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日本の成長戦略を描いている政党は?PEST・SWOT分析で読み解く国家経営と選挙の本質

選挙のたびに「減税します」「給付します」「支援します」という言葉が並びます。
でも、本当に問うべきなのは――

「日本は、これから何で食べていく国なのか?」という一点です。

企業経営と同じで、国家にも成長戦略が必要です。
今回は、その前提となる”考え方の軸”を整理してみます。

01

国家の運営も経営と同じ
日本という「会社」のPEST・SWOT分析をしてみる

「成長戦略を語る」なら、まずは現状把握からです。
日本を一つの企業《Japan Inc.》として、経営分析してみましょう。

PEST分析

観点 現状分析
P:政治 少子高齢化が急速に進行。社会保障費は右肩上がり。一方で、増税は政治的に困難。安全保障・地政学リスクは上昇し、エネルギー・食料の自給体制が弱点。
E:経済 長期低成長・円安基調。実質賃金は伸び悩み、内需は力不足。製造業の競争力は一部健在だが、裾野は縮小。外貨獲得力が構造的に弱い。
S:社会 労働人口減少・高齢化。教育水準は高いが、挑戦や失敗を避ける文化が根強い。都市集中と地方空洞化が進行。
T:技術 基礎技術力・職人技は世界トップクラス。一方、デジタル化・AI・プラットフォーム領域では後れ。技術を「事業化する力」が弱い。
結論(PEST):日本は「技術と人材はあるが、それを外貨に変換する仕組みが弱い企業」と言えます。

SWOT分析(内部環境)

分類 内容
Strength(強み)
  • 高い技術力・品質管理能力
  • 社会インフラの安定性
  • 治安・信頼・安全という無形資産
  • アニメ・ゲーム・食・文化などのIP資産
Weakness(弱み)
  • 原材料・エネルギーのほぼ全量を輸入
  • 意思決定が遅い(官民とも)
  • デジタル・AI分野での遅れ
  • 内需依存が強く、外貨獲得力が弱い
Opportunity(機会)
  • 世界的な脱炭素・再エネ投資の流れ
  • アジア圏の中間層拡大
  • 観光・医療・教育などの高付加価値サービス需要
  • 都市鉱山・海底資源という未活用資産
Threat(脅威)
  • 円安による輸入物価高
  • 中国・韓国・新興国との製造業競争
  • エネルギー供給リスク
  • 財政制約による投資余力低下
経営者目線での総括

このSWOTを見て、経営者ならこう判断します。
「この会社は、コスト構造が輸入依存すぎる。売上(外貨)を増やすか、仕入(エネルギー・資源)を内製化しないと持たない」

つまり、日本に必要なのは
✔ 外貨を稼ぐ主力事業の明確化
✔ エネルギー・資源の内製化・再設計
この2点です。
02

財務分析:BSとPL
日本という「会社」のPLを再定義して分析する

成長戦略を語る前に、まず決めなければならない前提があります。
国家のPL(損益計算書)を、何で構成するかです。

国家のPLは「税収」だけではない

日本のPLを、次の3つの収入源で整理します。

  • 税収
  • 保険収入(社会保険料)
  • 投資収入(資産から生まれる収益)
年間の主な収入(PL)
税収:約80兆円前後
社会保険料収入:約80兆円前後
投資収入(年金・外貨・日銀など):数兆〜10兆円規模(年によって変動)
合計:160~180兆円前後の年間収入

① 税収:経済活動の結果としての収入

税収は、個人所得・企業利益・消費といった経済活動の結果です。
つまり、税収を増やす = 経済が成長している結果であるべきもの

本来、税収は目的ではなく、結果です。
にもかかわらず、税率操作、一時的な増税・減税で税収を調整しようとするのは、企業で言えば値引きや価格操作だけで利益を出そうとする経営に近い。長続きしません。

② 保険収入:人口構造に依存する収入

次に、社会保険料。これは年金、医療、介護を支える重要な収入です。
しかし、この収入源には致命的な特徴があります。

👉 人口構造に完全に依存する
若者が減る + 高齢者が増える + 給与が伸びない
この条件下では、保険収入は構造的に伸びません。
むしろ、保険収入を増やす=現役世代の負担を増やすになりがちです。
これはPL改善ではなく、PLを無理やり維持している状態です。

③ 投資収入:日本は「弱い」のではない 投資収入が成長戦略と接続されていない

日本の投資収入は、決して悪くありません。

  • 年金(GPIF):世界最大級の年金ファンド。長期・分散・インデックス中心。実績としても安定した収益を確保
  • 日本銀行:国債・ETFなどの保有による収益。為替差益・評価益を含めれば国家の資産運用主体として機能している

日本は現在、約200兆円規模の外貨準備を保有しています。
これは国家BS上の極めて大きな金融資産です。

為替介入とは何をしているのか?

一般にはこう語られがちです。「円安を止めるため」「市場を安定させるため」
もちろん表向きは正しい。しかし、PL視点で見ると意味が変わります。

円安局面での為替介入とは
過去に安い円で取得した外貨資産、円安によって円ベース評価額が膨らむ。その一部を円転する
これは企業会計で言えば、含み益のある外貨資産を売却して利益を確定させる行為
つまり――為替介入は一種の「利益確定」です。

支出(固定費)との関係はどうか?

  • 社会保障給付費:約130兆円規模
  • その他(教育・防衛・公共事業・行政):数十兆円
  • 国債の利払い費:約9〜10兆円/年
👉 固定費が売上の大半を占める成熟企業

PLは回っているが、利益(=将来投資余力)が出にくい。

日本という「会社」のBS(貸借対照表)

項目 内容
資産(Assets) 政府・日銀・公的部門の資産 約 1,000〜1,200兆円規模
主な流動資産:外貨準備 約200兆円、政府預金・短期金融資産、日銀の保有資産(国債・外貨・ETFなど)
規模感として数百兆円レベルの高流動性資産
実物資産(国土・インフラ・技術・知財):金額化は困難だが、超巨大
負債(Liabilities) 国債残高 約 1,100兆円
その他政府債務(短期国債等)
負債も巨大だが、円建て・国内保有が中心
日本の国家BSは
・「資産も負債も巨大」
・「レバレッジが高い」
・「倒産しないが、身軽ではない会社」

日本には「BSに載らない巨大な資産層」が存在する

  • 家計金融資産:約2,000兆円+
  • 企業の内部留保:約600兆円超
  • 👉 合計すると2,500兆円規模
資産の三層構造

第一層:公的BS(直接使える)外貨準備・年金・日銀資産
第二層:準公的・制度接続BS 政府系金融・公共インフラ・のれん
第三層:隠れ資産(民間BS)家計金融資産・企業内部留保
👉 日本の強さはこの三層構造にある。

03

プライマリーバランスとは何か?意味のない指標か?

プライマリーバランス(Primary Balance)とは、
「借金の利息を除いた、国の収支」です。

PB =(税収+保険料などの収入) −(政策経費)
※ 国債の利払い費は含めない

なぜ「利払いを除く」のか?

理由は一つ。
「今の政策運営そのものが、黒字か赤字かを測る指標」にしたいからです。

企業で例えると、
営業利益 = 本業の儲け
支払利息 = 過去の借金の後始末
PBは、国家版の「営業キャッシュフロー」に近い指標です。

投資収入を除いて意味ある?

投資収入を除いたPBは、”限定的には意味があるが、国家経営の指標としては不十分”
① 企業経営では、投資収入を除いて評価しない
② 日本は「投資収入を生む主体」をすでに持っている
③ 投資収入を除くと、成長戦略が評価不能になる
PBは、運転席のハンドルではなく、メーターの警告灯にすぎない

方向を決めるものではない
成長戦略を描く指標ではない
国家の価値創造力を測れない

本来、問うべきはPBではなく、「この国は、投資収入を”意図的に伸ばす設計”を持っているか?」です。
04

ではどの政党が上記を踏まえ、成長戦略を描いているのか?

政党 PEST認識 SWOT運用 PL(損益) BS(貸借) のれん 総合評価
自由民主党 ○ 現実的 △ 守るが変換弱 △ 現状維持 ◎ 壊さない ◎ 最重視 保全型経営
日本維新の会 ◎ 非常に正確 △ W削減偏重 ◎ 社保改革で改善 △ 自然改善待ち △ 条件付き 構造改革型(CFO)
国民民主党 ○ 経済視点良 △ PL特化 ◎ 手取り改善 △ 言及不足 ○ 毀損小 PL改善型
公明党 ○ 中道 ○ 安定志向 ○ Sを壊さない × 財源不足に陥る ◎ 国内信認 安定装置
立憲民主党 ○ 中道 △ 社会偏重 △ 調整止まり △ 再分配中心 ○ 国内寄り 調整型
れいわ新選組 △ 社会重視 × T無視 ○ 短期刺激 × 軽視 × 毀損大 短期需要型
日本共産党 × 国際軽視 × S否定 × 再分配のみ × 公私混同 × 信用弱 国家経営不適
チームみらい ◎ 立体的 ◎ S→O変換 ◎ 摩擦削減+投資 ◎ 質的運用 ◎ 更新設計 成長経営型
重要な視点
耳障りのいい減税や補助金・福祉などの政策は、短期的な目線のみで、国家の財政を破綻させ、持続的な運営ができなくなる可能性があります。
国家の規模や人口動静から考え、支出をコントロールしなければなりません。しかしながら次の飯のタネのために投資のための支出は不可欠です。
また、支出を抑えるための投資(AIによる効率化や人的リソースの活用)なども重要でしょう。
チームみらいが選挙終盤にかけて、比例の支持を伸ばしている理由もそのあたりにあるのでしょう。
05

メディアやSNSの選挙情勢特番はもっと国家論にフォーカスしたほうがいいよ

もっと「国家論」にフォーカスすべきだ―― いい加減、ワイドショーから卒業せよ

選挙期間になると、テレビもSNSも一斉に「情勢分析」を始めます。しかし、その中身はどうでしょうか。誰が失言したか、どの党が伸びているか、街頭インタビューの切り抜き。炎上ワードの拡散。正直に言えば、これは政治報道ではなく娯楽番組です。

問題は「浅い」ことではない
「国家を扱っている自覚がない」ことだ

政治は本来、

  • 国家のPL(どう稼ぎ、どう配るか)
  • 国家のBS(何を持ち、何を守るか)
  • 信用=のれん(何を失うと終わるか)

を決める行為です。
それを、「どの党が優勢か」「空気はどうか」だけで消費するのは、上場企業の決算説明会を、社長の服装だけで評価するのと同じ。

なぜ日本の選挙報道はワイドショー化するのか

理由は簡単です。国家論は難しい、数字を出すと批判される、視聴率が取れない
しかし、それは逃げです。本来メディアがやるべきなのは、

  • 各党の国家観の違い
  • PL・BSの前提の違い
  • 「10年後にどうなっている国か」という設計図を翻訳して伝えること。

本来、選挙特番でやるべき問い

例えば、これだけでいい。

この党は日本の強み(信用・技術・資産)をどう使うのか?
この政策は恒常支出か、一時支出か?
財源とは税なのか、成長なのか、時間なのか?
この主張は国家ののれんを増やすのか、削るのか?

これを並べるだけで、情勢特番は一気に知的になる。

SNSも同罪だ

SNSも同じです。

  • 刺激的な言葉だけが回る
  • 文脈や前提が切り捨てられる
  • 国家論は「空気」に負ける

しかし、国家経営は空気でやるものではありません。国家は、感情で壊れ、理論でしか立て直せない。

有権者も「視聴者」を卒業すべき段階に来ている

ここが一番大事なところです。
ワイドショー的報道が成立するのは受け手がそれを求めているから
しかし日本はもう「雰囲気で選んでいい国」ではない
人口、財政、地政学。すべてが経営判断を要求するフェーズに入っています。

結論

選挙はイベントではない。国家の経営方針を決める株主総会だ。
メディアもSNSも、いつまでも「政局エンタメ」に留まっていてはならない。
国家論にフォーカスせよ。PLとBSを語れ。信用(のれん)の重さを伝えよ。
それができないなら、それはもう報道ではなくワイドショーです。

選挙期間中、政治をテーマにしたブログが多くなりましたが、いかがでしたでしょうか。

私が若い頃は、選挙といえば「投票率の低さ」ばかりが報道され、政治はどこか他人事として扱われていた記憶があります。

一方で、現在の若年層を見ていると、必ずしも無関心ではなく、「自分たちの未来に関わるものとして政治を捉え直そうとする姿勢」が感じられます。

声高な主張ではなく、制度や構造を理解しようとする態度そのものが、これまでとは違う変化だと思います。

このブログが、誰かに特定の答えを与えるものではなく、「この国はこれからどう進むのか」「自分はどんな未来を望むのか」を考えるきっかけの一つになっていれば幸いです。

政治は遠い世界の話ではなく、私たちの生活と、そして未来を形づくる”経営判断”そのものです。

国家論について語ることが、一部の専門家だけのものではなく、未来を考える当たり前の会話になることを願って、今回はここまでにします。

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