原付市場も電動化の波、世界のホンダは、アジア市場を守れるのか?


アジアの街角といえば、ひっきりなしに行き交うバイクの群れ。
その多くを占めてきたのが、ホンダをはじめとする日本メーカーの原付です。
しかし今、その“国民の足”が電動化の波に呑み込まれようとしています。
世界最大の二輪メーカー・ホンダは、軽自動車で国内トップシェアを誇りながらも、真の収益源は二輪部門。
ところが、電動化の加速と制度改革により、この収益基盤が大きく揺らぎ始めています。
果たしてホンダはアジア市場を守れるのか?
本稿では、その現状と日本が打つべき手を考えます。
目次
ホンダを支える「二輪の力」
ホンダは軽自動車販売で
国内シェア約35%
を誇ります。
しかし、ホンダを“世界企業”に押し上げたのは四輪ではなく二輪でした。
「世界で最も売れた二輪」としてギネス級の記録を持ち、アジアの通勤・通学・物流を支える「国民の足」となってきました。
現在もホンダの年間二輪販売は
約1,800万台。
営業利益のうち
6,000億円超(全体の約6割)
を二輪部門が稼ぐなど、まさにホンダの生命線はバイクにあります。
しかしながら、外部環境の変化により、ホンダの絶対的な王者の地位も危うくなっています。


二重の試練に直面するホンダ
米国の関税政策は四輪部門に 年間数百億円規模の利益減 をもたらしました。
さらに国内では 2024年の道路交通法改正により「50cc原付」クラスが廃止。
これまで日本の街角を支えてきた「原付一種から50cc」は消え、
排気量125ccデチューン
か
電動シフト
することになりました。
つまり、海外では 電動化の波、国内では 原付そのものの消滅 という二重の試練が到来しているのです。
ホンダが生き残るための道は二つ
-
趣味・スポーツ市場 ではガソリンバイクを維持
音や振動、改造文化はEVには代替できず、ここは依然として強い。 -
日常移動需要 はE-Bike・EVスクーターへ移行
台湾のGogoroのように「バッテリースワップ網を作る」か、日本でE-Bikeの法整備を進めるか。
今や国内シェアの 9割以上 のEVスクーターを支えています。
これは単なる車両供給ではなく、「インフラを制した者が市場を制する」ことを証明した事例です。
ホンダも「趣味バイクを守りつつ、インフラ戦略と制度戦略で移動需要を取り返す」ことが不可欠です。


中国・ベトナム・インドで進む電動化
中国
年間 3,000万台超 の二輪がすでに電動化。
大都市では ガソリン原付の新規登録禁止 が進む。
ベトナム
年間販売 300万台 市場。
VinFast の電動バイクが 2025年上半期だけで 前年比+500%増。
学生や通勤層の 3人に1人 がEVを選択。
インド
年間 1,960万台(世界最大) の二輪市場。
政府は 2030年に40%電動化 を目標に掲げ、
Ola Electric が急成長。
こうした国々では、「趣味需要」 は残る一方で、
通学・通勤・配送といった単純移動需要 は
ガソリンから急速に離脱しつつあります。


日本が打つべき手は「E-Bike規制緩和」
日本国内の原付市場はピーク時の 10分の1以下(約20万台規模) に縮小しました。
打つべき手は明確で、電動アシスト自転車(E-Bike)の規制緩和 です。
現行:24km/hでアシスト停止
改正案:35km/hまでアシスト+ヘルメット義務化
これにより「次世代の原付」をE-Bikeに位置づけ直し、アジア市場と同じ電動化の波に乗ることができます。
シマノ・ヤマハ・パナソニック・ブリヂストンといった国内メーカーが既に技術基盤を持っており、法改正ひとつで市場の主導権を取り戻せる 可能性があるのです。
シマノ(SHIMANO)のシェアと優位性
- 世界最大の自転車部品メーカー
- グローバル自転車コンポーネント市場で シェア6割以上
- 欧州E-Bike市場では Bosch・Yamahaと並ぶトップ3
- Bosch 約40%、シマノ 約20%前後のシェアを確保
ヤマハ(YAMAHA)のモーター優位性
- 1993年、世界初の電動アシスト自転車を市販したパイオニア
- 国内E-Bike用モーターユニットではトップシェア
- 欧州でもBosch・Shimanoに次ぐ存在
- 特にトルク型モーター に強み
近い未来、短距離移動市場は 電動アシスト自転車と電動バイク に二分化されていくでしょう。
日本の立ち位置の矛盾
日本には世界に誇れる二輪・自転車産業があります:
- ホンダ・ヤマハ:世界的な二輪メーカー
- シマノ:自転車部品で世界シェア約6割
- パナソニック・ブリヂストン:バッテリーや電動化技術に強み
しかし現実には、国内制度が保守的すぎて、この優位性を活かしきれていません。
50cc原付が消滅した今こそ、E-Bikeを「次世代原付」と位置づけるべきタイミングです。
E-Bikeの実用的優位性
- 取り回し:軽量(20〜25kg)でスクーター(50kg以上)より扱いやすい
- 駐車場:自転車扱いで駐輪場を利用可能。都市部では大きなメリット
- 安全性:速度が抑えられ、ペダルでの制動も可能
都市環境・高齢化社会の日本には、E-Bikeが電動スクーターよりも 現実的な解決策 となります。
バイクの電動化は、ホンダにとって イノベーションのジレンマ。
新市場に挑戦するのか、インフラを整備するのか、それとも趣味需要に頼るのか?
電動化によって戦場が変わった今こそ、したたかな決断が求められています。


まとめ
ホンダはスーパーカブ累計1億台を突破し、年間 1,800万台を販売する二輪帝国。
しかしアジアでは電動化の波、国内では2024年に「50cc原付」が消滅という二重の試練に直面しています。
アジア市場を守るためには、ガソリンで趣味需要を維持しつつ、日常移動需要を E-BikeやEVで取り返す戦略 が不可欠です。
そのためにも、日本自身が E-Bikeを次世代原付として制度化する決断 が求められているのかもしれません。