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2025.06.06

構造化する“人”の力(第3回)理念を動力に変える、“構造エンジニアリング”の技術

理念があるのに、なぜ組織は動かないのか?

「うちは理念があるのに、社員が共感していない」

「ビジョンを掲げても、現場には浸透していない」

そう悩む経営者やマネージャーは少なくありません。

ですが、それは理念やビジョンの質の問題ではなく、構造に落とし込まれていないことが原因です。

どれだけ立派な言葉を掲げても、それが日々の意思決定、行動、評価、習慣に結びついていなければ、理念は立てかけられた看板にすぎないのです。

理念は“構造化”されて、初めて機能する

ビジョンやパーパスを経営の中心に据えるには、次の3つの段階が必要です。

理念を機能させる3ステップ

  • ① 言語化する(共有可能にする)
    → 誰が聞いても理解できる、共通のことばとして定義する。
  • ② 構造化する(仕組みに落とす)
    → 人事制度、採用基準、育成計画、会議の設計、評価基準などに埋め込む。
  • ③ 可視化する(ふるまいに現れる)
    → 上司の言動、日々の選択、意思決定プロセスとして見える状態にする。

ここで“②”の構造化が抜け落ちると、ビジョンは抽象的なスローガンとなり、現場の実感を失っていきます。

人が“理念通りに動く”組織には、仕掛けがある

理念が“行動の構造”として浸透している組織の例

  • 会議の冒頭でビジョンに沿った意思決定を確認する
  • 評価項目に「パーパスに沿った挑戦」が含まれている
  • 1on1で“理念と自己の接点”を言語化する習慣がある
  • 制度設計が「目先の成果」よりも「長期的な貢献」に報いている

こうした仕掛けがある組織では、理念は“ポスター”ではなく、人を動かす“空気”として機能するようになります。

理念は、仕組みによって体現され、反復によって文化となるのです。

経営者に必要なのは“理念のエンジニアリング”

経営者が果たすべき最も重要な役割は、理念を構造として設計する“思考のエンジニアであることです。

理念を構造に落とすために、経営者が答えるべき問い

  • この理念を、どう評価制度に落とすか?
  • この価値観を、どの場面で問うか?
  • このビジョンを、行動レベルの習慣にどう変換するか?

この問いに、自分の言葉で答えられる経営者こそが、理念を語る資格を持っているのだと思います。

理念は、ただ掲げるものではなく、日々の構造やふるまいによってこそ、語られるべきものなのではないでしょうか。

「人が動く言葉」ではなく、「人が動く構造」を設計せよ

人は、理念に感動することはあっても、実際に動くのは仕組みによってです。

理念は出発点にすぎません。
仕組みに変換されてはじめて、力を持ちはじめるのだと思います。

経営とは、理念を人が動く仕組みとして設計していく営みなのではないでしょうか。

次回予告

次回はさらに行動面に踏み込み、“人が自然と動きたくなる組織”に共通する構造について解説します。

第4回|ナッジ経営:人が自然と動きたくなる場

心理・行動経済学の知見も交えながら、人が動く組織の空気のつくり方に迫ります。