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インバウンド免税制度を問い直す|課税か免税かではなく「輸出証明型VAT」という第三の選択肢

インバウンド需要が急回復する中で、「免税制度はこのままでよいのか?」という議論が、改めて注目を集めています。
本記事では、免税制度の経済効果を整理したうえで、”廃止か維持か”という二択ではなく、第三の選択肢について考えてみます。
免税制度廃止が日本経済に及ぼす影響
― JSTO調査が示す数字の意味 ―
ジャパンショッピングツーリズム協会(JSTO)は、訪日外国人向け消費税免税制度(輸出物品販売場制度)について、「維持」と「廃止」を比較した独自調査を公表しました。
その試算によると、免税制度を廃止した場合、
年間の訪日客数:約160万人減少(▲4.5%)
免税対象カテゴリーの消費額:約3,645億円減少
GDP:約8,470億円減少
税収全体:約530億円減少
とされています。
この調査が示しているのは、免税制度は単なる「税の取りこぼし」ではなく、インバウンド消費を通じた経済刺激装置として機能しているという点です。
一方で、この数字はあくまで
・現在の為替水準
・現在のインバウンド成長局面
を前提にした推計であり、感情・口コミ・成長率の変化までは十分に織り込まれていません。
インバウンド消費に消費税を課税するメリットは!?
免税制度に対しては、経済効果とは別に、現場レベルで次のような問題が指摘されています。
① オーバーツーリズムの助長
・観光地の過度な混雑
・日本人観光客の敬遠
・体験価値の低下
② 転売・不正利用の温床
・国内転売
・名義貸し
・業者化した免税購入
現行制度では「国外持ち出し」を前提としているため、国内で転売された場合でも、消費税を課せない構造になっています。
③ 局所的なインフレの発生
・観光地の宿泊費
・飲食価格
・一部商品の異常な高騰
これらは全国平均の物価(CPI)には限定的にしか影響しませんが、体感的な不満は非常に大きいのが特徴です。
景気は人の気
― 局所的インフレが与える心理的インパクト ―
経済指標としてのインフレ率は、消費者物価指数(CPI)で測られます。
しかし実際の消費行動や観光需要を左右するのは、統計ではなく「ニュースになりやすい体験」です。
「京都のホテルが高すぎる」
「観光地のランチが3,000円」
「日本、もう安くない」
こうした局所的インフレの口コミは、
→具体的で
→写真・動画で可視化され
→感情を強く動かす
ため、全国的な物価上昇よりも、はるかに強い影響力を持ちます。
よく言われるように、景気は数字ではなく、人の気で動く
局所的な価格の歪みが「日本=コスパが悪い国」というナラティブに変わった瞬間、新規客の来訪も、リピーターの再訪も鈍化します。
原則課税 → 出国確認後に還付
― 輸出証明型VATという選択肢 ―
ここで重要なのは、「免税を続けるか、やめるか」という二択ではないという点です。
提案される第三の設計
原則課税 → 出国確認後に還付(輸出証明型VAT)
仕組み
外国人旅行者も、購入時は消費税を支払う
出国時に
・未開封
・国外持ち出し
・数量制限を確認
条件を満たした分だけ、消費税を還付
この方式のメリット
国内転売→ 消費税が戻らず成立しない
名義貸し・業者化→ キャッシュフロー的に排除可能
一般観光客→ 正しく持ち出せば不利益はない
つまり、転売・不正だけを構造的に排除できる制度です。
まとめ:論点は「課税の有無」ではなく「設計」
インバウンド消費への消費税課税は、全面免税・全面課税という単純な話ではありません。
重要なのは、経済効果を壊さず、不公平感を抑え、転売を防止し、悪い口コミを減らす制度設計です。
免税をやめるのではない。まず課税し、正しく輸出された分だけ返す。
この考え方こそが、インバウンド成長と国内消費者の納得感を両立させる、現実的な落としどころではないでしょうか。



