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2025.05.27

人的資本時代の“組織構造とビジネスモデル”の関係性~「人を活かす設計」が競争優位を生む時代

人的資本が“経営資源”から“経営戦略”になった

これまで「人」は、資源やコストとして扱われることが多くありました。

しかし現在は、「人」こそが企業の持続的競争力の中核であり、経営そのものを形作る“戦略的資本”と見なされています。

そしてこの人的資本時代において、単なる組織改革ではなく、ビジネスモデルと連動した組織構造の設計が、企業の未来を左右するようになってきました。

なぜ“ビジネスモデルと組織構造”の連動が重要なのか?

旧来型の落とし穴

経営戦略はトップだけが考え、現場は“実行部隊”

組織図は固定、役職や部門が主語の意思決定

評価は“効率性”“従順さ”が基準

こうした構造では、柔軟で創造的な価値創造は難しくなります。

とくに生成AIやテクノロジーによって変化のサイクルが短くなった今、組織構造も「戦略に連動して動く柔らかい構造」でなければ、持続的な競争力は維持できません。

では、どのように組織を再設計すべきか?

以下のような視点で、ビジネスモデルと一体化した組織設計が求められます。

【視点1】「機能」より「価値創造単位」で組織を設計する

従来の組織構造|機能別の“縦割り

営業部
開発部
人事部

→ 部門ごとの役割分担が中心で、顧客体験や価値の流れは断片化されがち。

これからの組織構造|価値の流れを起点とした“横断型

プロダクト・サービス単位でチームを組成
機能を横断する「自律型チーム」が、1つの価値に責任を持つ

例:Spotifyの“スクワッドモデル”

プロダクトごとに編成された少人数チーム(スクワッド)

エンジニア、デザイナー、マーケターなどが横断的に所属

顧客体験の改善に直結する設計で、組織がビジネスモデルと連動

【視点2】権限分散と“戦略的余白”の設計

従来の意思決定構造|上意下達&報告ライン重視

指示・命令は上層部から
現場は“実行”に徹する
判断スピードが遅く、変化対応に弱い

これからの構造|目的ベースの“柔軟な意思決定

組織全体が「共通目的」を持ちつつ、現場には最適化する余白を残す
上層部は「方向性と原則」を示すだけ

各チームが状況に応じて判断し、行動できる構造へ

例:リクルートの「Will-Can-Must」フレーム

Will:社員がやりたいこと

Can:自分ができること・得意分野

Must:組織や事業にとって必要なこと

この3軸の重なりから個人の役割を定義し、「やりたいこと」が事業の方向に組み込まれる設計が、人材の自律性と事業の推進力を両立させています。

「すべてを決める」のではなく、決めないこと”を戦略的に残すことが、柔軟で強い組織の土台となります。

【視点3】人的資本データの活用で“構造の仮説検証”を行う

可視化が、構造改善の第一歩

エンゲージメントスコア
スキルマップ(業務対応力・強みの分布)
LTV(従業員の生涯価値)

こうしたデータを活用し、組織構造が「人の創造性や貢献度」にどう影響しているかを定量的に分析します。

構造の仮説”を検証し、必要に応じてピボットを

一度つくった組織構造を固定化しない

データから気づきを得て、柔軟に構造を見直す

変化の兆しに合わせて、早期に設計をチューニング

人的資本を“感覚”ではなく“数値と構造”で捉えることで、組織は進化のPDCAを回せるようになる。
経営の柔軟性は、データをもとにした構造の実験から生まれます。

【視点4】“働き方”は「組織戦略」そのものである

柔軟な働き方=人材戦略の中核

リモート勤務
ハイブリッドワーク
副業・パラレルキャリアの容認

これらは単なる制度ではなく、優秀な人材が集まるかどうか”を左右する組織戦略の一部です。

自律型人材”に選ばれる組織とは?

働く場所ではなく、「どう価値を生むか」にフォーカスできる環境
情報共有・評価制度・ナレッジ管理が明確で、自己管理がしやすい構造

例:GitLabの“完全リモート前提型組織”

全情報を社内外にオープン化(透明性の担保)

業務プロセスをドキュメント化し、いつでも誰でも参照可能

時間や場所に縛られず、「価値創出」に集中できる働き方を実現

こうした設計により、世界中から優秀な人材が集まり、組織としての競争優位が継続しています。

働き方の選択肢は、“働く人の質と多様性”に直結する。
制度設計=組織設計であり、働き方そのものが企業価値の源泉となる時代です。

結論|「人をどう活かすか」は「ビジネスをどう設計するか」と表裏一体

人的資本経営=“人を大切にすること”では終わらない。

それは、「人の力が最大化されるように、ビジネスそのものを設計し直すこと」です。

問うべき本質は──

組織の構造や仕組みは、人の創造性を引き出せているか?

人の力が発揮されるような設計になっているか?

変化の激しい市場に応じて、組織そのものを“再発明”できる柔軟性を持っているか?

人材活用ではなく、「人を活かす前提の構造設計」こそが、真の人的資本経営。
組織の進化は、制度や文化ではなく、ビジネスモデルと構造から始まります。