ブランド価値はどこで勝負する?6つの価値因子と成長フェーズ別 強化戦略


「なぜ、このブランドに惹かれるのか?」
日常の中で無意識に選んでいる商品や、憧れを抱くブランド。
それは単なる「モノ」や「サービス」ではなく、心を動かす価値が存在しているからです。
しかし、その価値は自然に生まれるものではありません。
ブランドは、成長段階に応じて意図的に価値を設計し、顧客の心をつかんでいます。
本記事では、ブランド価値を高める6つの因子と、それをどのタイミングで強化すべきかを具体的に解説します。
目次
ブランド価値を構成する6つの因子
価値因子 | 内容 | 代表例 | 強化タイミング | 目的 |
---|---|---|---|---|
機能的価値 Functional Value | 品質・性能・利便性など理性的な判断軸 | ユニクロ(ヒートテック)、ダイソン | 導入期〜成長期初期 | 選ばれる理由の確立、新規顧客獲得 |
情緒的価値 Emotional Value | 愛着、共感、感動体験 | ディズニー、コカ・コーラ | 成長期後半〜成熟期 | 感情的絆の構築、リピート率向上 |
未来価値 Future Value | ビジョン、サステナビリティ、革新性 | テスラ、ユニリーバ | 成長期後半〜衰退期前 | 将来性訴求、リブランディング |
社会的価値 Social Value | 社会的承認・ステータス | ロレックス、ルイ・ヴィトン | 成熟期 | プレミアム市場での収益最大化 |
自己表現価値 Self-expressive Value | ライフスタイル・自己実現の表現 | Supreme、ハーレーダビッドソン | 成熟期〜再活性化期 | ファン共創、ブランド再生 |
経験価値 Experiential Value | 購買・利用体験の心地よさ | Apple Store、スターバックス | 全フェーズ(特に成長・成熟期) | 口コミ促進、LTV最大化 |
ブランド成長フェーズ別 強化すべき価値因子
フェーズ | 優先すべき価値因子 | 主な目的 |
---|---|---|
導入期 | 機能的価値・経験価値 | 認知拡大と試用促進 |
成長期初期 | 機能的価値・経験価値 | シェア拡大・リピート獲得 |
成長期後半 | 情緒的価値・未来価値 | 差別化・ファンコミュニティ育成 |
成熟期 | 社会的価値・自己表現価値 | プレミアム化・顧客ロイヤリティ強化 |
衰退期 | 未来価値・自己表現価値 | リブランディング・ブランド再生 |
ケーススタディ|カルピスの例


導入期(大正時代〜昭和初期)
強化した価値因子:機能的価値
1919年の発売当初は「体に良い乳酸菌飲料」として登場。
高級贈答品や健康飲料として機能的価値をアピールし、ブランドを確立。
成長期(昭和中期)
強化した価値因子:情緒的価値・経験価値
キャッチコピー「初恋の味」で情緒的価値を最大化。
家庭で作る特別な飲み物という体験価値も提供し、夏の風物詩として定着。
成熟期・リブランド期(平成初期〜中期)
強化した価値因子:情緒的価値・未来価値・社会的価値
1990年、「カラダにピース♪カルピス♪」のキャッチコピーに刷新。
健康価値の訴求を強化し、親から子供への贈り物というイメージから、自分自身の健康管理・リフレッシュドリンクとしてターゲット層を拡大。ここでリブランドに成功。
第2成長期(令和時代)
強化している価値因子:機能的価値・未来価値・自己表現価値
・健康機能を持つ「カルピス由来の乳酸菌飲料」や機能性表示食品を展開。
・環境対応パッケージや低糖・低カロリー商品でサステナビリティ対応。
SNSでは「アレンジカルピス」「大人のカルピス」など、自己表現的な楽しみ方が広がり、若年層からシニアまで幅広く支持。
カルピスは単なるロングセラーブランドに留まらず、時代に合わせてブランド価値を再設計し続けている好例です。
リブランドによる「ターゲットの拡大」と「価値因子の再定義」で、今まさに第2の成長期を迎えています。
これまでのカルピスは「健康」「家族」「懐かしさ」という価値を中心にしてきました。
しかし、これからは「私のカルピス体験」をどう表現・共有してもらうかが鍵となります。
SNS × アレンジ体験 × パーソナライズによる価値創造で、カルピスは新しいファン層を取り込み、さらに成長していくことでしょう。
まとめ


これからのブランド成長には、消費者が自ら楽しみ、共有し、発信する「自己表現価値」の強化が欠かせません。
カルピスはその好例であり、今まさに第2の成長期を迎えたロングライフブランドなのです。
あなたのブランドは、次の成長に向けて「どの価値因子」を強化しますか?