トランプ大統領から始まる国際経済の新秩序|制度疲労とOS的アップデートの必要性


制度が悪いのではない。
アップデートされない制度が、時代遅れの混乱を生んでいる。
WTOやIMF、世界銀行などの国際経済システムは、いまだに戦後の“黄金時代仕様”のまま。
デジタル化・多極化が進む現代において、それらは対応できているのか?
トランプ大統領の登場が浮き彫りにした“制度疲労”と、いま求められる新たなルール設計の視点を考察します。
目次
戦後に設計された「黄金時代仕様」の制度


IMF、WTO、世界銀行──
これらの国際経済制度は、1940〜50年代に設計されたものであり、
『基本はドルを中心とした秩序』
『米英を軸にした白人中心のルール』
『通信も物流も今ほど高速ではなかった時代』
を前提にしています。
当時は合理的でも、今のデジタル・グローバル・マルチポーラ時代とは、もはや釣り合いが取れていないのです。
グローバル化は進んだのに、制度はそのまま


GAFAのようなデジタル超企業が国境を無視して動く現代に、課税ルールは追いついていません。
また、中国のような“国家資本主義モデル”を想定していないWTOルールでは、公平性が崩れます。
為替操作・金融緩和・付加価値税など、新しい“見えにくい武器”への制度対応が未発達の状態です。
「新しい経済の現実に、古い制度を無理やり当てはめている」ことが混乱を拡大していると考えられます。
本来なら制度は「OS」のようにアップデートすべき


AppleのiOSやWindowsのように、制度も定期的なアップデートが必要です。
ところが、国際制度は「一度作ったら放置」されがちです。
アメリカですら、議会や多国間調整が面倒で、“制度を使う”より“制度を壊す”ほうが早いという逆説が生まれています。
制度のアップデートができないと何が起きるか?
トランプのように「力による交渉」へと揺り戻され、保護主義や制裁の応酬が日常になる。
多国間の協調より、“ブロック経済”が優先され、各国は独自の「内向き制度」に閉じこもっていく。
世界が、だんだんと“つながらない方向”へ進んでしまい、制度が変えられなければ、いずれ誰かに壊される。
それが、私たちの選択しなかった「現実」かもしれません。
ではどうすればいいのか?


制度を「聖域」ではなく、時代に合わせて更新できる“道具”と捉え直すこと。
そして、貿易・金融・税制といった枠組みそのものを、デジタル時代に最適化する必要があります。
たとえば、ケインズが描いたような協調的な制度設計の理想と、トランプが体現した現実主義的な交渉のダイナミズム。
この両方を踏まえた、“ポスト制度疲労時代”の新しい国際ルールづくりが求められています。
制度疲労の時代に、私たちがすべきこと
制度を壊すのではなく、制度をリデザインし、定期的にアップデートしていくこと。
それは単なる技術論ではなく、未来の世代に手渡す「平和のインフラ」を、今の私たちが築いていくことなのかもしれません。