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2025.05.10

データで見る令和の日本経済 ー 江戸末期との意外な類似性

江戸時代末期の経済状況、米価安諸色高

江戸時代の終わり頃、経済は「米価安諸色高」という状況に直面していました。
米は主食であると同時に、流通の中心的な存在でもありました。

武士階級にとっては、米が給与の形で支給される収入源。
民衆にとっては、日々の食生活を支える主食。
商人にとっては、商品としての価値や投機対象。

時代が進むにつれて、米の生産量が増加し、供給過剰となり価格が下落。
これにより、米を収入源とする武士階級は経済的に困窮していきました。

一方で、物価の高騰(諸色高)には以下のような複数の要因が絡んでいました。

貨幣の改鋳や藩札の乱発による貨幣価値の下落。
金と銀の交換比率の違いから銀が海外に流出し、国内の正金貨幣量が減少。
嗜好品や装飾品、演劇などの消費社会の発展。
諸藩が借入返済のために特産品を専売制にし、流通が滞ったこと。
商人の株仲間による一部商品の買い占めや価格操作。

これらの要因が複雑に絡み合い、経済に混乱をもたらしていました。

令和の日本経済状況

現代の日本経済は、長らく自動車などの輸出型産業が外貨を稼ぎ、内需を支えるモデルで成り立ってきました。
しかし、半導体や家電、PC、携帯電話などの分野では、かつてのような主力産業とは言えなくなっています。

代わりに、アニメ・コミック・ゲーム、日本食や日本酒、ブランド農作物や和牛などのカルチャー産業が成長を遂げています。
さらに、円安の影響でインバウンド旅行客の消費も増加しており、経済構造の変化が進行中です。

一方で、デジタル産業では大幅な赤字が続いています。
SNSやECサイト、サーバー、マーケティングオートメーションシステムなど、国をまたぐ取引は為替相場の影響を強く受けます。

現在の経済状況は、円安によるコストプッシュ型のインフレが進行中。
エネルギーや原材料費の高騰により価格が上昇し、中小企業では賃上げが追いつかず、実質賃金がマイナスとなっています。

【主要経済指標(2020~2024年)】

実質賃金:年平均2.5%減少

消費者物価指数:年平均2.8%上昇

円相場:1ドル=105円から150円台へ(出典:日本銀行統計)

要因は異なるものの、江戸時代末期と同様に、名目・実質賃金の低下と物価の高騰に苦しんでいる点で共通しています。

人口オーナス期による景気後退

現在の日本は、少子高齢化により社会保障費の増大や労働人口の減少といった問題を抱えています。
1970年代から始まった高度経済成長期は「人口ボーナス期」と呼ばれ、経済に好影響を与えてきましたが、現在は「人口オーナス期」に突入しています。

この状態では、労働力人口の減少により消費が低迷し、社会保障費の負担が増加するため、経済成長を阻害するとされています。

【データ(2024年現状)】

生産年齢人口比率59.5%(1995年は69.5%)

高齢化率29.1%(世界最高レベル)

社会保障費年間約130兆円(GDP比約25%)

労働人口の増加を図るため、定年退職年齢の引き上げや女性の労働市場での活躍が求められています。

また、デジタルトランスフォーメーション(DX)による労働効率の向上やAIによる人的労働の代替も検討すべき課題です。

デジタル社会では年齢に関係なく、若年層でも高齢者でも起業が可能となっています。

江戸期は明治維新で産業革命が起こった、令和は・・・

江戸末期の経済状況は、明治維新を契機に諸外国からの知識やビジネスが流入し、産業革命が起こることで一新されました。
もちろん、さまざまな問題を乗り越えながらの変革でした。

令和の時代も、明治時代と同様の革命が必要とされています。
具体的な成長戦略として、以下の点が挙げられます。

ビジョナリーカントリー
20~30年先を見据えた明確な国家ビジョンの策定。
環境、技術、社会システムなどの分野での革新的な目標設定。教育改革(STEM教育、生涯学習)やスタートアップ・エコシステムの構築。

デジタルトランスフォーメーション
AIによる生産性向上(労働生産性30%向上の可能性)やRPA導入による業務効率化(年間約20兆円の経済効果)。

グリーントランスフォーメーション
再生可能エネルギー比率を2030年に36~38%へ引き上げ、関連産業の市場規模を2030年に約90兆円規模とする。

令和は、江戸末期と同様の歴史的転換点の時代とも言えます。
今回の変革も、技術革新だけでなく、社会システム全体の再設計が必要です。
現代に適応した新たな経済モデルを構築することが求められているのです。