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食料品の消費税0%、財源5兆円は本当に無理なのか?|税収増20兆円の現実から考える

来月の衆院選を前に、各政党が一斉に打ち出し始めた「物価高対策」。
その中でも、特に注目を集めているのが「食料品の消費税を0%にする」という公約です。
日々の買い物に直結するだけに、生活者の関心は高い。
しかし一方で、必ず出てくるのがこの問いです。
「で、その財源は?」
今回は感情論ではなく、数字をもとに整理してみます。
目次
来月の衆院選での物価高対策の争点は?
今回の選挙における最大の争点の一つは、間違いなく物価高への対応です。
食料品価格の上昇
エネルギーコストの高止まり
実質賃金の伸び悩み
この中で各党が共通して打ち出しているのが、「生活必需品への負担をどう軽減するか」というテーマ。
その象徴が、
食料品にかかる消費税を0%にする案です。
減税は分かりやすい。
だからこそ、有権者の支持を得やすい。
しかし、分かりやすい政策ほど、裏側の設計が重要になります。
食料品の消費税を0にした場合、財源は1年で5兆円規模
では実際、食料品の消費税を0%にすると、どれくらいの財源が必要なのでしょうか。
各種試算を総合すると、
年間およそ5兆円規模
の税収減とされています。
5兆円。これは決して小さな数字ではありません。
児童手当の大幅拡充
防衛費の一部
大規模なインフラ投資
と同等レベルの規模感です。
つまり、「やる・やらない」ではなく、「どこから持ってくるのか」が必ず問われます。
政府系ファンドの利回りは10〜15兆円、日銀ETFの含み益は300兆円?
ここで一部の政党や識者が言及しているのが、既存の国の資産です。
政府系ファンド(GPIFなど)
年間の運用益は10兆〜15兆円規模に達する年もある
日本銀行が保有するETF
含み益は約300兆円規模とも言われている
これだけ見ると、「5兆円くらい余裕では?」と感じるかもしれません。
ただし注意点もあります。
⚠ 含み益は現金ではない
⚠ 市場に影響を与えずに売却するのは簡単ではない
⚠ 恒久減税に”変動する収益”を充てるリスク
つまり、使えるかどうかと、使っていいかどうかは別問題ということです。
5兆円の減税はそのまま家計へ。インフレの主役を叩けるか?
それでも、食料品減税の効果は明確です。
✓ 減税分はほぼ100%家計に直接還元
✓ 低所得層ほど恩恵が大きい
✓ 補助金と違い、手続き不要・即効性がある
特に重要なのは、「インフレの主役は何か」という視点。
現在の物価高は、贅沢品ではなく、日常の食料品・日用品が中心
ここを直接下げに行く政策は、心理面でも実質面でも効果があります。
一方で、
•物価を抑えつつ、財政規律をどう保つのか
•一時的措置にするのか、恒久措置にするのか
この設計を誤れば、別の歪みを生む可能性もあります。
まとめ:この食料品減税で、ようやく日本の税制が「まとも」になる
食料品への消費税0%は、単なる物価高対策ではありません。
これは、日本の税制がようやく先進国として当たり前の水準に戻るという意味を持っています。
本来、生きるために不可欠なもの、代替の効かない支出、所得に関係なく必ず発生する支出——こうした分野に、一律で消費税を課すこと自体が歪みでした。
欧州をはじめ多くの国では、食料品はゼロ税率、もしくは軽減税率、嗜好品や贅沢品で税を取るという構造が当たり前です。
日本は長らく、「取りやすいところから取る」「制度を複雑にして責任を曖昧にする」そんな税制を続けてきました。
今回の食料品減税は、家計を助けるためだけでなく、税の役割を正す第一歩でもあります。
5兆円という数字だけを見て怖がるのではなく、「何に税をかけ、何を守るのか」この優先順位を見直すタイミングが、今来ているのです。
この減税で、日本の税制はようやく“生活者を基準に設計された制度”へ一歩近づく。そう評価してよいのではないでしょうか。
補足視点:近年の税収増から見れば、5兆円は「実は大した額ではない」
2025年度の国税収入は
80兆円を超える見通し
これは過去最高水準です。
重要なのは、この税収増の中身です。
今回の税収アップは、生産性が劇的に向上した結果でも国民の実質所得が大きく増えた結果でもありません。主因は明確で、インフレです。
物価上昇 → 消費税収が自動的に増える
名目賃金上昇 → 所得税が増える
企業の名目利益拡大 → 法人税が増える
つまり政府は、物価上昇という「国民負担」から、何も決めずに税収を増やしている——
これがいわゆる「インフレ税」の正体です。
法律を変えず、増税法案も通さず、生活コストだけが上がり、税収だけが増える。
食料品の消費税を0%にした場合、必要とされる財源は年間約5兆円。一見すると巨額に思えますが、近年の税収推移と比較すると、見え方は大きく変わります。
日本の国税収入は、ここ数年で大きく伸びています。わずか数年で、20兆円規模での自然増が発生している計算です。
この背景にあるのは、企業収益の拡大、インフレによる名目所得の増加、消費税・所得税・法人税の同時増収。インボイス制度の導入。
つまり、国民の生活実感とは裏腹に、国の取り分だけは、すでに大きく増えているというのが現実です。
この増収幅と比べれば、
5兆円=「税収増の半分程度」に過ぎません。
新たな増税や国債発行を前提にしなくても、「増えた分の一部を生活者に戻す」その選択肢として、食料品減税は十分に現実的な規模だと言えます。
問題は「財源があるかどうか」ではなく、
インフレ税を、どこまで国民に返すのか
という、極めてシンプルな問いなのです。



