリスク分散、全世界を買え。

投資にはリスクがつきものです。

為替リスク、アメリカの経済動向、大統領選挙、失業率、企業の業績などなど、長期的に見れば成長率平均は5%に収束されますが、一時的見れば10~15%ぐらいは急に下落することが多々あります。

利益見込みで一喜一憂するぐらいならば、余剰資金を一部、住宅ローンの繰り上げに回し、金利総額を抑えておくことは間違えではありません。

つまり、「投資する」、「返済する」、「投資先を分散する国内/国外/株式/債権/リートなど)」
投資の基本はリスク分散です。全世界を分散して買えという格言があります。

住宅ローンの繰り上げ返済も実はそのリスク分散の一部にすぎません。

現金だけで余剰資金を保有する場合と比較すると

iDeCoで500~600万円

NISAで500~800万円

金利の利払い総額で300万ほど

合計で1300万円~1700万円ほどの差がつくのです。

もちろん、リスクを取ることが前提ですが、リスク分散することでそのリスクを低くすることができます。

余剰資金の使い道として、投資と住宅ローンの繰り上げ返済のどちらが良いかは、個々の状況によります。

長生きリスクや将来の不安を解消しながら、現在の生活の充実を図るために、バランスの良い資金運用を考えましょう。


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