自己啓発のおすすめ本シリーズ|『エクスペリエンス・エコノミー(The Experience Economy)』


『エクスペリエンス・エコノミー(The Experience Economy)』は、B. Joseph Pine IIとJames H. Gilmoreが1999年に発表した、「体験」が経済の主役になるというパラダイムシフトを提唱した名著です。
モノの価値からサービスへ、そして“体験”へ──
経済はその中心軸を、顧客の感情や記憶へと移しつつあります。
たとえば、あなたがスターバックスで「なんとなく居心地がいい」と感じるあの感覚。
それは偶然ではなく、企業がデザインした“体験”なのです。
経済進化の4つのステージ


ステージ | 価値の源泉 | 例 | 特徴 |
---|---|---|---|
商品(Commodities) | 原材料・資源 | 小麦、鉄など | 差別化困難・価格競争 |
製品(Goods) | 加工品 | パン、車など | 品質と機能性 |
サービス(Services) | 利便性 | カフェでパンを出す | 時間短縮・効率性 |
体験(Experiences) | 感情・記憶 | スタバ、ディズニー | 個別体験・感情価値 |
さらに近年では、「変容(Transformation)」という第5段階が注目されています。
これは一時的な体験にとどまらず、顧客の“人生そのもの”を変える体験──たとえば教育、健康、自己実現など──を指します。
消費の目的が“満足”から“変化”へとシフトする中で、企業やサービス提供者は、人の内面や価値観に働きかける“人生設計のパートナー”としての役割が求められ始めています。
体験価値経済とは何か?


商品やサービスはコモディティ化しやすいですが、体験は一人ひとりの記憶に深く刻まれ、かけがえのないものになります。
つまり、他の誰も簡単に真似できない独自性が生まれ、差別化の大きなポイントになるんです。
体験はただ提供するだけでなく、「演出される」ものです。
だから企業は、まるでステージの舞台監督のように、その場をつくり出す存在になるんですね。
お客さまは、“記憶に残る物語”を買っています。
その体験の積み重ねが、価値観や考え方、行動や習慣へとじわじわと影響を与えていきます。
そして、過去の体験と比べながら、商品やサービス、体験を選ぶかどうかを決めているのです。
グループの構想との一致点


『エクスペリエンス・エコノミー』 | PDRM構想 |
---|---|
体験は経済価値の中心になる | 感情を記録・分析・推薦する新経済圏を設計 |
体験は記憶に残るから価値がある | 感情変化ログで“価値ある記憶”を資産化 |
顧客は演出された場を体験している | シナリオ設計・体験ストーリーデータの可視化 |
変容こそ最終価値 | 感情に基づく“自己理解”と人生QOLの向上 |
応用可能なビジネス設計視点


コンセプト | 業務改善アイディア |
---|---|
ステージング(演出) | UXを“物語化”し、感情変化が起きる導線設計 |
記憶のためのデザイン | 「心が動いた瞬間」をログ化し、再体験推薦へ |
価格の変動要因は感情 | 同じ商品でも“どの体験文脈で買ったか”で価値が変わる |
体験の個別化 | 感情ログに基づく「パーソナライズド・エクスペリエンス」提供 |
現在、経済は「モノ」から「コト」へとシフトしつつあります。
モノやコトへの消費が、その先のQOL(生活の質)の向上、つまり「変容」を重視する時代も間もなく訪れるでしょう。
データを活用することで、体験 × 感情ログ × リコメンドが融合し、“個人専用のオリジナル体験”を生み出せるようになります。
観光、エンターテインメント、教育、医療、恋愛、家族、金融など、あらゆる業界で応用可能です。
企業は「ステージ(舞台)を設計する存在」となり、経済活動の中心は、自らの体験データを活用する個人の時代へと移っていくでしょう。
ぜひこの本を読んだあと、あなた自身の最近の体験を3つ思い出し、感情を5段階で評価してみてください。
📚 日本語で読める関連書籍
- 『体験を売る時代 エクスペリエンス・エコノミー入門』(ダイヤモンド社・訳本)
- 『体験価値マーケティング』(松井 剛 他)